トライアディック・メモリーズ

『トライアディック・メモリーズ』(Triadic Memories) は、アメリカ合衆国の作曲家モートン・フェルドマン1981年に作曲したピアノ独奏曲で[1]、3人のピアニスト、デイヴィッド・チューダーロジャー・ウッドワード高橋アキに献呈された[2]

作曲の経緯

1980年初頭、高橋アキはフェルドマンがディレクターをしていたニューヨーク州立大学バッファロー校付属の「創造と演奏の芸術センター」に招かれ、数々の演奏活動を行った。5月にニューヨークのソーホーで、フェルドマン作曲の1時間半もかかる弦楽四重奏曲の演奏を聴いて感激し、その場でフェルドマンに「この曲と同じ長さのピアノ曲」の作曲を依頼した[3]。前年末にはロジャー・ウッドワードもフェルドマンにピアノ曲を依頼していた[4]

出来上がった作品『トライアディック・メモリーズ』というタイトルは、二重の意味を持っている。一つはフェルドマンの生涯で大事な3人のピアニストである、デイヴィッド・チューダー、ロジャー・ウッドワード、そして高橋アキの思い出であり、もう一つはこの作品で使われる三和音の記憶である[5]

構成

曲は本質的に二つの異なる音程、短2度と長2度 (これは長7度と短7度でもある) から構成されている[5]。演奏時間はおよそ90分である[6]

初演

ウッドワードによる世界初演は1981年19月5日、作曲者臨席のもとロンドン現代美術館で行われ、フランス初演は1997年のパリの秋音楽祭において、モリエール劇場で行われた[7]

アメリカ初演は1982年3月12日、ニューヨーク州立大学バッファロー校内、ベアード・ホール、高橋アキ (ピアノ)[5]

楽譜

楽譜はユニヴァーサル社 から出版されている[6][8]

モートン・フェルドマン作曲『トライアディック・メモリーズ』の基本パターン。1990年開催の第1回シドニー春の現代音楽と美術の国際フェスティバルのためのリチャード・トゥープ英語版の記事。

脚注

  1. ^ Les griffures du silence de Morton Feldman Le Monde Renaud Machart 31.10.97, p.29. Machart, Renaud (October 10, 1997). “Les griffures du silence de Morton Feldman”. Le Monde: pp. 29. https://www.lemonde.fr/archives/article/1997/10/31/les-griffures-du-silence-de-morton-feldman_3811177_1819218.html 
  2. ^ 高橋アキ『パルランド : 私のピアノ人生』春秋社、2013年1月、157頁。ISBN 978-4-393-93570-5 
  3. ^ 『パルランド』春秋社、155-157頁。 
  4. ^ 『高橋アキピアノリサイタル2023 (演奏会プログラム)』カメラータ・トウキョウ、2023年10月25日、3頁。 
  5. ^ a b c モートン・フェルドマン著;柿沼敏江訳『《トライアディック・メモリーズ》について(『パルランド』所収)』春秋社、2013年1月、資料編(1)-(6)頁。 
  6. ^ a b Universal Edition” (英語). www.universaledition.com. 2023年10月27日閲覧。
  7. ^ Triadic Memories is one of three major works (the others are Piano and Orchestra and Piano) that Feldman wrote for, and dedicated to, Roger Woodward. His performance of Piano, Triadic Memories, Two Pianos, Piano Four Hands and of Piano Three Hands with Ralph Lane for the Australian Broadcasting Corporation (Sound Recording 1990) was licensed to Etcetera Records BV (1991) KTC 2015 and awarded Le Diapason d’or.
  8. ^ Feldman, Morton『Triadic memories : for piano solo (1981)』Universal Edition、1981年https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB19044680