クレスチン (Krestin)は、クレハ と第一三共 より共同販売されていた抗悪性腫瘍剤 (抗がん剤 :生物学的応答調節剤)の商品名(登録商標 )である。PSK (polysaccharide-Kureha) という略号で表されることもあるが、こちらも登録商標である。成分は、カワラタケ (Trametes versicolor )CM-101株菌糸体 より得られる多糖類 でタンパク質 と結合している[ 1] 。
2017年3月17日、クレハは、クレスチン細粒の製造販売を中止すると発表した[ 2] 。需要が減少し、製造販売を中止しても治療への影響は少ないと判断したためで、2018年3月末で薬価基準から削除される(第一三共からの販売は9月末で中止の予定)[ 2] 。
本剤は手間のかからない経口投与で、深刻な副作用 がないことから[ 3] [リンク切れ ] 、1977年の販売開始後、単独でかなり多く使われた時期があった。
しかし、1989年12月に効能・効果(後述)が改められ単剤使用は認められなくなり、化学療法と併用する薬剤となった[ 2] 。
クレスチンは、担癌により低下した免疫 応答機構を改善・回復することにより抗腫瘍作用を発揮すると考えられる。
構造
カワラタケから抽出された多糖ータンパク質複合体が抗腫瘍活性を示すことは、1970年に報告された[ 4] 。平均分子量は9.4 × 104 。糖鎖部分はグルコース (74.6%)、ガラクトース (2.7%)、マンノース (15.5%)、キシロース (4.8%)、フコース (2.4%) を含むが、ほとんどはβ-グルカン である。グルカン部分にはβ1→3 、1→4、1→6構造が存在し、糖数残基ごとに分岐していることが示唆されている。タンパク質部分と糖鎖部分は、O -あるいはN -グリコシド結合 している[ 5] 。
クレスチン製剤の外観は、褐色または褐色を帯びた細粒である[ 3] 。
また、カワラタケ (Coriolus vesicolor Iwade) からは、抗腫瘍性多糖類としてコリオラン (coriolan) の単離が1971年に報告されている[ 6] [ 7] 。
効能・効果
作用機序
NK細胞 活性、インターフェロン 生産能、インターロイキン 生産能の増強などの免疫系の活性化により抗悪性腫瘍効果を表す[ 3] [ 8] 。本剤が直接的に腫瘍細胞を攻撃するものではない。
製品
「クレスチン」(クレハ=第一三共)のほか、後発医薬品 の「アスクレ」(日医工 )、「カルボクリン末」(大洋薬品工業、現・武田テバファーマ ))、「クレチール末」(沢井製薬 )、「チオレスチン散」(長生堂製薬 )なども発売されていたが、2017年3月現在、クレスチン細粒以外はすでに薬価基準から削除されている。
脚注
^ Tsukagoshi, S.; Hashimoto, Y.; Fujii, G.; Kobayashi, H.; Nomoto, K.; Orita, K. (1984). “Krestin (PSK)”. Cancer Treat. Rev. 11 (2): 131-155. doi :10.1016/0305-7372(84)90005-7 . PMID 6238674 . 総説
^ a b c “クレハ 抗悪性腫瘍剤クレスチンの製造販売中止 ”. ミクス (2017年3月21日). 2017年3月22日 閲覧。
^ a b c d e “クレスチン細粒 添付文書 ” (2015年4月). 2016年8月4日 閲覧。 [リンク切れ ]
^ Hirase, S.; Nakai, S.; Akatsu, T.; Kobayashi, A.; Oohara, M.; Matsunaga, K.; Fuji, M.; Ohmura, Y. (1970). “Studies on antitumor activity of polysaccharide”. Proc. Jpn. Canc. Assoc. 29th Annu. Meet. : 288.
^ Kobayashi, H.; Matsunaga, K.; Oguchi, Y. (1995). “Antimetastatic effects of PSK (Krestin), a protein-bound polysaccharide obtained from basidiomycetes: an overview” . Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 4 (3): 275-281. PMID 7606203 . http://cebp.aacrjournals.org/content/4/3/275.long . 総説
^ Naruse, S.; Fujii, K.; Ito, H. (1971). “Studies on antitumor activities of Basidiomycetes ”. Proc. Jpn. Cancer Assoc. 30th Ann. Meet. : 171.
^ Ito, H.; Hidaka, H.; Suigura, M. (1979). “Effects of coriolane, an antitumor polysaccharide, produced by Coriolus versicolor Iwade” . Japanese Journal of Pharmacology. 29 (6): 953-957. doi :10.1254/jjp.29.953 . https://doi.org/10.1254/jjp.29.953 .
^ Fisher, M.; Yang, L. X. (2002). “Anticancer effects and mechanisms of polysaccharide-K (PSK): implications of cancer immunotherapy”. Anticancer Res. 22 (3): 1737-1754. PMID 12168863 . 総説
参考文献
『クレスチン』医薬品インタビューフォーム・2008年10月(第6版)(株式会社クレハ・第一三共株式会社)
関連項目