ハンドスプリング (英 : Handspring )は、Palm OS 搭載の携帯情報端末 を開発・販売していたアメリカ合衆国 の企業。1998年6月に創業され、2003年10月にパーム社 と合併し、そのハードウェア部門とともにパーム・ワン(Palm One Inc.)の一部となった[ 1] [ 2] 。
経緯
1998年 、パーム社 の創業者のジェフ・ホーキンス とドナ・ドゥビンスキー (英語版 ) 、およびエド・コリガン (英語版 ) がパーム社より独立して設立した[ 3] 。
1999年 からVisor というPalm OS を搭載したPDA のシリーズを発売した[ 4] 。これは、完全なプラグアンドプレイ を実現した独自の拡張スロット「スプリングボード 」(Springboard)を搭載した製品で、さまざまなモジュールを差し替えることで、状況に応じてPDAをデジタルカメラ やGPS 、バーコード リーダーなどに変身させることができた。
2001年 10月には携帯電話機能を内蔵したTreo を発表した[ 5] 。コミュニケータと呼ばれる種類の製品にシフトしていったが、2003年 1-3月期の売上高は前年同期の5970万ドルから3080万ドルにほぼ半減した[ 6] 。
2003年6月、米PalmがHandspringを買収することを発表した[ 7] [ 3] [ 8] 。10月に買収が完了し、二人の創業者はパーム社の幹部として復帰することとなった[ 9] 。
主な製品
Visor Edge
Visorシリーズ
Visor Solo(1999年)[ 4]
Visor Deluxe(1999年)[ 4]
Visor Platinum(2000年)[ 10]
Visor Prism(2000年)[ 10]
Visor Edge(2001年)[ 11]
Visor Neo(2001年)[ 12]
Visor Pro(2001年)[ 12]
Treo シリーズ
Visor
Palm OS 3.0(〜Visor Deluxe)、Palm OS 3.5(Visor Platinum〜)をベースにしたPalm ハンドヘルド互換機。基本的にそれまでのPalm機種を踏襲しているが、他機種と違いOSを格納したマスクROM +ユーザー領域のSRAM (初代Visorは2MB、以降は8MB)となっている(OSへのパッチはSRAMにファイルを置いてフック を行うことで対処している)。
液晶 解像度は160×160、Visor Prismが65536色カラー表示に対応、それ以外の機種は16階調モノクロ液晶である。
パソコンと同期を行うクレードル はUSB 接続のものが標準であり、シリアルポート 接続のものは別売。
サードパーティー から各種サプライ品が発売されたが、特記すべきは色違いボディー自体が販売されたことで、特にVisor Deluxeは標準で5色、サードパーティー製ボディも多数発売され、それまでのPalm機種にはないデザインとファッション性を主張した。本来は分解はメーカーサポート外ではあるが、スタイラス にボディーの十字ねじに対応したドライバー が収納されており、比較的簡単に分解してボディーを交換できるようになっていた。
背面上部に独自のSpringboardスロットがあり、Springboardモジュールを挿入することが出来るのが特徴(Visor Edgeは添付されているSpringboardアダプタを本体に接続し、そのアダプタにモジュールを挿入する)。
SpringboardスロットとSpringboardモジュールは68ピンのコネクタで接続される。標準のSpringboardモジュールはコンパクトフラッシュ より横幅は一回り(54mm)、縦幅はふた周り程度(57mm)大きい(コンパクトフラッシュのデータを読み込むSpringboardモジュールがちょうど良いサイズとなる)。
Springboardモジュールにメモリ(フラッシュROM等)を搭載して、Springboardモジュールの動作に必要なプログラムを格納(さらには挿入した際に自動的に実行するように設定)することができるため、基本的にSpringboardモジュールを動作させるためのドライバやプログラムを別にインストールする必要がない。
また、本体にはマイクロフォン が内蔵されている。ただしマイクロフォンの入力はSpringboardモジュールに直結されており、Visor単体では利用することが出来ない。
主なSpringboardモジュールの一覧
デジタルオーディオプレイヤーやデジタルカメラなど時代の流行を取り入れた展開が行われたが、思うように価格が下がらずそれぞれの専用機種の性能アップのスピードについていけなかったために大きな話題となることはなくSpringboardモジュールの展開は終了した。
日本での展開
2000年2月、米Handspring社が日本法人「ハンドスプリング株式会社」を設立する[ 21] 。
2000年6月、「Visor Deluxe日本語版」を発売する[ 22] 。
2000年12月、「Visor Prism日本語版」「Visor Platinum日本語版」を発売する[ 23] 。
2001年4月、「Visor Edge日本語版」を発売する[ 24] 。
2001年9月、ハンドスプリングの営業部門が日本から撤退する。
