「ハウ・ドゥ・ユー・スリープ(眠れるかい?) 」 (英語 : How Do You Sleep? ) は、ジョン・レノン の楽曲。1971年 に発表されたスタジオ・アルバム 『イマジン 』のB面3曲目に収録された。内容はビートルズ のメンバーだったポール・マッカートニー を痛烈に批判したものである。元来「ハウ・ドゥ・ユー・スリープ」という言葉は、ビートルズのメンバーの間で目の大きなマッカートニーを茶化すために使われていた。
背景
レノンとマッカートニーは、1970年4月10日のビートルズの解散を契機として決定的な対立関係にあったが、とりわけ1971年当時は大変険悪な状況に陥っていた。マッカートニーは「ポール & リンダ・マッカートニー 」名義で発表したセカンドアルバム『ラム 』[ 注釈 1] の収録曲「3本足 」や「トゥ・メニー・ピープル 」で、レノンだけでなくジョージ・ハリスン とリンゴ・スター を暗に非難していた[ 注釈 2] [ 1] [ 2] 。
これらマッカートニーの楽曲に、レノンは本作を書くことにより反撃した。レノンは後に「僕がポールに対して憤ってたから、この曲を書いた。卑劣な当てつけを込めて書いたから、あいつもそう受け取ったんだ。ただ…あいつのにだって、当てつけはあるんだ。対象を明白にしてないから、誰も気づかないだけさ」と述べた。
レノンは曲中でマッカートニーがビートルズ時代に書いた「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 」と「イエスタデイ 」、そしてファーストソロシングル「アナザー・デイ 」、さらに1969年に広まった都市伝説 「ポール死亡説 」まで持ち出している[ 3] 。
作業に同席していたスターは歌詞が完成するにつれて段々と不機嫌になり、過剰な非難を止めるようレノンに忠告した[ 3] 。その場にいたOZ誌のフェリックス・デニスは「極めて幼稚極まり無い内容だった。恐らくリンゴが説得したのだろう。元の歌詞はレコードで聴けるものより、比較にならないくらい下品だった」と評している。
マッカートニーは本作に関して静観を貫いた。「ジョンは酷い嫌な奴とは思わないで欲しい」と発言している。
なお、後年レノンは「あれは自分自身の事を歌ったんだよ。ポールと僕の事に、あんたらは関係ない。曲のインスピレーションを得るために(当時の)ポールへの憎しみを題材として使っただけだ。本当に憎んでたわけじゃない」と発言している[ 4] 。
レコーディング
本作のレコーディングは、1971年5月26日にアスコット・サウンド・スタジオで開始され、7月5日にオーバーダビングが施された[ 5] 。レコーディングには、ビートルズ末期にポールと最も不仲だったと言われるジョージも参加し、スライドギター を演奏した[ 6] 。このほか、クラウス・フォアマン がベース 、アラン・ホワイト がドラムス 、ニッキー・ホプキンス が電子ピアノ 、フラックス・フィドラーズ がストリングス で参加した[ 3] 。
本作をレコーディングしている様子を記録した映像の中では、女性器 を意味する卑語「cunt(「嫌な奴」、「バカな奴」の意味もある)」をもってポールを呼んでいる(「How Do You Sleep, you CUNT?」)。演奏においてもジョンは「もっと悪意を込めて演奏しろ。悪意のある曲だ」と他のメンバーに指示している場面が映像で確認できる。
2018年10月5日に発売された『イマジン:アルティメイト・コレクション』に、テイク5&6が収録された[ 7] 。これに先立ち、同年9月21日に1971年5月26日のセッション時の映像が公開された[ 7] [ 8] 。
歌詞からの抜粋
「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」について
「『サージェント・ペパーズ』はお前にとっちゃ驚きだったろうよ」
「イエスタデイ」、「アナザー・デイ」について
「お前の傑作なんざ「イエスタデイ」だけだ。それも時代遅れになった今となっては「アナザー・デイ」って訳よ」
「ポール死亡説」について
「マニア達はお前が死んだって言ってたけど、その通りだったな」
この他にも、
「その母ちゃん譲りの女々しい目でよく見てみろよ」
「お前を天才だ何だと祭り上げる俗物共と暮らしてるんだろ」
「母ちゃんに何か言われるたびに飛び上がっちゃってさ」
「そのかわいい顔も1、2年くらいはもつだろうが、もうじきお前の才能の限界はみんなに暴かれるだろうさ」
「お前の作る音楽は俺の耳にはバックグラウンド・ミュージックでしかない」
「お前の一番の失敗は、お前のその頭の中だ」
「長年一緒だったから、色々学んできたはずなんだけどな…」
など、かなり辛辣な非難が歌われている。
演奏
脚注
注釈
^ この曲が収録された『イマジン』にはポールのアルバム『ラム』のジャケット写真「羊と戯れるもの」のパロディであるポストカード「豚と戯れるジョン」が同封されていた。
^ 「君はチャンスを掴んでたのに、自分自身でフイにしちまった。僕にはどうする事もできない。君が勝手にぶち壊したんだから (「トゥー・メニー・ピープル」)」、「何かにつけて、お説教する人間が多すぎる (「トゥー・メニー・ピープル」)」、「友達だと思ってたのに、僕をガッカリさせた (「3本足」)」
出典
^ Playboy Magazine (1984年). “Playboy Interview With Paul and Linda McCartney ”. Playboy Press. 2020年7月18日 閲覧。
^ Cadogan, Patrick (2008). The Revolutionary Artist: John Lennon's Radical Years . Morrisville, North Carolina: Lulu. pp. 141. ISBN 978-1-4357-1863-0
^ a b c Blaney, John (2005). John Lennon: Listen To This Book . Guildford, Great Britain: Biddles Ltd.. pp. 89. ISBN 0-9544528-1-X
^ “Insight & Sound”. Cash Box . (1971-12-11).
^ Madinger, Chip; Raile, Scott (2015). LENNONOLOGY Strange Days Indeed - A Scrapbook Of Madness . Chesterfield, MO: Open Your Books, LLC. pp. 239, 247. ISBN 978-1-63110-175-5
^ Leng, Simon (2003). The Music of George Harrison: While My Guitar Gently Weeps . London: Firefly Publishing. ISBN 0-946719-50-0
^ a b “ジョン・レノン『イマジン』からジョージ・ハリスンとの未発表セッション映像公開” . BARKS (ジャパンミュージックネットワーク). (2018年9月24日). https://www.barks.jp/news/?id=1000160075 2020年7月18日 閲覧。
^ John Lennon (21 September 2018). How Do You Sleep? (Takes 5 & 6, Raw Studio Mix Out-take) - John Lennon & The Plastic Ono Band . 2020年7月18日閲覧 。
関連項目