チャラン属 (ヒトリシズカ属、学名 : Chloranthus ) は、被子植物 のセンリョウ科 に分類される1属である。多年草 または常緑 小低木 であり、葉縁 に鋸歯をもつ葉 が対生 している。花被 を欠き雄しべ と雌しべ だけからなる花が、穂状花序につく (図1)。雄しべは3個が合着しており (1個が3裂しているとされることもある)、雌しべの背側についている。東アジア から東南アジア に分布し、ヒトリシズカ やキビヒトリシズカ 、フタリシズカ など約15種が知られている。
チャラン は精油 を採取するために栽培されており、またお茶の香り付けなど香料に使われることがある。またいくつかの種は薬用に利用されている (有毒でもある)。ヒトリシズカ やチャランなどは観賞用に栽培されることがある。
特徴
多年草 または茎 が緑色の常緑性 小低木 [ 4] [ 5] [ 2] (下図2)。茎 や葉 は無毛、精油 を含み、芳香がある[ 4] 。葉は対生 し (ときに輪生状)、対生する葉柄 は低い峯 (葉鞘) でつながっている[ 4] [ 5] 。葉身 は楕円形から卵円形、葉縁 に鋸歯がある[ 2] (図1, 2c)。托葉 は線形で小さい[ 4] [ 5] [ 2] 。
多数の花 をつけた穂状花序 が頂生または腋生し、この花序はしばしば分枝する[ 4] [ 5] [ 2] (下図3)。花 は苞 に腋生し、小さく、両性、雌しべ とその背側 (背軸側) についた雄しべ からなり、花被 を欠く[ 4] [ 5] [ 2] 。雄しべは白色や黄色、3個が基部で合着し (または1個が3裂し)、裂片は短く椀状になる種 (フタリシズカ など) と、裂片 (葯隔) が細長く伸びる種 (ヒトリシズカ など) がある[ 4] [ 5] [ 2] (下図3)。前者では、雄しべが子房上部を覆っている[ 4] 。中央の裂片に葯 (半葯) が2個ある場合と、葯を欠く場合があり、左右の裂片には1個ずつ葯がある[ 4] [ 5] [ 2] (下図3a)。子房 は1室、向軸側に1本の維管束 が走り、直生胚珠 が1個下垂しており、ふつう花柱 を欠き、柱頭 は切形[ 4] [ 5] (下図3a)。果実 は核果 、球形から倒卵形、白色や淡緑色[ 4] [ 5] [ 2] 。
分布
日本 、韓国 、中国 東部、ロシア 東部、東ヒマラヤ 、バングラデシュ 、東南アジア 、ニューギニア に分布している[ 1] 。
人間との関わり
チャラン属のチャラン は、花 や地下茎 から精油 を採取するために栽培されており、またお茶の香り付けなどに利用されることもある[ 4] [ 6] 。ヒトリシズカ やキビヒトリシズカ 、フタリシズカ 、C. holostegius 、C. multistachys などいくつかの種は、特に中国では生薬 とされることがある[ 5] [ 7] [ 8] 。ただし多くは有毒でもある[ 4] 。またヒトリシズカ やチャランなどは観賞用に栽培されることがある[ 9] [ 10] 。
分類
チャラン属 (ヒトリシズカ属ともよばれる[ 4] ) はセンリョウ科 に属する。センリョウ科の中では、小低木 から多年草 である点、両性花 をもつ点でセンリョウ属 と共通しており、系統的にも近縁であることが示されている[ 11] 。
チャラン属内には、約15種 が知られている[ 1] (下表1)。これらの種については、分子系統解析 から下図4のような系統関係が推定されている (一部の種を含んでいない)[ 12] 。このような系統関係は、雄しべ の形態的多様性に対応したものであることが示されている。
4 . チャラン属の系統仮説の1例[ 12] (一部の種 は含まれていない)
脚注
出典
^ a b c d e f g h i j k “Chloranthus ”. Plants of the World online . Kew Botanical Garden. 2021年8月15日 閲覧。
^ a b c d e f g h i 米倉浩司 (2015). “センリョウ科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1 . 平凡社. pp. 52–53. ISBN 978-4582535310
^ 林 弥栄 & 門田 裕一 (監修) (2013). “ヒトリシズカ”. 野に咲く花 増補改訂新版 . 山と渓谷社. p. 22. ISBN 978-4635070195
^ a b c d e f g h i j k l m n o 大森雄治 (1999). “日本のドクダミ科・コショウ科・センリョウ科植物”. 横須賀市博物館研究報告 自然科学 46 : 9-21. NAID 40003710131 .
^ a b c d e f g h i j Flora of China Editorial Committee (2008年). “Chloranthus ”. Flora of China . Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年8月15日 閲覧。
^ “Chloranthus spicatus ”. Tropical Plants Database, Ken Fern . 2021年8月15日 閲覧。
^ “はかなくも可憐な花「ヒトリシズカ」 ”. 養命酒製造株式会社 (2019年4月). 2021年8月14日 閲覧。
^ 堀田清・野口由香里. “ヒトリシズカ ”. 薬用植物園 . 北海道医療大学. 2021年4月23日 閲覧。
^ “ヒトリシズカ ”. みんなの趣味の園芸 . NHK出版. 2021年8月14日 閲覧。
^ “チャラン ”. 観葉植物の種類・育て方 . 2021年8月15日 閲覧。
^ Stevens, P. F. (2001 onwards). “Schisandraceae ”. Angiosperm Phylogeny Website. Version 14, July 2017 . 2021年8月7日 閲覧。
^ a b Kong, H. Z., Chen, Z. D. & Lu, A. M. (2002). “Phylogeny of Chloranthus (Chloranthaceae) based on nuclear ribosomal ITS and plastid trnL‐F sequence data”. American Journal of Botany 89 (6): 940-946. doi :10.3732/ajb.89.6.940 .
^ 米倉浩司・梶田忠. “植物和名ー学名インデックス YList ”. 2021年8月15日 閲覧。
外部リンク
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Flora of China Editorial Committee (2008年). “Chloranthus ”. Flora of China . Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年8月15日 閲覧。 (英語)
“Chloranthus ”. Plants of the World online . Kew Botanical Garden. 2021年8月15日 閲覧。 (英語)