一時、日本ではSpringboardモジュール化したPHS を接続し、スマートフォン として取り扱えるモジュールが構想され、開発されていたが、ハンドスプリングの方針転換、および日本撤退により開発が中止されて発売にはいたらなかった。
脚注
^ “Palm, Form 8-K, Current Report, Filing Date Jun 6, 2003 ”. secdatabase.com. Dec 31, 2012 閲覧。
^ “Palm, Form 8-K, Current Report, Filing Date Nov 12, 2003 ”. secdatabase.com. Dec 31, 2012 閲覧。
^ a b “PalmがHandspringを買収、創業者のジェフ・ホーキンス氏がCTOに復帰 ”. ITmediaニュース (2003年6月4日). 2024年1月15日 閲覧。
^ a b c “HandSpring、Palm OS搭載のPDA「Visor」 ”. PC Watch (1999年9月17日). 2024年1月15日 閲覧。
^ 横田英史 (2001年10月16日). “米ハンドスプリング,携帯電話機能装備の「Treo」発表,キーボード付きで399ドル ”. 日経クロステック . 2024年1月15日 閲覧。
^ “Handspring、売上半減 ”. ITmediaニュース (2003年4月16日). 2024年1月15日 閲覧。
^ “Palm、Handspringを買収~Palm SourceはPalmから独立 ”. PC Watch (2003年6月5日). 2024年1月15日 閲覧。
^ “米パーム、ハンドスプリングを買収:ホーキンスらは「元の鞘」へ ”. CNET Japan (2003年6月5日). 2024年1月15日 閲覧。
^ “新しい“2つのPalm”誕生 ”. ITmedia Mobile (2003年10月29日). 2024年1月15日 閲覧。
^ a b “詳報:ハンドスプリング,カラー液晶搭載モデルなど「Visor」新機種2製品を発表 ”. ITmediaニュース (2000年10月16日). 2024年1月15日 閲覧。
^ “米Handspring、金属筐体の薄型「Visor Edge」を発売 ”. ケータイWatch (2001年3月13日). 2024年1月15日 閲覧。
^ a b “米Handspring、16MBメモリ搭載「Visor Pro」と入門機「Visor Neo」 ”. ケータイWatch (2001年9月17日). 2024年1月15日 閲覧。
^ a b “バックアップ機能と8MB増設メモリの複合Springboardモジュール ”. ケータイWatch (2001年5月11日). 2024年1月15日 閲覧。
^ “アスク、VisorでCFカードを利用できるSpringboardモジュール ”. ケータイWatch (2001年7月5日). 2024年1月15日 閲覧。
^ “MDS、Visor用MP3プレーヤー拡張モジュール『SoundsGood』を発売 ”. ASCII.jp (2000年11月22日). 2024年1月15日 閲覧。
^ “エム・ディ・エス、Visorの拡張スロット用モジュールとしてデジタルカメラとLED点滅アラームを発表 ”. ASCII.jp (2000年7月28日). 2024年1月15日 閲覧。
^ “ハギワラシスコム、Visor用のサウンドモジュール ”. ケータイWatch (2001年6月13日). 2024年1月15日 閲覧。
^ “ザーコム,Visor用の56Kbpsモデム&携帯電話接続モジュールを発売 ”. ITmedia (2000年8月24日). 2024年1月15日 閲覧。
^ 塩田紳二 (2001年4月5日). “第5回 カラーPalmと拡張モジュールで広がるソリューション 充実しつつあるSpringboardのラインアップ ”. @IT . 2024年1月15日 閲覧。
^ “Visorが万歩計に! ハギワラシスコムがSpringboardモジュールを発売 ”. ITmediaニュース (2001年3月15日). 2024年1月15日 閲覧。
^ “ハンドスプリング、PalmOS搭載PDA「Visor」日本語版を発表 SpringBoardモジュールで多彩な機能拡張が可能に ”. INTERNET Watch (2000年6月14日). 2024年1月15日 閲覧。
^ 小林伸也 (2000年6月14日). “Palm OS搭載PDAの『Visor』、2万9800円で日本上陸――ハンドスプリング、16日に発売開始と発表 ”. ASCII.jp . 2024年1月15日 閲覧。
^ 小林伸也 (2000年10月16日). “詳報:ハンドスプリング,カラー液晶搭載モデルなど「Visor」新機種2製品を発表 ”. ITmediaニュース . 2024年1月15日 閲覧。
^ 白根雅彦 (2001年4月4日). “ハンドスプリング、薄型Visor Edgeの日本語版を4月6日発売 ”. ケータイWatch . 2024年1月15日 閲覧。
参考文献
『Palm Magazine vol.25』アスキー、2006年4月12日。