ゾンビ (村上春樹)概要
当時ローマに暮らしていた村上は、本作品と「加納クレタ」の二つの短編をワン・セットとして郵便で編集者に送るが、雑誌掲載を断られてしまう。そのため両作品とも書き下ろしとなった[1]。 80年代末から90年代初頭にかけて、村上は女性が主人公の短編小説を集中的に書いた。「眠り」(1989年)、「加納クレタ」(1990年)、「緑色の獣」(1991年)、「氷男」(1991年)などである。本作「ゾンビ」も同様に女性が主人公の物語である。 あらすじ真夜中、墓場のとなりの道を二人は歩いていた。「まるでマイケル・ジャクソンのビデオみたい」と女が言った。「うん、墓石が動くんだ」と男は答えた。女は邪悪なことが起こりそうな予感がした。ゾンビだ。でも何も見えなかった。 「どうして君はそんなみっともない歩き方をするんだろうな」と男が唐突に言った。男は悪口雑言を並べ立てたあと、にやっと笑い、自分の手で顔の皮膚をどんどんはがしていった。唇が消えて、歯がむきだしになった。 「俺がお前といっしょになったのは、お前の豚みたいな肉を食うためだ。それ以外にお前なんかとつきあう意味があるもんか」 肉のかたまりがブラウスの襟をつかみ、彼女は思いきり悲鳴をあげる。 気がつくと二人は湖のそばのホテルのベッドに寝ていた。 脚注関連項目
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