ノルマ (オペラ)『ノルマ』 (Norma) は、ヴィンチェンツォ・ベッリーニが作曲、1831年に初演された全2幕からなるオペラである。主役を歌うソプラノ歌手にとって最も難度の高いオペラの1つと考えられており、過去にはローザ・ポンセル、ジーナ・チーニャ、ジンカ・ミラノフ、マリア・カラス、ジョーン・サザーランド、モンセラート・カバリェなどが得意とした。 ソプラノのアリア「清らかな女神」(Casta Diva, カスタ・ディーヴァ)は特に有名であり、リサイタルなどで単独で歌われることも多い。
作曲の経緯ベッリーニはまだ30歳の若さであったが、前作「夢遊病の女」(La sonnambula, 1831年)の成功により、当時イタリア最高のオペラ作曲家としての名声を固めつつあった。その頃、財政的困難から低調な公演活動を余儀なくされていたスカラ座が起死回生の策として、「夢遊病の女」を生んだトリオ、すなわち作曲家ベッリーニ、台本家ロマーニ、主演(ソプラノ)ジュディッタ・パスタによって1831年 - 1832年のシーズン開幕を飾ろうとしたのがこの作品である。なお、これは既に名ソプラノとされていたパスタのスカラ座デビューであり、その点でも興行上の話題性は高かったと考えられている。ポリオーネ役にはこれまた著名なドメニコ・ドンツェッリ、アダルジーザ役には後に同じベッリーニの「清教徒」を初演するジューリア・グリーシが配され、当時の最高峰歌手陣を揃えた初演となった。 ロマーニは当時パリ・オデオン座で公開され始めたばかり(初演1831年4月16日)の舞台劇「ノルマ」にオペラ化の可能性を見出し、同年7月20日頃から台本作成を開始したと考えられている。ベッリーニがほぼ完成した台本を受領したのは彼の書簡によれば9月1日であり、そこからわずか3か月のうちにこの名オペラが完成したことになる。 編成主な登場人物
楽器構成フルート2(2番はピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チンバッソ、ティンパニ、タムタム、大太鼓とシンバル、ハープ、バンダ(ピアノ譜のままで任意の吹奏楽)、弦5部 舞台構成全2幕5場。
あらすじ時と場所は紀元前50年頃、ローマ帝国支配下にあるガリア地方。 第1幕第1場前奏曲に続いて、舞台はドルイド教徒の森。オロヴェーゾに率いられた一団が、ローマからの解放を願う祈りを捧げて去る。物陰から現れたポリオーネは同行するフラヴィオに、自分のノルマへの愛はもはや醒めたこと、今では若きアダルジーサを愛していることを告げ、ノルマがそれを知れば復讐があるだろう、と恐れおののく。入れ替わるように再びドルイド教徒たちがノルマに率いられて現れ、儀式を行う。ここで歌われるのが有名なシェーナとカヴァティーナ『清らかな女神』である。人々はローマへの怒りに燃えているが、ノルマは蜂起を許さず、実は自らがローマ総督ポリオーネを密かに愛し、2人の息子までもうけた苦しい胸のうちを独白する。一同は去るが、これもまたローマ人に対する背徳の愛に悩む若きアダルジーザが独り残る。そこにポリオーネが現れ、一緒にローマへ逃げよう、と情熱的に説得、初めは拒絶していたアダルジーザも遂には従うことを約束する。 第1幕第2場ノルマがクロティルデの援助の下、密かに2人の子供を育てる住居にアダルジーザがやって来る。慌てて子供達を隠すノルマに、アダルジーザは、巫女には禁じられた恋愛をしてしまった悩みを告白する。お互いに同じ男性を愛しているとは知らないノルマは彼女を赦す。そこに偶然ポリオーネが現れ、2人の女性は初めて状況を理解する。ノルマは、アダルジーザには罪はなく、全てはポリオーネの不実のせい、と激しい非難を加える。恋の修羅場の三重唱。 第2幕第1場ノルマは2人の息子と心中しようと試みるが、子供の寝姿を見るとそれは果たせない。アダルジーザが住居に現れ、自分はポリオーネと別れる決意を固めたと話し、ノルマには「子供たちの素晴らしい母親として生きて欲しい」と説得する。ノルマとアダルジーザは互いの友情を確認し、有名な美しい二重唱が歌われる。 第2幕第2場ポリオーネがアダルジーザの提案を拒否したと聞いたノルマは、怒りのあまり、祭壇の銅鑼を3度打ち鳴らし戦争開始を合図する。ポリオーネがアダルジーザを連れ去ろうと神殿に闖入、捕われた、との報せが入る。群集がポリオーネを引き立てて参集する。ノルマは「この男を殺す前に、尋問して共犯の巫女の名を明らかにする」と述べ、人々を一旦立ち退かせる。ポリオーネと2人きりになったノルマは「アダルジーザを忘れるという約束と引換えに、お前の命だけは助けよう」と言うが、強情なポリオーネは取り合わない。ノルマは「裏切り者の女の名がわかった。火刑台の準備をしろ」と人々を再び招集する。ポリオーネはアダルジーザの名が明かされることを怖れるが、ノルマは「裏切り者は私です」と人々に宣言する。衝撃を受けたポリオーネはノルマへの愛に再度めざめ、「貴女は素晴らしい女性。自分はそれを知るのが遅すぎた」と許しを請う。ノルマは父オロヴェーゾに2人の子供の助命を懇願、オロヴェーゾはためらっていたが受け入れる。ノルマは従容と火刑台に向かう。 聴きどころ
関連項目
外部リンク
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