トローペトローペ(独:Trope)とは、「44のトローペ(またはトロープス)理論」とも呼ばれる、オーストリアの作曲家ヨーゼフ・マティアス・ハウアーが発展させた十二音技法の理論体系である。 概要12音音列には数学的には479,001,600通りの可能性があるが、ハウアーはこれを44のトローペと呼ばれる種類に分類した。彼は、音列の12の音を前半と後半の6音ずつのグループに分け、1オクターヴの半分の音程である増4度音程がそれぞれに何個含まれているかによって、12音音列を大きく4種類に分けた。1オクターヴ中の12の半音の中には増4度音程は6個あるが、このうち、
こうして、3+15+20+6=44となり、トローペは全部で44となる。また、1つのトローペには10,886,400通りの音列の可能性が存在している。 ハウアーはトローペ理論を主題法や作品構造を構成する要素としても用いている。また、音列の派生形を生む手段として、反行形や逆行形、移高形だけでなく、音列の各音をローテーションさせるという方法を用いている。これは、音列の最初の音を12番目の音の後に回し、音列を2番目の音から始める、またはさらに2番目の音をその後ろに回し、音列を3番目の音から始める、といった手法で、これにより1つの音列から11通りのバリエーションが生まれる。また、前後半6音ずつのローテーションも行われ、(最初の音を6番目の音の後に、7番目の音を12番目の音の後にする、など)この方法からは5通りのバリエーションが生まれる。 なお、トローペの語源は、修辞法における隠喩を表す"Tropus"で、グレゴリオ聖歌の歌唱法におけるトロープスと語源的には同じである。柴田南雄はこの44のトローペをさらに要約し、すべての12音列を35のヘクサコルドに分解する作業を行っている[1]。 記譜法ハウアーはトローペ用の新たな記譜法も考案したが、実作では用いられることがなかった。 脚注参考文献
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