サブスタンダード船(サブスタンダードせん、英: Substandard Ship)とは、SOLAS条約などの国際条約に定められた基準を満たしていない船のことである。
概要
不十分な装備が原因で、しばしば座礁や海難事故を引き起こすことから国際的に問題視されており、日本でもポートステートコントロール(PSC)を行い、外国船舶監督官による立入り検査改善を指導しているが、いまだに多くの船が改善されないまま世界中の海を航行している[3]。
サブスタンダード船は基本的に2種類のカテゴリーに分類される。
- 国際条約を満たすように建造された船舶であるが、古くなり適切な維持管理をおこなわないため鉄の構造部分が腐食したり、修理が必要な箇所がある、又は機器が作動しなくなった船舶や、既存船であっても満足しなければならない新しい規則を満足していない船舶。
- 国際航海に従事しないため国際条約を満足するように建造されていない内航船が外売や外国籍に登録された後に、国際航海をする船舶。輸出許可を受けた後、又は船の国籍が変わった後に、国際条約に満足するような工事や艤装を行わずに出港という形で事実上のサブスタンダード船となる。[4]
過去に日本の内航船が日本の税関から輸出許可を受けた後に、日本の港から出港し日本の領海内で座礁し放置されたケースが多々ある(放置座礁外国船)。税関、海上保安庁、及びポートステートコントロール(PSC)の協力が必要であるが、根本的解決に至っていない。
サブスタンダード船は船舶が登録されている国及び船舶に証書を発給する検査会社と深い関係がある。この2つでサブスタンダード船である可能性が高いか判断できる。
問題
サブスタンダード船とはサブスタンダード船だけでなく、サブシッピングを行う海運会社に運航される船舶も含まれると考えられる。船舶に問題がなくとも、運航する会社や操船する船員の教育、経験及び訓練に問題があれば海難を起こす可能性が高いからである。
造船所には「ドック入りの時には、船級協会や船籍国政府の検査を受けて合格しないと、『船級』が維持できずに、船体保険や貨物保険が掛けられなくなる。稀に船級を持たないまま運航する船があり、これらは『サブスタンダード船』と呼ばれ、海難リスクの高い船として注意が払われる[5][6]。」とされている。
船舶油濁損害賠償保障法の改正後、国際船級協会連合以外の検査に問題がある検査会社が発給した証書でも保険(P&I)を受ける保険会社が現れ、『サブスタンダード船』であっても保険に加入できるようになった。しかし、このような船が座礁した場合、放置されたり、撤去がスムーズに行われないケースが起きている[7]。放置座礁外国船問題として困っている自治体も存在する[8][9]。
国際航海に従事する船舶が守るべき国際条約の基準を満たしていない内航船が外国籍船外航船として登録された時点で、国際条約に定められた基準を満たしていない船、つまりサブスタンダード船となる。
非国際内航船
- 非国際日本船籍内航船はSOLAS条約などの国際条約を満足しない。よって、基本的に日本国内海域内のみ航行できる。しかしながら特別な協定が韓国と結ばれているのか、非国際沿海区域及び限定近海区域を運航できる内航船は韓国へ行ける[10]。日本では船舶の航行する水域を「平水区域、沿海区域、近海区域、遠洋区域」の4つに区分している[11]。平水区域のみしか運航できない日本船籍内航船は船舶に係る設備・構造の基準や船体の強度及び水密を保持に問題があるので国際航海は出来ない。そして沿海区域[12]又は/及び限定近海水域図[13]のみしか運航できない日本船籍内航船は指定された水域以外の国際航海には従事できない。よって限定近海水域以内のみ航行できる日本船籍内航船が有効な検査証書を具備した船舶であっても目的地が外国の港(韓国やロシアの一部を除く)であれば国際航海となり国際条約を満足しないサブスタンダード船となる。[14]
- 非国際日本船籍内航船はSOLAS条約で要求される無線設備(GMDSS)の問題がある[15]。無線設備(GMDSS)には多額の費用が必要となるので船が運行される区域で要求される無線設備以外は設置しない。(GMDSSのA1+A2+A3をカバーしている無線設備を搭載した非国際内航船は存在しない。電話と同じように電話機だけあっても契約しないと使えないようにアカウントを開設しないと使えない無線機器もある。アカウントを開設しても無線機器を再設定しないと使えない。
