シロアゴガエル

シロアゴガエル
シロアゴガエル Polypedates leucomystax
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 両生綱 Amphibia
: 無尾目 Anura
亜目 : カエル亜目 Neobatrachia
: アオガエル科 Rhacophoridae
亜科 : アオガエル亜科 Rhacophorinae
: シロアゴガエル属 Polypedates
: シロアゴガエル P. leucomystax
学名
Polypedates leucomystax
(Gravenhorst, 1829)
和名
シロアゴガエル
英名
White-lipped Tree Frog

シロアゴガエル(白顎蛙、Polypedates leucomystax)は、両生綱無尾目アオガエル科シロアゴガエル属に分類されるカエル。環境省指定特定外来生物日本の侵略的外来種ワースト100に選定されている。学名は「白い上唇をもった、よく跳ねるもの」という意味。

分布

東南アジア原産。日本では沖縄諸島の大部分、大東諸島北大東島)、宮古列島の大部分、八重山列島石垣島)、奄美群島与論島徳之島)に移入分布している[1][2][3]。石垣島に隣接する西表島でも一時期定着していたが、2年後に根絶された(後述)。住宅地や農耕地、二次林に生息している。

形態

体長はオスが4.7-5.2センチメートル、メスが6.3-7.3センチメートル。背面は灰褐色や赤褐色。正中線はないが、暗色でやや幅広い4本の縦条斑を持つ個体が多い。表面には細かな顆粒状突起がある。上顎(人の上唇に相当する部分)が白い。前後足とも指先の吸盤がよく発達する[4][5]。前足に水掻きはない。

卵径は1.5ミリメートルで、アマミアオガエル(2.4ミリメートル)より小さい。幼生は、眼が体の側面にあり、体形はヒメアマガエルの幼生に似る。吻端に白斑を持つ個体が多い[4]

生態

夜行性。「ギィッ」「グェッ」という声で鳴く。樹上性だが地上でも活動する。沖縄、奄美での繁殖期は主に4-10月。止水環境に集まり、直径5-8センチメートルほどの泡に包まれた卵塊(泡巣[6])を、池や水たまりなどにある木の枝やコンクリートの壁面、水桶の縁などに産み付ける[3][7]。泡巣は産下直後は黄白色だが、しばらくすると淡褐色に変色する。

国外での報告では、一度に100-400個の卵を産み、卵は4日くらいで孵化し、幼生は7週間ほどで変態しはじめるという[8]

外来種問題

日本では1964年沖縄本島嘉手納基地の前で採集された後、1997年には宮古列島で、2007年には石垣島で発見された[7]。貨物にまぎれて侵入したと考えられる。

餌や産卵場所をめぐる競争、鳴き声による繁殖妨害を通し、在来種のカエルに悪影響を与えている可能性がある[9]。また、本種とともに本来は日本国内に分布していない線虫の一種が持ち込まれており、こうした寄生虫の影響も心配されている[9]

防除の取り組み

石垣島では、発見当初の2007年からオタマジャクシが確認された沈砂池塩素剤を投入して駆除を進めている[10]

西表島では、2015年8月に鳴き声により侵入が確認された。また、同年9月には沈砂升でオスが捕獲され、同年10月には卵塊が発見されて繁殖も確認された。しかし、薬剤防除[11]や人手による駆除[12]が行われた結果、2017年5月以降は生息が確認されず、環境省では2019年10月7日に、シロアゴガエルの繁殖が確認された島では初めてとなる、西表島でのシロアゴガエルの根絶を発表した[12][13]。その後も監視は続けられており、定着を防いでいる[14]

奄美群島では、2013年に与論島で、2023年春には徳之島で定着が確認され、同年末時点で徳之島町南部と、隣接する伊仙町東部で確認されている[3]。与論島では2019年までには島内全域に広まってしまったが、徳之島では拡大を防止するべく駆除が開始されている。地域住民にも情報提供の呼びかけと同時に、畑に不要なバケツやタライを放置しないように(放置すると雨水が溜まって繁殖場となりうるため)などの注意喚起が行われている[15]

脚注

  1. ^ シロアゴガエル”. 侵入生物データベース. 国立環境研究所. 2019年10月8日閲覧。
  2. ^ 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著)『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日。ISBN 978-4-582-54241-7 
  3. ^ a b c 徳之島における特定外来生物シロアゴガエルの生息確認について”. 沖縄奄美自然環境事務所. 環境省 (2023年5月19日). 2024年8月7日閲覧。
  4. ^ a b 前田憲男、松田正文 1999 改訂版日本カエル図鑑. 文一総合出版
  5. ^ 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎『決定版 日本の両生爬虫類』平凡社、2002年9月20日。ISBN 4-582-54232-8 
  6. ^ 絹見朋也・原本悦和・稲垣英利・茂里 康 2023 カエル泡巣タンパク質の探索と機能. Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan 71 (2) : 79-80.
  7. ^ a b オオヒキガエルとシロアゴガエルについて”. 沖縄奄美自然環境事務所. 環境省. 2024年8月7日閲覧。
  8. ^ Callyn D. Yorke 1983 Survival of Embryos and Larvae of the Frog Polypedates leucomystax in Malaysia. Journal of Herpetology 17 (3): 235-241
  9. ^ a b 村上興正・鷲谷いづみ(監修) 日本生態学会(編著)『外来種ハンドブック』地人書館、2002年9月30日。ISBN 4-8052-0706-X 
  10. ^ 【通知】石垣島におけるシロアゴガエルの生息状況と今後の対策』(プレスリリース)那覇自然環境事務所、2007年10月22日https://kyushu.env.go.jp/okinawa/pre_2007/1022a.html2024年8月7日閲覧 
  11. ^ “外来種対策連絡会議 試験的に薬剤駆除へ”. 八重山毎日新聞 (八重山毎日新聞社). (2015年10月28日). オリジナルの2019年10月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20191012010527/http://www.y-mainichi.co.jp/news/28619/ 2024年8月7日閲覧。 
  12. ^ a b “シロアゴガエル根絶宣言 環境省が発表、全国初”. 八重山毎日新聞 (八重山毎日新聞社). (2019年10月9日). オリジナルの2021年3月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210304184849/https://www.y-mainichi.co.jp/news/35799/ 2024年8月7日閲覧。 
  13. ^ “シロアゴガエル 西表で根絶 全国初、2年間確認されず”. 八重山日報 (八重山日報社). (2019年10月8日). https://yaeyama-nippo.co.jp/archives/9177 2024年8月7日閲覧。 
  14. ^ 西表島におけるシロアゴガエルの捕獲について”. 沖縄奄美自然環境事務所. 環境省 (2021年6月4日). 2024年8月7日閲覧。
  15. ^ 特定外来生物「シロアゴガエル」の侵入確認について”. 伊仙町 (2023年6月9日). 2024年8月7日閲覧。