ジアフェニルスルホン(正確にはジアミノジフェニルスルホン、diaminodiphenyl sulfone; DDS)[1]は、薬学的には合成抗菌剤・免疫抑制剤の一つ、工業的にはエポキシ樹脂の硬化剤である。医薬品での商品名はレクチゾール(田辺三菱製薬製造販売)、欧米ではダプソン(Dapsone)の名で知られる。
薬理
適応症
- 持久性隆起性紅斑、ジューリング疱疹状皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、色素性痒疹
- ハンセン病
- 適応外ではあるが、皮膚結節性多発動脈炎、アナフィラクトイド紫斑、皮膚アレルギー性血管炎、蕁麻疹様血管炎などの血管炎、線状IgA水疱症や粘膜類天疱瘡などの水疱症、好酸球性膿疱性毛包炎や角層下膿疱症などの無菌性膿疱性疾患群、壊疽性膿皮症やSweet病、ベーチェット病などの好中球性疾患、顔面播種状粟粒性狼瘡や環状肉芽腫などの肉芽腫症、皮膚筋炎の皮膚症状や、円板状エリテマトーデス、亜急性皮膚エリテマトーデスなどの膠原病、集族性ざ瘡、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹などにも効果を示す。
工業用途
芳香族ポリアミンとして一般的な化学種であり、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる。主な用途はガラスエポキシ基板の製造である。他のポリアミン硬化剤と比較して耐熱性に優れる。
歴史
ジアフェニルスルホンは、フランスのエルネスト・フルノー(フランス語版)[3] と、イギリスのグラッドウィン・バトル(Gladwin Buttle)[4] により、それぞれ独自に発見された[5]。
その後、誘導体のグルコスルホンナトリウムが「プロミン」の商品名でハンセン病治療薬として実用化され、絶大な効果を上げたが、注射剤としてしか使えないことから、錠剤として使えるDDSの方が用いられる。
脚注
- ^ Thomas L. Lemke (2008). Foye's Principles of Medicinal Chemistry. Lippincott Williams & Wilkins. p. 1142. ISBN 9780781768795. https://books.google.ca/books?id=R0W1ErpsQpkC&pg=PA1142
- ^ a b レクチゾール錠25mg、田辺三菱製薬、2015年12月19日閲覧
- ^ Fourneau, E.; Tréfouël, Th. et J.; Nitti, F.; Bovet, D. (1937). “Action antistreptococcique des dérivés sulfurés organiques” (フランス語). Comptes rendus de l'Académie des sciences 204: 1763. http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k31562/f1763.image.
- ^ Buttle, G.A.H.; Stephenson, D.; Smith, S.; Dewing, T.; Foster, G.E. (June 1937). “Treatment of streptococcal infections in mice with 4:4'diamino-dipheni-sulphone”. Lancet 229 (5936): 1331–4. doi:10.1016/S0140-6736(00)75868-5. http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2800%2975868-5/abstract.
- ^ “Leprosy | 14 History of dapsone and dyes”. 2009年2月24日閲覧。 (1937)
外部リンク