コップ座β星 A / Bβ Crateris A / B
星座
コップ座
見かけの等級 (mv )
4.46[ 1] / 13.4[ 2]
位置元期 :J2000.0
赤経 (RA, α)
11h 11m 39.4817199946s [ 3]
赤緯 (Dec, δ)
−22° 49′ 33.045519470″[ 3]
固有運動 (μ)
赤経: 5.220 ± 0.546 ミリ秒 /年 [ 3] 赤緯: -103.457 ± 0.483 ミリ秒/年[ 3]
年周視差 (π)
11.0358 ± 0.2918ミリ秒[ 3] (誤差2.6%)
距離
296 ± 8 光年 [ 注 1] (91 ± 2 パーセク [ 注 1] )
絶対等級 (MV)
-0.3[ 注 2]
コップ座β星の位置(丸印)
物理的性質
半径
B: 0.02058 R ☉ [ 4]
質量
A: 3.00 M ☉ [ 5] B: 0.43 M ☉ [ 6]
表面重力
A: 3 G[ 7] [ 注 3] B: 1.6 × 10 4 G[ 6] [ 注 3]
自転 速度
A: 47 km/s[ 7]
スペクトル分類
A1 III + DA1.4[ 2]
光度
A: 180 L ☉ [ 5]
表面温度
A: 8,950 K [ 5] B: 36,885 K[ 6]
色指数 (B-V)
0.025[ 1]
色指数 (V-I)
0.04[ 1]
金属量 [Fe/H]
A: 0.07 ± 0.17[ 7]
軌道要素 と性質
軌道長半径 (a )
< 9.3 au [ 2]
公転周期 (P )
∼ 6 年[ 2]
他のカタログ での名称
コップ座11番星, BD -22 3095, EUVE J1111-228, FK5 421, GJ 9352, HD 97277, HIP 54682, HR 4343, SAO 179624, WD 1109-225[ 3]
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コップ座β星 (コップざベータせい、β Crateris、β Crt)は、コップ座 にある連星 である[ 8] 。見かけの等級 は4.46と、肉眼 でみることができる明るさである[ 1] 。年周視差 に基づいて計算した太陽 からの距離は、約296光年 である[ 3] 。
経緯
コップ座β星は、20世紀の初めには散発的に分光観測 が行われ、1928年にはリック天文台 のキャンベル とムーア (英語版 ) によって、視線速度 が変化しているとまとめられた[ 9] [ 10] 。
その後はあまり観測されることがなかったが、1991年 にROSAT の全天掃天観測 から、コップ座β星の位置にX線 と極端紫外線 が検出され、他の波長 域でのコップ座β星の観測結果との照合から、そこに白色矮星 があると結論付けられ、コップ座β星が連星であるとの認識が強くなった。同時に、測定された視線速度 の最大値と最小値から、公転周期 の上限は20.1日 と計算された[ 11] 。
ところが、後の観測ではこの公転周期に見合う期間に視線速度が変化していないことが示され、連星であることに疑問が持たれた[ 7] 。その後、時間を置いた観測によって異なる視線速度が測定されたことで、視線速度が変化していることは間違いないとされ、更にはヒッパルコス衛星 による観測で、小さいながら単独星とは考えられない固有運動 の変動が検出されたため、やはり連星であると考えられるようになっている[ 10] [ 8] 。
星系
可視光 で観測できる4.5等級 の恒星(コップ座β星A )は、スペクトル型 がA1 IIIに分類されるA型巨星 である[ 12] 。かつては、コップ座β星Aは分光標準星としても利用されており、その際にはA2 IV型の準巨星 とされていた[ 13] 。コップ座β星Aの化学組成 は、概ね太陽と似ているが、いくつかの元素 では欠乏/過剰がみられ、特にバリウム が多いことが目立っている。この特性は、かつて連星の対となる天体からこの恒星 に質量移動 が起こった結果ではないかと考えられている[ 7] 。
白色矮星(コップ座β星B )は、DA型に分類され、表面温度 は約36,900K 、質量 は太陽 の43%程度、白色矮星となってから400万年程度経過したとみられる[ 6] [ 14] 。この質量は、コップ座β星Bがコップ座β星Aと連星であるとすれば、一般的な進化理論では説明できないほど低い。ここまで低質量だと、通常は太陽の3倍程の質量を持つA型星よりも先に進化するとは考えられない。そのためどこかの段階で、コップ座β星Bの前駆天体の外層がはぎとられてコップ座β星Aへと移動するなどして、コップ座β星Bは大幅に質量を減らすと共に進化を加速させた、と考えられている[ 6] 。
コップ座β星の公転周期は、ヒッパルコスによる固有運動の変動を元に、およそ10年 以内と見積もられた[ 8] 。また、ハッブル宇宙望遠鏡 の広視野惑星カメラ2 による観測で、コップ座β星Bが分解できなかったことから、軌道長半径 は9.3au 以下であると推定される。その後、新たな視線速度分析から、公転周期はおよそ6年と考えられるようになった[ 2] 。公転周期が3年を超えるような、低質量白色矮星を含む連星というのも、従来の進化理論ではうまく説明できず、コップ座β星系は元々、極端な楕円軌道 をとっていたか、多重連星系 であった可能性も指摘されている[ 6] 。
名称
ベドウィン の伝統では、アルファルド (うみへび座α星)とからす座 の間にある星々はal-sharāsīf (ألشراسيف) 、つまり「肋軟骨」或いは「鎖につながれたラクダ 」を意味する名前で認識されていた。この言い伝えを採録したアッ・スーフィー は、うみへび座 の10星(κ星 (英語版 ) 、υ1 星 、υ2 星 (英語版 ) 、μ星 (英語版 ) 、φ星 (英語版 ) 、ν星 、 χ1 星 (英語版 ) 、ξ星 (英語版 ) 、ο星 (英語版 ) 、β星 )とコップ座β星が、al-sharāsīf であると同定している[ 15] 。ジェット推進研究所 の技術報告に掲載された“A Reduced Catalog Containing 537 Named Stars”では、Al Sharasif という名称が2つの恒星に付与され、コップ座β星はAl Sharasif II 、うみへび座κ星がAl Sharasif I となっている[ 16] 。
中国 では、コップ座β星は翼宿 (拼音 : Yì Sù )という星官 を、コップ座α星 、γ星 (英語版 ) 、ζ星 (英語版 ) 、λ星 (英語版 ) 、うみへび座ν星、コップ座η星 (英語版 ) 、δ星 、ι星 (英語版 ) 、κ星 (英語版 ) 、ε星 (英語版 ) 、HD 95808 (英語版 ) 、HD 93833 (英語版 ) 、コップ座θ星 (英語版 ) 、HD 102574 (中国語版 ) 、HD 100219 (中国語版 ) 、HD 99922 (英語版 ) 、HD 100307 (英語版 ) 、HD 96819 (英語版 ) 、うみへび座χ1 星、HD 102620 (中国語版 ) 、HD 103462 (中国語版 ) と共に形成する[ 17] 。コップ座β星自身は、翼宿十六 (拼音 : Yì Sù shíliù )つまり翼宿の16番星と呼ばれる[ 18] 。
脚注
注釈
^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
^ a b 出典での表記は、Aが
log
g
[
cgs
]
=
3.5
{\displaystyle \log g[{\mbox{cgs}}]=3.5}
、Aが
log
g
[
cgs
]
=
7.198
{\displaystyle \log g[{\mbox{cgs}}]=7.198}
。
出典
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関連項目
外部リンク
座標 : 11h 11m 39.4817199946s , −22° 49′ 33.045519470″