クサヨシ (草葦、学名 : Phalaris arundinacea [ 1] )は、イネ科 クサヨシ属 の多年草 である。背が高くなる草で、1.5mを越える物もある。和名 は、アシ に似ているがより草っぽいことから。リードカナリーグラス とも呼ばれる。
湿地 に群生する姿はアシに似ているが、小穂 の構造などは大きく異なり、全くの別属 である。外見的には、アシが夏 の終わりから秋 に穂 を出すのに対して、クサヨシは初夏に穂を出す点、アシの穂が柔らかく広がり、あるいは枝垂れるのに対してクサヨシの穂は真っすぐ立つ点などが目立った差異である。
特徴
地下に根茎 があり、長く這う。茎 はしっかりと直立し、高さ80-150cm、時には180cmに達する。茎にはまばらに節があり、節ごとに葉 をつける。長い葉鞘 の先の葉身は細長く、粉 を吹いたように白っぽく明るい緑色。柔らかいが周囲はざらつく。
5-6月に茎の先端に花序 を出す。花序は真っすぐに上に向かい、円錐花序だが側枝は広がらず、一本の束になる。花時期には枝がやや広がるが、果実 時期には元に戻る。ヨシのように枝が広がったり横向きにしだれたりはしない。
小穂は先のとがった楕円形で長さ4-5mm、左右から偏平で中には小花 を一つだけ含む。
小穂の構造
2つの包穎 はほぼ同じ形で、左右から二つ折りになり、背中側には鋭い竜骨 がある。その内部には一回り小さな護穎 に包まれた両性花 が1つ入っている。その基部には一対の小さな鱗片状の構造があり、先端には長い毛 がはえている。これは実は退化した小花である。したがって、本来は3つの小花からなっていることになる。
生育環境
北半球 の温帯 域に広く分布し、日本 国内では北海道 から九州 にごく普通に見られる。日当たりのよい湿地 や河川 の中流域以下のゆるやかな流れの河畔 にも出現する。アシやツルヨシ と一緒に生えることもあるが、たいていはそれらの前面、水辺側に出る。
利用
普通は特にない。葉に斑入り が入るものをシマガヤ (あるいはシマヨシ var. picta L.)といい、園芸植物 として栽培 される。
化学的な特徴
クサヨシの葉にはDMT 、5-MeO-DMT 、ブフォテニン が含まれている[ 2] [ 3] 。DMTは茎と葉に集中しているため、植物全体を犠牲にすることなく、少し刈り込むだけで採取ができる[ 4] 。この DMT という幻覚剤は、喫煙、吸入ではなく、口から摂取した場合にのみモノアミン酸化酵素がその作用を阻害してしまうので、モノアミン酸化酵素阻害薬 (MAOI) と組み合わせて、アヤワスカという呼び名で南米で用いられてきた数千年の歴史がある[ 5] 。DMTは、簡単に絞ることで抽出でき[ 5] 、また栽培も容易であるため、1994年のある著書は北米のDMTを生成するもののうち最もよく、庭に撒き1回刈るだけで十分な量が抽出できると評している[ 4] 。クサヨシとペガヌム・ハルマラ (英語版 ) とで作ったアヤワスカ ・アナログ(類似物)の体験手記も掲載されている[ 4] 。
クサヨシにおける、DMTの合成に関わる中間体はトリプタミン やN-メチルトリプタミンであった[ 6] 。
β-カルボリン [ 7] とホルデニン (英語版 ) の濃度も[ 8] 報告されている。
クサヨシ属
世界に数種 あるが、日本に自生しているのはクサヨシだけである。ただし、雑穀 や小鳥 の餌として利用されるカナリークサヨシ などが帰化植物 として侵入、雑草 として野生化している。それらは乾いたところに生える一年草 で、かなり趣が異なる。
脚注
^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Phalaris arundinacea ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2015年11月20日 閲覧。
^ Østrem, Li (2008). “Studies on genetic variation in reed canarygrass, Phalaris arundinacea L. I. Alkaloid type and concentration”. Hereditas 107 (2): 235–248. doi :10.1111/j.1601-5223.1987.tb00290.x .
^ Tryptamine Carriers FAQ
^ a b c ジム・デコーン 著、竹田純子、高城恭子 訳『ドラッグ・シャーマニズム』1996年、187-209頁。ISBN 4-7872-3127-8 。 Psychedelic Shamanism , 1994.
^ a b Halpern, John H (2004). “Hallucinogens and dissociative agents naturally growing in the United States” (pdf). Pharmacology & Therapeutics 102 (2): 131–138. doi :10.1016/j.pharmthera.2004.03.003 . PMID 15163594 . http://www.ouramazingworld.org/uploads/4/3/8/6/43860587/2004-halpern-hallucinogens_and_dissociative_agents_naturally_growing_in_the_united_states.pdf .
^ Mack, J. P. G.; Mulvena, D. P.; Slaytor, M.; et al. (1988). “N,N-Dimethyltryptamine Production in Phalaris aquatica Seedlings: A Mathematical Model for its Synthesis” . PLANT PHYSIOLOGY 88 (2): 315–320. doi :10.1104/pp.88.2.315 . PMC 1055574 . PMID 16666301 . http://www.plantphysiol.org/content/88/2/315.long .
^ G. C. Marten, R. M. Jordan and A. W. Hovin; 1976; Biological Significance of Reed Canarygrass Alkaloids and Associated Palatability Variation to Grazing Sheep and Cattle; Agronomy Journal Vol. 68 No. 6, p. 909-914; doi :10.2134/agronj1976.00021962006800060017x
^ The Alkaloids: A Review of Chemical Literature: volume 4 (Specialist Periodical Reports) . The Chemical Society. (1974). p. 130. ISBN 0-85186-287-X
参考文献
関連項目
ウィキスピーシーズに
クサヨシ に関する情報があります。
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外部リンク