カンシル酸トリメタファン(Trimetaphan camsilate)は、自律神経節型ニコチン性アセチルコリン受容体の非脱分極性競合拮抗薬で、交感神経系と副交感神経系の両方を遮断する。短時間作用型であり、静脈内投与される。日本では2001年に生産が中止された[1]。
効能・効果
作用や効果に選択性のある新薬との競合により、治療用途は非常に限定されている。高血圧クリーゼ(英語版)、解離性大動脈瘤、肺水腫の治療、また脳外科手術時の出血を抑える為に時折使用される。
禁忌
以下の患者には禁忌であった[2]。
- 重症の動脈硬化症
- 未治療の貧血
- 高度の非代償性出血
- 出血性ショック
- 呼吸不全
- 重篤な肝・腎疾患
- 高度の心・脳循環障害
- 妊婦
副作用
重大な副作用として、四肢末梢のチアノーゼ、呼吸停止、麻痺性イレウスが知られていた[2]。トルサード・ド・ポワントが発生した例も報告されている[3]。
薬理作用
正電荷を帯びたスルホニウム化合物であるため、血液脳関門を通過できず中枢神経系に作用しない。
副交感神経系が遮断されることで、眼球の水晶体を変形させる毛様体筋が収縮できなくなり(毛様体筋麻痺(英語版))、焦点を調節(英語版)できなくなる。また、消化管の運動が低下し便秘を引き起こす。
交感神経系が遮断されることで、心血管系(英語版)に強い影響を与える。血管が拡張し血圧が下がるため、このような薬剤の一般的な副作用である起立性低血圧が現れる。トリメタファンはヒスタミンも放出させるため血圧は更に下がる。心臓への影響としては収縮力低下と心拍数増加(頻脈)がある。心臓を支配する交感神経節も遮断するため、反射性頻脈は減少するか検出されない事がある。
稀な副作用に突然の呼吸停止があるが、神経筋伝達(英語版)を遮断しないと思われること、神経節遮断の結果として呼吸停止が起こることは考えにくいことから、その機構は不明である[4]。
参考資料
関連文献