この項目では、交通渋滞の一種について説明しています。その他の用法については「グリッドロック 」をご覧ください。
右側通行2方向街路のネットワークにおけるグリッドロック現象。赤色の車が交差点内で停止することでその車が行こうとしていない方向にも進めなくなり、グリッドロックが発生する。
グリッドロック は交通渋滞 の一種で、渋滞の車列が伸びることで交差点を含むネットワーク全体の車両が全く動けなくなる状態を表す主にアメリカで使われる専門用語である[ 1] [出典無効 ] 。この用語は交差点を含むグリッドプラン のネットワークにおいて前にも後ろにも進めなくなることが語源である[要出典 ] 。
グリッドロックという専門用語は激しい交通渋滞を表す言葉として誤用されることもある。また他の分野でも、需要が多く供給が追いつかない状況や身動きが取れない状況を指す言葉でもある。
発生
ドイツのヴィースバーデン 環状線 (英語版 )カイザー・フリードリヒリングで発生したグリッドロック。3方向の車線が互いに他の車両によってブロックされている。
フロリダ州 マイアミ の7番街で発生したグリッドロック。信号は青だが、赤信号側の車両が交差点内に滞留している。
一般的なグリッドロックは、信号が青だが交差点の先に十分な空間的余裕がない状態で交差点内に進入し、信号が赤になっても交差点から出られないことによって発生する。 この現象が同時多発的に複数の交差点で発生すると、どの車も進むことができなくなり、グリッドロックが発生する。
多くの国の交通ルールでは、交差点の先に十分な空間がなく、交差点上で立ち往生する可能性がある場合交差点内に進入してはいけない。もし全てのドライバーがこのルールを守れば、グリッドロックは発生しない[ 2] 。
その他のタイプのグリッドロックとして、高速道路 の流入ランプ と流出ランプの距離が近い(概ね400m以内)場合に発生するものがある。高速道路の本線上の渋滞により流入車両が進めず、流入車両の車列が流出車線をふさぐことによって流出車両も進めなくなるというものである。
グリッドロックはゲーム理論 における囚人のジレンマ の例として用いられることがある[ 3] 。
規制
ニューヨーク市
ボックスを塞いではいけないという標識
ニューヨーク市で「ボックスを塞いだ」車両
ニューヨーク市 ではボックスジャンクション (英語版 ) が設けられ、交差点内でボックスを塞いだドライバーには$ 90.00の過料が課せられる。市長のマイケル・ブルームバーグ は取り締まりのために10分停車することで交通渋滞が助長されるとして、ニューヨーク州議会 に交通違反 の分類から「ボックスを塞ぐ」という項目を削除するよう求めた。こうすることで、交通違反切符 の発行手順が変更され、より多くの切符が発行できるが、違反車を停止させる必要がある[ 4] 。
バージニアビーチ
バージニアビーチ では、海岸沿いの道路の全ての交差点に "ボックスを塞ぐな"標識があり、違反すると$200の罰金が発生する。
テキサス州
テキサス州 オースティン では、"ボックスを塞ぐな" 運動が2015年に始まった[ 5] [ 6] 。同様の取り組みがサンアントニオ でも2017年から行われている[ 7] 。
影響
明らかな影響として運転者の不満や旅行時間の増大が挙げられる。他の影響として都市部で発生した場合アーバンキャニオン (英語版 ) によって騒音 や大気汚染 などの公害 が悪化することが挙げられる[ 8] 。
グリッドロックの防止
グリッドロック防止のため、交通計測システムが導入されている。このシステムは、適正数の車両がネットワーク内に入ったらそれ以上の車両が入らないようにするシステムである。車両進入規制は交通信号 や警告表示によって当該区間への進入を規制したり、公共交通 利用を促したりといった方法がある。この方法はチューリッヒ で採用されている[ 9] 。
発祥
ニューヨーク・タイムズ によれば、グリッドロックという言葉は1970年代はじめのニューヨーク市で生まれたとされている[ 10] 。IEEE の1971年の出版物に異なる文脈で登場しており、これが最初とみられる[ 11] 。新聞に最初に登場したのは 1980年ニューヨーク市交通ストライキ (英語版 ) のときである。当時ニューヨーク市運輸局 の技術者だったサム・シュワルツ が提案した[ 12] 。シュワルツはグリッドロックという用語を1970年代より対外的に使用していた[ 13] 。シュワルツは彼の先輩職員に緊急時にブロードウェイ への車両進入を禁止する提案を行っていたが、グリッドが塞がる(lock up the grid)ことを懸念した先輩職員は賛同しなかった。シュワルツはこの時のメモ書きをまとめ、1980年に『グリッドロック予防策』("Gridlock Prevention Plan")を発表した[ 14] 。別のインタビューでシュワルツは1970年代なかばに仲間の交通技術者だったロイ・コッタム(Roy Cottam)がパラノイア のけがありグリッドロックの責任を問われていると考えていたことがはじまりなので、彼のおかげであると述べている[ 15] 。
事例
中国
2010年8月14日から26日にかけて北京市 と河北省 張家口市 間G110国道 で発生した渋滞は、長さが約100kmにもおよび、当時世界で発生した渋滞の中で最悪のものと考えられていた。ドライバーの中には車の中で5日間を過ごした人もいた[ 16] [ 17] [ 18] 。この現象は道路のはたらきと内モンゴル自治区 から北京に毎日石炭 を輸送する多くのトラックが組み合わさって発生した。この出来事をニューヨーク・タイムズは2010年中国大グリッドロック( "Great Chinese Gridlock of 2010")と呼んでいる[ 18] [ 19] 。
ブラジル
タイム 誌によれば、サンパウロ の日常的渋滞は世界で最悪であるとされている[ 20] 。2014年5月23日には合計した長さが約344kmにもなる渋滞が観測された[ 21] 。
フランス
パリ とリヨン を結ぶオートルート A6 では1980年に約175kmもの渋滞が観測され、世界最長と考えられている[ 22] 。
日本
日本では2011年3月11日の東日本大震災 発生時、東京都内の道路において初めて観測された。解消したのは翌12日の4時ごろとされている[ 23] 。
脚注
^ "Gridlock" . Oxford English Dictionary . オックスフォード大学出版局 . 2011年5月3日閲覧 。
^ Stringer, Scott M. Thinking outside the box: an analysis of Manhattan gridlock and spillback enforcement , マンハッタン区 区長 , 2006年7月. [リンク切れ ]
^ Heath, Joseph (1999). Normative economics Archived 2007-11-18 at the Wayback Machine . , Chapter 2, Section 3. Retrieved 2007-03-19.
