この項目では、樹木およびそれから採れるナッツ について説明しています。
ピスタチオ (英語 : pistachio [pɪˈstɑːʃiˌoʊ, pɪˈstæʃiˌoʊ] ; 学名 : Pistacia vera )は、ウルシ科 カイノキ属 の落葉亜高木。およびそれから採ったナッツ 。主にイラン や米国 で栽培される。
リンネ の『植物の種 』(1753年 )で記載 された植物の一つである[ 2] 。
特徴
現在のイランからアフガニスタン地方を含む中央アジア原産とされ[ 3] [ 4] [ 5] 、考古学者によれば紀元前6500年ごろから食用に用いられていたとされる[ 6] 。その後、植物愛好家が種子をローマ に持ち込み、ヨーロッパ に広がった[ 7] 。
雌雄異株であり、受粉の良否が収穫量を大きく左右する[ 7] 。
主に乾燥 した土地で育ち、一定の塩害 のある場所でも生育する。しかし、十分な日照と排水が必要。
木は高さ10メートルほどに成長する。葉 は落葉性 の奇数羽状複葉、10-20センチメートルほどになる。長径3cmほどの楕円形の殻果 は、成熟すると、裂開果と呼ばれる一辺が裂けた独特の形状となり、熟すと落木する。この形状から、現代中国語 では「開心果」(カイシングオ、kāixīnguǒ )と称する。
産地
主な生産地はイラン 、アメリカ 、トルコ 、シリア などであり、現在の生産量はイラン が世界一である。中国 では新疆ウイグル自治区 が主産地。
ヨーロッパではイタリアのシチリア州にあるブロンテ のグリーンピスタチオが有名で、原産地呼称制度やスローフードの認定を受けている[ 8] 。グリーンピスタチオはブロンテの重要な財源になっており「食べるエメラルド」や「緑の金」と呼ばれている[ 8] 。
国別ピスタチオ生産量 (トン )[ 9]
国名
2005年
2006年
2007年
2008年
イラン
229,657
250,000
315,500
192,269
アメリカ
128,367
107,955
188,696
126,100
トルコ
60,000
110,000
73,416
120,113
シリア
44,642
73,183
52,066
52,600
中国
34,000
36,000
38,000
40,000
ギリシャ
8,847
8,233
8,148
8,100
アフガニスタン
2,457
2,457 ?
3,600
2,500
チュニジア
2,000
2,700
2,500
2,500
イタリア
2,719
1,024
2,782
2,000
キルギス
300
500
800
800
IUCNレッドリスト では産地がアフガニスタン 、イラン、トルクメニスタン のみに限られると見なされた上で近危急種 (Near Threatened)と評価されているが、その理由は「果実の採集、家畜 により食べられること、伐採により脅かされている」こととされている[ 1] 。
利用
食用に炒ったピスタチオナッツ
熟した種子を殻果ごと焙煎し、塩 味をつけたものを食用とする。ピスタチオグリーン と呼ばれる緑色 が残り、味は他のナッツ類と異なる独特の風味があり、「ナッツの女王」とも呼ばれる。また殻を割るパチンという音も心地よく、肴 や茶請けとして用いられる。
傍ら、産地や製法(加工法)ごとに種子の風味(甘みやコクの差、粒の大きさと噛みごたえの違い)が異なるのもあって人々の評価も広めとなっている[ 11] 。
ナッツとして食べる他に、緑色を活かして、ペーストにして製菓材料に用いたり、ケーキ やクッキー の飾りつけに用いたりする。アイスクリーム に混ぜ込むことも欧米では一般的。中東 ではハルヴァ と呼ばれるヌガー に似た菓子 にも用いられる。料理 では、パスタ やスープ に用いるものがある。
生薬 としては、種子を阿月渾子 (あげつこんし)と称し、腎炎 、肝炎 、胃炎 などに有効とされる。血中のLDLコレステロール を低減し、抗酸化物質 を増やす作用もある[ 12] 。
一般にナッツの摂取は心血管疾患発症リスクを低下させることが知られている。アーモンド 、クルミ 、ピスタチオの摂取は総コレステロール 、LDL-コレステロールを低下させることが報告されているが、ピスタチオにおいては血圧降下作用も報告されている。[ 13]
安全性
他のウルシ科植物と同様にウルシオール が含まれており、その成分によるアレルギー反応 を引き起こす可能性がある[ 14] ことから生の果実(種子)の取り扱いには慎重さを要する。
また、ピスタチオは果実そのものが低水分である上に脂肪含有率が高いことから自己発熱 および自然発火 する傾向があり、バルク・コンテナ 内で不適切に保管すると火災 発生することが知られている[ 15] 。特に穀粒のものは加工後のものに比べてその割合も高めとなっている。現在、果実やその加工製品の火災事故の防止のため「油の染みた状態」の布類あるいは繊維状の材質の物品を貯蔵時に使用することが禁止されている[ 16] [ 17] 。
脚注
出典
