グラスホッパー (ロケット)
グラスホッパー(英語: Grasshopper)とは、アメリカのスペースX社が開発した試験用のロケットである。再利用型ファルコン9ロケット (F9R) の参考にする目的で開発されたもので、4本の脚を備え垂直離着陸が可能であった。実験機として開発されたため衛星の打ち上げ能力は持たなかった。2012年9月に初飛行に成功し、2013年10月に最後の飛行試験を行った。 2014年4月からは後継機となるF9R-Dev (Falcon 9 Reusable Development Vehicle) を使って、F9R (Falcon 9 Reusable) 開発のためのより本格的な飛行試験へ移行した。本項ではF9R-Devについても記述する。 概要グラスホッパーはファルコン9の第1段に鋼鉄の脚4本を追加した形をしている。エンジンはマーリン1Dが1基で、ケロシンと液体酸素を推進剤に用いて12万2000ポンド重(55キロニュートン)の推力を生じさせた。全長は32.3mである[1][2]。 グラスホッパーのテストは、テキサス州マクレガーに立地するスペースXのロケット開発施設で行われた[1]。 グラスホッパーの詳細についてスペースXは多くを語らなかったが、スペースXは当時から将来的に使用後のロケットステージを着陸させて再利用する計画を持っていたため、グラスホッパーはその実験台だったと考えられている[2]。なお、既存のロケットにおける燃料費の割合は1%以下であり、ロケットの再利用により打ち上げコストを1/100まで下げることも可能だという[3]。 グラスホッパーの試験飛行2012年9月21日にグラスホッパーは初飛行を行った。地面に垂直に立ったグラスホッパーはエンジンを点火して2.5m浮き上がった後、すぐに4本の脚で着地した。飛行時間は3秒だった[1]。2012年11月には2回目の飛行で高度5.4mを達成[2]。 グラスホッパーのテストはフェーズ1から3までに分けて行われる。フェーズ1ではマクレガーの施設で最高73mまでの飛行を、フェーズ2では203mまでの飛行を行う。フェーズ1・2の飛行時間は最長45秒で、管制空域の高さにまで達することはない[2]。フェーズ3では、より高速・高高度の飛行が行われ、高度最高3505m、飛行時間160秒に達する見込みであった[2]。 2013年10月7日にグラスホッパーの8回目で最後の飛行試験が行われ、最高到達の高度744mに達した。以後はFalcon 9 Reusable (F9R) 開発機を使ってテキサス州で低高度試験を行い、ニューメキシコ州で高高度試験を行っていくとされた[4]。
F9R-DevF9R-Dev (Falcon 9 Reusable Development Vehicle) は、再使用型ファルコン9 ロケットの開発用の試験機であり、グラスホッパーの次世代機である。グラスホッパーとの違いは、ファルコン9 v1.1ロケットの1段と同じ直径と長さの機体となり、Merlin 1Dエンジンが3基に増やされ、着陸脚4本もファルコン9 v1.1で使うのと同じものを装備している(4本の脚の重量は約2,000kg)。F9R-Devは2機あり、1機はテキサス州のMcGregor試験場でF9R-Dev-1として使われ、もう1機はニューメキシコ州のスペースポート・アメリカで使われるF9R-Dev-2がある。F9R-Dev1は、2014年4月17日に飛行試験が初めて行われ、高度約250mに達した。テキサス州のMcGregor試験場は、FAAの規制により、飛行高度が3km以下にまで制限されている。このため、それ以上の高度での飛行試験を行う場合はニューメキシコ州のスペースポート・アメリカで試験が行われ、F9R-Dev2は高度90kmにまで達することができる[20]。
2014年8月に起きたF9R Dev.1の事故原因は、3基のMerlin 1Dエンジンのうちの1基でセンサ故障が起きて、飛行経路から逸れたため、自動的に指令破壊コマンドが実行されたものであった。ファルコン9だとエンジンは9基あるため、故障しても冗長系があるが、エンジンが3基しかないF9Rでは冗長系がないとの報告であった[26]。 F9R-Devの試験の翌2015年からは、ミッション終了後のファルコン9の1段目を使用した実機での着陸が試みられた。何度かの着陸失敗の後、同年12月の改良型となるファルコン9フル・スラストの初打ち上げにおいて、ついに実機での着陸に成功した。 参考文献
関連項目外部リンク
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