ピアノ三重奏曲第3番 ト短調 作品110 は、ロベルト・シューマン が作曲した最後のピアノ三重奏曲 で、番号が与えられた3作目にあたる。
作曲が行われたのは1851年 10月で、シューマンは10月2日の家計簿 (Haushaltbücher) に「三重奏曲の着想」と記し、9日に「三重奏曲の終楽章がおおかた書き終わった」と記している[ 1] 。シューマンが家族とともにデュッセルドルフ に移って2年目の[ 2] この時期は多産で[ 3] 、直前にヴァイオリンソナタ第1番 が、直後に第2番 が作曲されている[ 4] 。数度の私的演奏を経て[ 1] 、初演は1852年 3月21日 にライプツィヒ の[ 5] ゲヴァントハウス で、クララ・シューマン のピアノとフェルディナンド・ダヴィッド のヴァイオリン 、アンドレアス・グラバウ (Andreas Grabau ) のチェロ によって行われた[ 2] 。同年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル から出版され[ 1] 、ニルス・ゲーゼ に献呈されている[ 5] 。
ほかの晩年の室内楽とともにシューマンの創造力の減退を示すものとされることもあるが[ 4] 、活力と深い感情をそなえた作品であり[ 2] 、全体の構成にも注意が払われている[ 6] 。試演を行ったクララ・シューマンは、「独創的で、どこをとっても情熱に満ちている」(Es ist originell, durch und durch voller Leidenschaft) と日記に記した[ 2] [ 4] 。
楽曲
全4楽章からなり、演奏時間は27分程度[ 7] 。
ソナタ形式 の第一楽章は、装飾的な音型をヴァイオリンとチェロが受け渡しあう第一主題と[ 2] 、柔らかな第二主題を扱う[ 3] 。展開部に現れるフーガ 風の部分は、クララ・シューマンが作曲したやはりト短調のピアノ三重奏曲 を意識したとも考えられる[ 5] 。変ホ長調 の第2楽章はヴァイオリンとチェロによる、ロマンティックでワルツ 風のデュエット で始まる[ 3] [ 2] が、中央の部分はテンポを上げ、暗く劇的な雰囲気が訪れる[ 4] 。ハ短調 のスケルツォ は、抒情的に歌うハ長調 のものと行進曲風の変イ長調 のもの、2つのトリオを持つ[ 4] [ 2] 。明るくくつろいだト長調のフィナーレ[ 2] では、第3楽章のトリオ群の素材がともに回帰する[ 4] 。
動いて、しかし急ぎすぎずに(Bewegt, doch nicht zu rasch)
とてもゆるやかに(Ziemlich langsam)
急速に(Rasch)
力強く、フモール をもって(Kräftig, mit Humor)
脚注
^ a b c Herttrich, Ernst (2012). “Preface” . Werke für Klaviertrio . G. Henle Verlag. p. VII. https://www.henle.de/media/foreword/0916.pdf
^ a b c d e f g h “Klaviertrio Nr. 3 g-Moll, op. 110 - Kammermusikführer ” (ドイツ語). Villa Musica Rheinland-Pfalz. 2022年7月23日 閲覧。
^ a b c Hugh-Jones, Carenza (2011). Schumann: 3 Piano Trios (CD booklet) (PDF) (Media notes). Ilya Gringolts, Peter Laul, Dmitry Kouzov. Onyx. ONYX4072。
^ a b c d e f Donat, Misha (2000). Schumann: Fantasiestücke, Piano Trio & Piano Quartet (CD booklet) (PDF) (Media notes). The Florestan Trio. Hyperion. pp. 4–5. CDA67175。
^ a b c François-Sappey, Brigitte (2021). Robert Schumann: Complete Piano Trios, Quartet & Quintet (CD booklet) (PDF) (Media notes). Translated by Charles Johnston. Trio Wanderer, etc. Harmonia Mundi. p. 6. HMM90234446。
^ Hinke, Roman (2015). Schumann: Violin Concerto, Piano Trio No. 3 (CD booklet) (PDF) (Media notes). Translated by Charles Johnston. Isabelle Faust, etc. Harmonia Mundi. p. 8. HMC902196。
^ “Schumann: Trios ”. Trio Wanderer. 2022年7月23日 閲覧。
外部リンク