^ a b Participants of the FFI/IUCN SSC Central Asian regional tree Red Listing workshop, Bishkek, Kyrgyzstan (11-13 July 2006) (2007). Pistacia vera. The IUCN Red List of Threatened Species 2007: e.T63497A12670823. doi :10.2305/IUCN.UK.2007.RLTS.T63497A12670823.en Downloaded on 01 January 2019.
^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum . Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 1025. https://www.biodiversitylibrary.org/page/359046
^ “Pistacia vera L. ”. Plants of the World Online. 12 Aug 2020 閲覧。
^ “Pistachio ”. Encyclopedia Britannica. 12 Aug 2020 閲覧。
^ V. Tavallali and M. Rahemi (2007). “Effects of Rootstock on Nutrient Acquisition by Leaf, Kernel and Quality of Pistachio (Pistacia vera L.)”. American-Eurasian J. Agric. & Environ. Sci., 240-246, 2007: 240 2 (3) : 240-246, 2007: 240.
^ “History and Agriculture of Pistachio Nut ”. IRECO. 27 February 2012 閲覧。
^ a b “ピスタチオナッツ ”. ナッツ協会. 2015年11月15日 閲覧。
^ a b 美味しいヨーロッパ アウトバウンド促進協議会、2021年12月11日閲覧。
^ “Food and Agricultural commodities production ”. 国際連合食糧農業機関 . 2011年5月8日 閲覧。
^ USDA
^ “ピスタチオのおすすめ7選!【グラノーラ研究家に取材】 ”. マイナビ ニュース (2019年4月26日). 2019年5月22日 閲覧。
^ Kay, Colin D; Sarah K Gebauer, Sheila G West and Penny M Kris-Etherton (1 April 2007). “Pistachios reduce serum oxidized LDL and increase serum antioxidant levels” . The FASEB Journal 21 (6): A1091-a. http://www.fasebj.org/cgi/content/meeting_abstract/21/6/A1091-a 2008年6月18日 閲覧。 .
^ Diets containing pistachios reduce systolic blood pressure and peripheral vascular responses to stress in adults with dyslipdemia. West SG et al: Hypertension 60: 58-63, 2012.
^ Mabberley, D. J. (1993). The Plant Book . Cambridge: Cambridge Univ. Press. p. 27. ISBN 0-521-34060-8
^ “Container Handbook ”. www.containerhandbuch.de . 2022年1月7日 閲覧。
^ “Risk factor: self-heating/spontaneous combustion ”. Container Handbook . Gesamtverband Deutsche Versicherungswirtschaft. 2019年5月22日 閲覧。
^ “Pistachio Nuts: Self-heating ”. Transport Information Service . Gesamtverband Deutsche Versicherungswirtschaft. 2019年5月22日 閲覧。
参考文献
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
ピスタチオ に関連するメディアがあります。
ウィキスピーシーズに
ピスタチオ に関する情報があります。