^ metro
^ “Some drivers feel trapped by 'Don't Block the Box' enforcement ”. KXAN-TV. 2015年6月30日 閲覧。
^ “More than 800 tickets issued for 'blocking the box' ”. KXAN-TV (英語版 ) . 2015年6月30日 閲覧。
^ “Enforcement Begins Today for Don't Block the Box Pilot Program ”. City of San Antonio. 2017年5月4日 閲覧。
^ C. Michael Hogan and Gary L. Latshaw, The relationship between highway planning and urban noise , :Proceedings of the ASCE, Urban Transportation Division specialty conference, May 21–23, 1973, Chicago, Illinois. by ASCE . Urban Transportation Division
^ Carlos, D. F. (2007). “Urban gridlock: Macroscopic modeling and mitigation approaches”. Transportation Research Part B: Methodological 41 (1): 49–62. doi :10.1016/j.trb.2006.03.001 .
^ James Gleick (1988年5月8日). “National Gridlock” . ニューヨーク・タイムズ . https://www.nytimes.com/1988/05/08/magazine/national-gridlock.html 2010年9月26日 閲覧。
^ Letton, Winsor (1971年). “Engineering in the Ocean Environment: A Method for Reducing Gridlock ”. Google Books . 2021年9月20日 閲覧。
^ Schwartz, Sam. About Gridlock Sam , GridlockSam.com. Retrieved 2007-03-19.
^ Popik, Barry (July 21, 2004). Gridlock . Retrieved 2007-03-19.
^ Kluger, Jeffrey: "Simplexity: Why Simple Things Become Complex (And How Complex Things Can Be Made Simple)", ハイペリオン , 2008, ISBN 978-1-4013-0301-3 , pp.65-66.
^ “Gridlock Sam Interview ”. SimCity 4. 2011年3月18日時点のオリジナル よりアーカイブ。2010年9月26日 閲覧。
^ Leo Hickman (2010年8月23日). “Welcome to the world's worst traffic jam” . ガーディアン . https://www.theguardian.com/technology/2010/aug/23/worlds-worst-traffic-jam 2010年9月20日 閲覧。
^ “The great crawl of China” . エコノミスト . (2010年8月26日). http://www.economist.com/node/16909167?story_id=16909167 2010年9月20日 閲覧。
^ a b Michael Wines (2010年8月27日). “China's Growth Leads to Problems Down the Road” . ニューヨーク・タイムズ . https://www.nytimes.com/2010/08/28/world/asia/28china.html?_r=1&scp=2&sq=straddling%20bus&st=cse 2010年9月20日 閲覧。
^ Jonathan Watts (2010年8月24日). “Gridlock is a way of life for Chinese” . ガーディアン . https://www.theguardian.com/world/2010/aug/24/china-60-mile-motorway-tailback 2010年9月20日 閲覧。
^ Andrew Downie (2008年4月21日). “The World's Worst Traffic Jams” . Time . オリジナル のApril 23, 2008時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080423172358/http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1733872,00.html 2008年6月20日 閲覧。
^ https://economia.uol.com.br/noticias/efe/2014/05/23/sao-paulo-sofre-engarrafamento-recorde-de-344-quilometros.htm
^ Steve English. “From Horses to Horsepower: A Cavalcade of Interesting Automotive Facts ”. CAA Magazine. 2010年9月26日 閲覧。
^ 清田裕太郎, 岩倉成志, 野中康弘「東日本大震災時のグリッドロック現象に基づく都区内道路のボトルネック箇所の考察 」『土木学会論文集D3(土木計画学)』第70巻第5号、土木学会、2014年、I_1059-I_1066、doi :10.2208/jscejipm.70.I_1059 、NAID 130005070435 。
関連項目
外部リンク