テングザル (天狗猿[ 8] 、学名 : Nasalis larvatus )は、霊長目オナガザル科テングザル属に分類されるサル。本種のみでテングザル属を構成する[ 4] 。
分布
ボルネオ島 (インドネシア 、ブルネイ 、マレーシア )[ 1]
形態
頭胴長(体長 )オス66 - 76.2センチメートル、メス53.3 - 60.9センチメートル[ 3] 。尾長オス66 - 67センチメートル、メス55 - 62センチメートル[ 6] 。体重 オス21.2キログラム、メス10キログラム[ 3] [ 6] 。胴体は赤褐色、頬や尻・四肢・尾は淡灰色[ 4] 。
指趾の間には水かきがある[ 6] 。鼻は長く伸びる[ 6] 。属名Nasalis はラテン語の「鼻」に由来し。種小名larvatus は「仮面をつけた」の意[ 4] 。
出産直後の幼獣の顔は青い[ 5] 。オスの成獣の鼻は、特に大型で長い[ 6] 。陰茎は赤みを帯びたピンク色で、陰嚢は黒い[ 5] 。
分類
ボルネオ島北東部の個体群を亜種N. l. orientalis として分割する説もあるが、この亜種を認めない説もある[ 3] 。
生態
マングローブ 林、湿地林、河辺林 などに生息する[ 6] 。樹上棲。1頭のオスとメスからなる小規模な群れを形成して生活する[ 6] 。薄明薄暮時に小規模な群れ同士が集合し、約80頭の群れを形成することもある[ 6] 。雌雄ともに、群れから群れへ行き来する[ 6] 。泳ぎは上手く、水中で20メートルの距離を泳いだ例もある[ 3] 。驚くと樹上から水面に跳びこむこともあり、地上15メートルの樹上から水面に飛びこんだ例もある[ 6] 。
マレーシアのKinabatangan川周辺の個体群での2000 - 2001年および2005 - 2006年の観察例から、霊長類では初めて自然下で吐き戻しおよび咀嚼という反芻に似た行動が確認された[ 9] 。捕食者としてウンピョウ類、マレーグマ 、キングコブラ 、アミメニシキヘビ 、イリエワニ 、マレーガビアル 、ミズオオトカゲ が挙げられる[ 3] 。
繁殖様式は胎生。妊娠期間は166日[ 3] [ 6] 。1回に1頭の幼獣を産む[ 3] 。授乳期間は7か月[ 3] [ 6] 。
人間との関係
生息地では食用とされたり、消化器官内で見つかる結石が薬用になると信じられている[ 1] 。
森林伐採や農地開発・森林火災・採掘・エビの養殖池への転換などによる生息地の破壊、食用や薬用の狩猟などにより生息数は激減している[ 1] [ 7] 。1975年のワシントン条約発効時から、(1983 - 1995年はテングザル属単位で)附属書Iに掲載されている[ 2] 。生息地では、狩猟・捕獲が禁止されている[ 7] 。一方でこれらは周知や資金不足・不十分な管理により、徹底されていないという問題がある[ 1] 。
日本では2021年の時点でナサリス・ラルヴァトゥスとして特定動物 に指定され、2019年6月には愛玩目的での飼育が禁止された(2020年6月に施行)[ 10] 。
画像
出典
^ a b c d e f g h Boonratana, R. et al ., 2021. Nasalis larvatus (amended version of 2020 assessment). The IUCN Red List of Threatened Species 2021: e.T14352A195372486. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2021-1.RLTS.T14352A195372486.en . Downloaded on 14 August 2021.
^ a b UNEP (2021). Nasalis larvatus . The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net . [Accessed 14/08/2021]
^ a b c d e f g h i j Lee E. Harding, "Nasalis larvatus (Primates: Colobini) ," Mammalian Species , Volume 47, Number 926, American Society of Mammalogists, 2015, Pages 84 - 99.
^ a b c d e 岩本光雄「サルの分類名(その3:コロブスモンキー、ラングールなど) 」『霊長類研究』第3巻 1号、日本霊長類学会、1987年、59 - 67頁。
^ a b c Douglas Blandon-Joones 「テングザル」早木仁成訳『動物大百科 3 霊長類』伊谷純一郎監修 D.W.マクドナルド編、平凡社 、1986年、114頁。
^ a b c d e f g h i j k l m n 渡邊邦夫 「テングザル」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ5 東南アジアの島々』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社 、2000年、18 - 19、127頁。
^ a b c 村井勅裕 「マレーシア・サバ州のテングザルの調査と保護 」『霊長類研究』第20巻 2号、日本霊長類学会、2004年、129 - 132頁。
^ 松村明 編「てんぐざる(天狗猿)」『大辞林 4.0 』三省堂 、2019年。
^ Ikki Matsuda, Tadahiro Murai, Marcus Clauss, Tomomi Yamada, Augustine Tuuga, Henry Bernard, Seigo Higashi "Regurgitation and remastication in the foregut-fermenting proboscis monkey(Nasalis larvatus ) ," Biology Letters , Volume 7, 2011, Pages 786 - 789.
^ 特定動物リスト (動物の愛護と適切な管理) (環境省 ・2021年8月14日に利用)
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
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