カテプシンE
カテプシンE(英: cathepsin E、EC 3.4.23.34)は、ヒトではCTSE遺伝子にコードされる酵素である[5][6][7]。この酵素は、slow-moving proteinase、erythrocyte membrane aspartic proteinase、SMP、EMAP、non-pepsin proteinase、cathepsin D-like acid proteinase、cathepsin E-like acid proteinase, cathepsin D-type proteinaseといった名称でも知られる[6][8][9][10]。 カテプシンEは動物やその他さまざまな生物にみられるプロテアーゼであり、アスパラギン酸プロテアーゼに分類される。ヒトでは、1番染色体の1q32に位置するCTSE遺伝子にコードされている[6][7][11][12]。カテプシンEは細胞内に位置する非リソソーム糖タンパク質であり、主に皮膚や免疫細胞に存在する[13]。ジスルフィド結合によって連結されたホモ二量体として機能するアスパラギン酸プロテアーゼであり、高マンノース型の糖鎖が付加されている[14]。 カテプシンEの欠損はアトピー性皮膚炎など炎症性皮膚疾患に関与している可能性があり、その治療は体内でのタンパク質の機能や濃度の改善といった方法に依存することとなる[15]。カテプシンEはレニンやカテプシンDとともに、消化管や生殖器以外の組織で合成されることが知られている数少ないアスパラギン酸プロテアーゼの1つである[16]。 構造カテプシンEの構造はカテプシンDやBACE1と非常によく類似しており、これら3つのタンパク質の活性部位はほぼ同一である。これらの間の差異は、活性部位周囲の微小環境にある。96DTG98と281DTG283は、酵素の活性部位に形成に寄与している。また、272番と276番、314番と351番のシステイン残基はジスルフィド結合を形成している。109番、114番の2つのシステイン残基は立体構造上近接して位置しているが、硫黄原子間の距離は3.53 Åでありジスルフィド結合を形成するには離れすぎている。活性部位の2つのアスパラギン酸残基は周囲の残基と4つの水素結合を形成している。カテプシンDやBACE1と比較してカテプシンEの特徴となるのは、Asp96とSer99の間の水素結合が存在し、またAsp281とLeu/Metとの間の水素結合が存在しないことである[15]。 分布カテプシンEは、消化管、リンパ組織、血液細胞、泌尿器、ミクログリアなどに分布している。さまざまな哺乳類細胞において、カテプシンEの細胞内局在はアナログであるカテプシンDとは異なっている。カテプシンEは胃の壁細胞の細胞内分泌細管(intracellular canaliculus)、肝細胞の毛細胆管、腎臓の近位尿細管細胞、腸、気管、気管支の上皮細胞、破骨細胞、赤血球においては膜に結合して存在している。抗原を提示しているB細胞、胃の主細胞、ミクロソームなどの細胞種ではエンドソーム構造への局在が観察される。また、小胞体槽にも検出される[14][17]。 機能カテプシンEはタンパク質の分解、MHCクラスII経路を介した抗原のプロセシング[12]、生理活性タンパク質の生成に重要な役割を果たしている。また、加齢、興奮性毒素によるグルタミン酸受容体の過剰刺激、前脳の一過性の虚血に伴う、神経死経路の実行にも関与していると考えられている。ラットで行われた実験では、カテプシンEは若齢ラットの脳組織ではほとんど検出されないが、老齢ラットでは線条体や大脳皮質において濃度が大幅に上昇していることが示されている。また、一過性前脳虚血から1週間後の海馬CA1領域のミクログリアや変性神経細胞でも高レベルで発現している[17]。カテプシンEは腸上皮化生から高分化型腺癌の発生に関与している可能性がある[14]。また、樹状細胞と関連して自己・外来タンパク質に応答したCD4レパートリーの形成に関与している[18]。 翻訳後修飾カテプシンEはグリコシル化されている。糖鎖修飾の性質は細胞種によって異なる。線維芽細胞中の酵素前駆体では高マンノース型のオリゴ糖が付加されているが、成熟酵素では複合型オリゴ糖が付加されている。赤血球膜では、成熟酵素と酵素前駆体の双方で複合型オリゴ糖がみられる。カテプシンEは自己触媒切断によって2つの形態が生み出され、Form1はIle54番残基から始まり、Form2はThr57番から始まる[19]。 出典
関連文献
関連項目外部リンク
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