グリーゼ86(Gliese 86)またはHD 13445は、エリダヌス座の方角に約35光年離れた位置にある連星系である[6]。グリーゼ86系は、K型主系列星と白色矮星からなる[7]。1998年、ヨーロッパ南天天文台は、グリーゼ86の周りに太陽系外惑星が存在する、と発表した[8]。
星系
大きさの比較
太陽
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グリーゼ86 A
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元からグリーゼ86として知られていた恒星グリーゼ86 Aは、スペクトル型がK0 VのK型主系列星である[1]。質量、半径は、太陽の8割程度、光度は太陽の4割程度と推定される[5][8]。グリーゼ86には、木星型惑星が発見されているが、それはグリーゼ86 Aの周りを公転している[9][7]。
2001年、グリーゼ86 Aの東、およそ2秒離れた位置に、暗い天体グリーゼ86 Bが発見され、固有運動がグリーゼ86 Aと共通していることから、連星であることがわかった[6]。発見当初は、色から推定されるスペクトル型が褐色矮星のものであったので、褐色矮星だと予想されていたが、グリーゼ86 Aで観測される視線速度の変化から要求されるグリーゼ86 Bの質量は、褐色矮星の上限よりかなり大きいものであり、スペクトルにも褐色矮星で特徴的な成分がみられないことから、グリーゼ86 Bは白色矮星と結論付けられた[6][7]。惑星を持つ星系に、白色矮星の伴星が発見されたのは、これが初めてである[7]。
グリーゼ86 Aとグリーゼ86 Bは、発見から12年の位置関係の変化から軌道を予測すると、120年から460年の周期で公転していると考えられる[4]。
グリーゼ86系の年齢は、観測量に基づく推定では、複数の報告で数十億年と求められているが、一方で、グリーゼ86の空間速度は非常に古い種族であることを示し、それを踏まえて理論から求めた値は100億年となっている[4][5]。
惑星系
1998年、ジュネーヴ天文台などのグループによる系外惑星捜索計画において、ラ・シヤ天文台の1.2m望遠鏡を用いた視線速度法での惑星探しが始まって間もなく、グリーゼ86において惑星によるとみられる視線速度変化が検出された[8]。翌年、この惑星の存在は確定し、木星の4倍以上の質量の巨大ガス惑星が、15.8日周期で公転していると推定された[9]。併せて、発見された惑星とは別の伴天体によるとみられる、長期的な視線速度の変化も検出され、これが伴星グリーゼ86 Bの発見につながった[9][6]。視線速度法の観測だけでは、惑星の質量の下限値しかわからないので、ヒッパルコス衛星による予備的な観測データを用いて軌道を制限し、質量が木星の15倍と求められたが、このデータ処理では多くの系外惑星が、褐色矮星か赤色矮星の質量と見積もられており、検証の結果、ヒッパルコスの初期データは多くの場合、惑星の質量を決められるだけの精度はなかったと評価された[10][11]。
脚注
注釈
- ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
- ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
出典
- ^ a b c d e ESA (1997), The HIPPARCOS and TYCHO catalogues. Astrometric and photometric star catalogues derived from the ESA HIPPARCOS Space Astrometry Mission, ESA SP Series, 1200, Noordwijk, Netherlands: ESA Publications Division, Bibcode: 1997ESASP1200.....E, ISBN 9290923997
- ^ a b c d e f “HD 13445 -- High proper-motion Star”. SIMBAD. CDS. 2019年4月28日閲覧。
- ^ a b c d e Stassun, Keivan G.; Collins, Karen A.; Gaudi, B. Scott (2017-03), “Accurate Empirical Radii and Masses of Planets and Their Host Stars with Gaia Parallaxes”, Astronomical Journal 153 (3): 136, Bibcode: 2017AJ....153..136S, doi:10.3847/1538-3881/aa5df3
- ^ a b c d e f g h i j k l Farihi, J.; et al. (2013-03), “Orbital and evolutionary constraints on the planet hosting binary GJ 86 from the Hubble Space Telescope”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 430 (1): 652-660, Bibcode: 2013MNRAS.430..652F, doi:10.1093/mnras/sts677
- ^ a b c Fuhrmann, K.; et al. (2014-04), “On the Age of Gliese 86”, Astrophysical Journal 785 (1): 68, Bibcode: 2014ApJ...785...68F, doi:10.1088/0004-637X/785/1/68
- ^ a b c d Els, S. G.; et al. (2001-04), “A second substellar companion in the Gliese 86 system. A brown dwarf in an extrasolar planetary system”, Astronomy & Astrophysics 370 (1): L1-L4, Bibcode: 2001A&A...370L...1E, doi:10.1051/0004-6361:20010298
- ^ a b c d Mugrauer, M.; Neuhäuser, R. (2005-07), “Gl86B: a white dwarf orbits an exoplanet host star”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters 361 (1): L15-L19, arXiv:astro-ph/0506311, Bibcode: 2005MNRAS.361L..15M, doi:10.1111/j.1745-3933.2005.00055.x
- ^ a b c “Extrasolar Planet in Double Star System Discovered from La Silla”. ESO (1998年11月24日). 2019年4月29日閲覧。
- ^ a b c Queloz, D.; et al. (2000-02), “The CORALIE survey for southern extra-solar planets. I. A planet orbiting the star Gliese 86”, Astronomy & Astrophysics 354: 99-102, Bibcode: 2000A&A...354...99Q
- ^ Han, Inwoo; Black, David C.; Gatewood, George (2001-02), “Preliminary astrometric masses for proposed extrasolar planetary companions”, Astrophysical Journal 548 (1): L57-L60, Bibcode: 2001ApJ...548L..57H, doi:10.1086/318927
- ^ Pourbaix, D.; Arenou, F. (2001-06), “Screening the Hipparcos-based astrometric orbits of sub-stellar objects”, Astronomy & Astrophysics 372 (3): 935-944, arXiv:astro-ph/0104412, Bibcode: 2001A&A...372..935P, doi:10.1051/0004-6361:20010597
関連項目
外部リンク
座標: 02h 10m 25.9190575041s, −50° 49′ 25.467227759″
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