ディバイナー 戦禍に光を求めて
『ディバイナー 戦禍に光を求めて』(原題:The Water Diviner)は、2014年のオーストラリア、アメリカ合作の戦争ドラマ映画。ラッセル・クロウの初監督作品。第一次世界大戦中のガリポリの戦い、および希土戦争の様子を描いている[5]。 2014年度のオーストラリア・アカデミー賞の作品賞などを受賞している[5]。 ストーリー1915年、第一次世界大戦中のトルコ[注 1]。イギリスの指示でガリポリに侵攻したオーストラリアとニュージーランドの志願兵からなる部隊は、トルコ軍との戦闘で多くの死者を出し撤退する。 時は経ち1919年、オーストラリア。農夫のジョシュアは4年前のガリポリの戦いで三人の息子を失った。心労から妻のエリザは亡くなり、一人になったコナーは息子達を捜しにトルコに向かう。 トルコに着くと、大戦は終わったもののギリシャ軍が侵攻[注 2]しており、やっとの思いでイスタンブールに着いたジョシュアは、ある未亡人が経営する宿にたどりつく。 宿の女将アイシェはガリポリの戦いで夫を失った未亡人であり、ジョシュアがかつての敵オーストラリア人だと知ると、始めは宿泊を断ろうとするがしぶしぶ受け入れる。やがて互いに伴侶を失っている二人は、少しずつ心を通わせる。 ガリポリにたどり着いたジョシュアは、戦没者の埋葬部隊を指揮するイギリス軍のシリル中佐から、現地に詳しいトルコ軍のハーサン少佐を紹介される。 ジョシュアは農夫だが、水脈を探し当てる職人"The Water Diviner"[注 3]でもあり、その特殊な能力も生かしついに次男と三男の亡骸を発見し、現地の共同墓地に他の戦死者たちと共に埋葬する。 やがてハーサン少佐から、長男アーサーが捕虜収容所で生存している可能性を知らされると、ジョシュアはギリシャ軍が侵攻している戦闘地帯へ救出に向かう。 ハーサン少佐も同行してくれるが、途中ギリシャ軍の攻撃を受けるとジョシュアとハーサンは共に助け合い、ついにアーサーを救出する。 そして再びイスタンブールに戻ったジョシュアは、アーサーを連れてアイシェの宿に向かうのだった キャスト※括弧内は日本語吹替[8]
スタッフ
製作本作で監督デビューを果たしたラッセル・クロウの映画製作会社フィア・オブ・ゴッド・フィルムズと、『マトリックス』を手掛けたアンドリュー・メイソンの製作会社ホップスコッチ・フィーチャーズが製作を行った。脚本は『サイアム・サンセット』を手掛けたアンドリュー・ナイトとアンドリュー・アナスタシオスが共同執筆した[9]。 実話本作は実話をもとに脚本が書かれた。メルボルン在住の脚本家アンドリュー・アナスタシオスは、オーストラリアの歴史を調べている際、シリル・ヒューズ中佐が書いた手紙を見つけた。シリルは第一次世界大戦後に廃墟と化したトルコのガリポリで、戦争墓地の建設に関わったイギリスの軍人で、アンドリューは手紙の文中に「ある年配の男が息子の墓を探し、はるばるオーストラリアからここへやって来た」という一文を見つけ、本作のストーリーを描いた[10]。 ロケーション作中でオーストラリアが舞台となるシーンは全体の5分の1ほどだが、ロケの4分の3近くはオーストラリアで撮影が行われた。2013年12月からシドニーで3週間のロケが行われ、主にイスタンブールの宿内や古い町並みのシーンが撮影された。 また2014年1月と2月には、南オーストラリアで5週間のロケが行われた。この撮影では49度以上の暑さの中、オーストラリアの田舎のシーンや、南海岸でガリポリのシーンが、砂漠地帯ではトルコが舞台のシーンが撮影された。その後、トルコのイスタンブールで3週間に渡り、町並みや地中海沿岸の史跡の撮影が行われた[10]。 キャスティングハーサン少佐役には、トルコで映画監督、俳優として知られるイルマズ・アルドアンが選ばれた。ラッセルが自らイルマズに電話をかけたが、当時イスタンブールにいたイルマズは「ラッセル・クロウから電話だよ」と言われ、始めは「何かの冗談だと思っていた」と語っている。電話では映画の企画について話し合われ、その3ヶ月後に役のオファーが来た[10]。 イスタンブールの宿の女将アイシェ役は、『007 慰めの報酬』でボンドガールに抜擢され注目を集めた、ウクライナ出身のオルガ・キュリレンコが演じた。6ヶ国語を話せるオルガは、本作でも見事なトルコ語を披露している[10]。 シリル・ヒューズ中佐役には、『ダイ・ハード/ラスト・デイ』でマクレーン刑事の息子役としてブルース・ウィリスと共演したジェイ・コートニーが選ばれた。オーストラリア出身の若手俳優であるコートニーは、オーストラリアのスター俳優ラッセル・クロウとの共演について「セリフを言い合っている相手はラッセル・クロウなんだ、本当にすごいことだよ」と後に語っている[10]。 評価興行成績オーストラリアでは、2014年12月26日の公開から6日間で461万ドルを稼ぎ出し、2014年に公開された同国映画の中で最も稼いだ作品となった[9]。 制作費およそ2,250万ドルに対し、世界中で3,080万ドル以上の収益を上げた。製作国アメリカでは410万ドルとあまり振るわなかったが、映画の舞台であるオーストラリアでは1,200万ドル、トルコでも570万ドル以上の興行成績を収めた[3][4]。 批評と影響作中の舞台であるオーストラリアとトルコでは、上述した興行成績において好評を得たが、その一方でギリシャをはじめ幾つかの国では、オスマン帝国によるギリシャ人虐殺やアルメニア人虐殺について触れず、トルコを美化するような映画の内容に対し批判的な評価が出いている。 1915年のアルメニア人虐殺、アッシリア人虐殺、ギリシャ人虐殺の犠牲者の子孫たちは、一部のトルコ人がジェノサイドを行っていたこと、また映画の中でトルコ人を犠牲者として描写したことについて憤慨した。また様々な映画批評家やギリシャのサイトには、「トルコを和らげるだけの歴史の歪曲、その後の虐殺の否定」などと書かれた[11][12]。 イギリスの保守週刊誌"The Spectator"のアンソニー・マクアダムスは「映画の歴史的文脈の欠如は息をのむ」とし、アルメニア人虐殺の言及が欠けていることがこの映画の欠陥であると語っている[13]。 受賞とノミネートオーストラリアで複数の賞を受賞、およびノミネートされた。
関連項目
注釈
脚注
外部リンク |