シクロオクタン

シクロオクタン
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識別情報
CAS登録番号 292-64-8 チェック
PubChem 9266
ChemSpider 8909 チェック
ChEMBL CHEMBL452651 チェック
特性
化学式 C8H16
モル質量 112.21 g/mol
密度 0.834 g/cm3
融点

14.59 °C, 287.74 K, 58.26 °F

沸点

149 °C[1]

への溶解度 7.90 mg/L
関連する物質
関連するシクロアルカン シクロヘプタン
シクロヘキサン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

シクロオクタン(cyclooctane)は、分子式 C8H16で表される、分子量 112.2 の環状の飽和炭化水素である[2]。しばしば飽和8員環化合物の代表として言及される。

立体配座

シクロオクタンの立体配座は、計算化学の手法を使って広く研究されてきた。その中でHendricksonは

「似かよったエネルギーの立体配座が幾つも存在するので、シクロオクタンは立体化学において、紛れもなく最も複雑なシクロアルカンである。」

と述べた[3][注釈 1]

結局は、舟-いす形 (I) こそが、シクロオクタンにおける最も安定な立体配座であると判明した[3]。この配座はAllingerらによって確認された[4]。なお、かんむり形 (II) は「舟-いす形」と比べて、僅かに不安定である[5]。なお、かんむり形配座が安定な化合物は沢山存在するが、その中でも硫黄の同素体の形の1つであるS8は有名である。

Skeletal formulas of both conformations
Ball-and-stick model
Ball-and-stick model
舟-いす形配座 (I)
かんむり形配座 (II)

反応理論

シクロオクタン誘導体の製法の1つとして、ブタジエンの2量化を紹介する。ここではビス(シクロオクタジエン)ニッケルのようなニッケル(0)錯体を触媒に利用する[6]。この過程で、1,5-シクロオクタジエン (COD) などの化合物が生成する。CODは均一系触媒の前駆体の調製に広く使われる。CODを水素化して、飽和炭化水素にする方法で、シクロオクタンを合成できる。

C8H12 + 2 H2 → C8H16

典型的な飽和炭化水素と同様に、シクロオクタンは燃焼反応やフリーラジカルハロゲン化反応を起こす。アルカン官能化の最近の研究は、化学の領域をいくぶん広げている。例えば、過酸化ジクミルのような過酸化物を用いる、フェニルアミノ基の研究がそうである[7]

ニトロベンゼンによるシクロオクタンのアミノ化。

樟脳臭を有する物質

樟脳の匂いの主成分はカンファーとして知られている。しかし、カンファーとは全く分子構造が異なるのに、シクロオクタンも樟脳のような匂いがすると言われる。さらに、例えばヘキサクロロエタンなども、樟脳のような匂いがすると言われている。嗅覚については不明な点が多いとされる理由の1つとして、これらの例ように極性も分子形も全く違うのに、ヒトが官能試験を行うと、いずれも似た臭気だと感ずる化合物群が存在する点も挙げられる。

法規制

日本では、消防法による第4類危険物の第2石油類に該当する[8]

脚注

注釈

  1. ^ 例えばシクロヘキサンなら、結合角歪みも、立体障害も無い「いす形」が最も安定な立体配座だと誰の目にも明らか。

出典

  1. ^ Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.53 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
  2. ^ Mackay, Donald (2006). Handbook of Physical-chemical Properties and Environmental Fate for Organic Chemicals. CRC Press. p. 258. ISBN 1566706874. https://books.google.co.jp/books?id=wjd-nEugVskC&redir_esc=y&hl=ja 
  3. ^ a b Hendrickson, James B. (1967). “Molecular Geometry V. Evaluation of Functions and Conformations of Medium Rings”. Journal of the American Chemical Society 89 (26): 7036-7043. doi:10.1021/ja01002a036 
  4. ^ Dorofeeva, O.V.; Mastryukov, V.S.; Allinger, N.L.; Almenningen, A. (1985). “The molecular structure and conformation of cyclooctane as determined by electron diffraction and molecular mechanics calculations” (pdf). The Journal of Physical Chemistry 89 (2): 252-257. doi:10.1021/j100248a015. http://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/j100248a015 2008年2月5日閲覧。. 
  5. ^ IUPAC, Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book") (1997). オンライン版:  (2006-) "crown conformation".
  6. ^ Thomas Schiffer, Georg Oenbrink “Cyclododecatriene, Cyclooctadiene, and 4-Vinylcyclohexene” in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2005, Wiley-VCH, Weinheim.doi:10.1002/14356007.a08_205
  7. ^ Deng, Guojun; Wenwen Chen, Chao-Jun Li (February 2009). “An Unusual Peroxide-Mediated Amination of Cycloalkanes with Nitroarenes”. Advanced synthesis & catalysis 351: 353-356. doi:10.1002/adsc.200800689. 
  8. ^ 法規情報 (東京化成工業株式会社)