- 非国際日本船籍内航船に対して発給されるトン数証書の総トン数は日本トン数の数値であるが、国際航海に従事する船舶が保持するトン数証書の総トン数は国際トン数である[16]。国際トン数証書は「1969年の船舶のトン数の測度に関する国際条約(ITC)」[17]に従って算出される。日本の総トン数499型内航貨物船の日本トン数が499トンであれば、国際トン数では1,000トンを軽く超える。国際条約の要求は基本的に国際トン数の数値で決まる。よって総トン数が499トンである内航船は外国船籍になった時点で、国際トン数1,000トン以上の船舶として国際条約の要求を満たす必要があるのでサブスタンダード船となる。[18][19][20]
- 外国人が乗船することを想定されて建造された外航船とは違い、非国際日本船籍内航船の計器、計器のマニュアル、そしてその他の書類には日本語が使用されている。多くの外国人船員は日本語が理解できない。外国人船員が元非国際日本船籍内航中古船を操船して外国の港に行く場合、外航船と比べて人的要因に係るソフト面での安全対策や船舶の安全運航に関して問題が起きる可能性が高い。[21][22]
ポートステートコントロール (Port State Control, PSC)
中古売船後に日本から出港した放置座礁外国船のほとんどはPI保険に加入していなかった。PI保険に加入していても問題のある船舶との理由から海難後に保険会社が支払いを拒否したケースもあった[23]。平成22年12月23日に宮崎市折生迫で座礁したベリーズ船籍浚渫船「豊栄」に対して改正船舶油濁損害賠償保障法で要求される保障契約証明書が北海道運輸局から発給されたが2014年1月現在も放置されている[9]。
これらの問題はポートステートコントロールが上記の問題及びサブスタンダード船の問題に対して適切に対応していれば防止できたケースもある。しかしながら過去の対応が甘かったのか、素人に対する説明不足のために、PSCの「ダブルスタンダード」として問題視されているようである[誰によって?]。沿海区域又は/及び限定近海水域図のみしか運航できない日本船籍内航船が外国籍船となった時点でほぼ自動的にサブスタンダード船となる。サブスタンダード船であることを理由に保険会社が支払いを拒否すればPI保険に加入している証明である保障契約証明書が発給されても意味をなさない。つまり放置されるリスクがある。ポートステートコントロールは放置座礁外国船及びサブスタンダード船問題改善のために中古売船されて出港する前に元日本船籍内航外国船を検査する必要がある。寄港国政府として外国船籍船を検査する権利は国際的に認められている。国際条約を満足しない元内航船を簡単に出港させて、船が座礁して放置されたら船が登録されている国や所有者が悪いと非難しても、船が放置された場所の地方自治体が困るだけである[9][24]。座礁船の撤去費用を考えると国際航海に必要な最低限の装備にかかる費用は非常に小さい。しかしこの最低限のコストをかけないために管理・監督が甘いブラックリストとして公表されている便宜置籍船国に中古船を登録するのである。結果としてポートステートコントロールが検査に来なかったり、検査を行っても検査が甘い場合には、サブスタンダード船の状態で出港して座礁し、放置されるのである。
便宜置籍船国との関係
TOKYO MOUやPARIS MOUでブラック・リストとして「The Annual Report on Port State Control」に公表されている便宜置籍船国に登録されている船舶はサブスタンダード船である確率が高い。[25] これはブラック・リストの便宜置籍船国が海洋法に関する国際連合条約:1982 Convention on the Law of the Sea (UNCLOS)の第94条 旗国の義務を順守していない結果である。[26]
国際条約や規則を守らずに船を運航するために管理・監督が甘く海洋法に関する国際連合条約を順守していない便宜置籍船国を船主が選ぶため、特定の便宜置籍船はサブスタンダード船である確率が高く、海難を頻繁に起こす。国際条約を満足しないだけでなく、犯罪にも使用される確率が高い。
MOU及びPSC
脚注
出典
関連項目
外部リンク