シントウトガリネズミ (学名:Sorex shinto )は、哺乳綱真無盲腸目 トガリネズミ科 トガリネズミ属 に属するトガリネズミの1種である。エゾトガリネズミ と同じくバイカルトガリネズミ Sorex caecutiens の亜種 とする説もある。
分布
日本 固有種 であり、本州 の紀伊半島 、京都府 以北の山地、佐渡島 、四国 の山地に生息する[ 4] 。紀伊半島や中部 山岳地帯では高地に生息するが、東北地方 では低山にも生息する。
中国山地の帝釈峡 では、旧石器時代の遺物層から見付かり、縄文時代には消える。今より寒冷だった時代にはもっと分布が広かったと推定できる[ 5] 。
形態
頭胴長が52-78mm、尾長が40-55mm、後足長が11.4-13.5mm、体重が3.9-13.5gになる。トガリネズミ 類のなかでは中型であり、夏毛の背面は暗い赤褐色で、腹面が灰色または薄茶色になる。冬毛は夏毛に比べ全体的に暗色が強くなる[ 4] 。尾が長いのが特徴であり、頭胴長の64-101%になる。尾には短毛が密生し、成獣では先端部には6mmほどの毛があるが、老獣になると無くなってしまう[ 6] 。
生態
森林の落ち葉や腐葉土が積もった地表で生活をする。チョウ やガ の幼虫、アリなどの昆虫 類や、クモ 類、ジムカデ 類を食べる。春に2-6頭の仔を産む[ 4] 。脇腹の臭腺から悪臭を出すため、フクロウ 類などを除きあまり捕食する動物がいない。
分類
以前はユーラシア大陸産のバイカルトガリネズミ (トガリネズミ)Sorex caecutiens と同種とする説もあった[ 7] 。Hutterer (2005) は本州以南の個体群を別種S. shinto とし、北海道産として記載されたエゾトガリネズミS. s. saevus をS. caecutiens のシノニムとしている[ 2] 。
以下の亜種は、Mammal Species of the World, 3rd edition による分類。『改訂版 日本の哺乳類』も同じ分類としている。
Sorex shinto shinto Thomas, 1905 シントウトガリネズミ(ホンシュウトガリネズミ)
基亜種。本州産[ 7] 。
Sorex shinto shikokensis (Abe, 1967) シコクトガリネズミ Shikoku sinto shrew[ 8]
四国産の亜種。石鎚山 、佐々連尾山 、下兜山 、剣山 など、標高800m以上の四国山地 の森林に生息する。
Sorex shinto sadonis Yoshiyuki and Imaizumi , 1986 サドトガリネズミ
佐渡島産の亜種。独立種として Sorex sadonis とする説もある。
シコクトガリネズミとサドトガリネズミは、本州産と比べて大型になる。上顎の吻部や口蓋部が相対的に幅広く、短い[ 4] 。
種の保全状況評価
シントウトガリネズミ Sorex shinto
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001) )[ 1]
シコクトガリネズミ Sorex shinto shikokensis
準絶滅危惧(NT) (環境省レッドリスト )[ 8]
高知県レッドデータブック - 準絶滅危惧[ 9]
脚注・参考文献
^ a b c d Laginha Pinto Correia, D. 2016. Sorex shinto . The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T41417A22318847. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-1.RLTS.T41417A22318847.en . Accessed on 05 April 2022.
^ a b c Rainer Hutterer, “Order Soricomorpha ,” In: Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World (3rd ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 220-311.
^ 本川雅治・下稲葉さやか・鈴木聡「日本産哺乳類の最近の分類体系 ―阿部(2005)とWilson and Reeder(2005)の比較― 」『哺乳類科学』第46巻 2号、日本哺乳類学会、2006年、181-191頁。
^ a b c d 阿部 永『日本の哺乳類』(改訂2版)東海大学出版会 、2008年、8頁。ISBN 978-4-486-01802-5 。
^ 河瀬正利『中国山地の縄文文化 帝釈峡遺跡群』、新泉社、2007年、38 - 39頁。
^ 今泉吉典 『原色日本哺乳類図鑑』保育社 、1960年、9-17頁。ISBN 978-4-586-30007-5 。
^ a b 阿部永 「日本産食虫類の種名の検討 」『哺乳類科学』第36巻 1号、日本哺乳類学会、1996年、97-108頁。
^ a b 横畑泰志「シコクトガリネズミ」環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生生物- 1 哺乳類』ぎょうせい、2014年、78頁。
^ 谷地森秀二「シントウトガリネズミ」高知県レッドデータブック(動物編)改訂事業 改訂委員会編『高知県レッドデータブック2018 動物編』高知県林業振興・環境部 環境共生課、2018年、16頁。
小宮輝之 『日本の哺乳類』 学習研究社<フィールドベスト図鑑>、2002年、P94-95
関連項目