オードナンス QF 32ポンド砲
オードナンス QF 32ポンド砲(英: Ordnance Quick-Firing 32-pounder)は第二次世界大戦時のイギリス軍によって運用された口径94mm戦車砲で、オードナンス QF 17ポンド砲を代替する目的で開発された。この戦車砲はトータス重突撃戦車の主兵装として搭載された。 概要この砲は従来の17ポンド砲の後継としてイギリス軍の「17ポンド砲よりも25%以上効果的である砲が必要」という要望に基づき、1942年10月より開発が開始された。当初は 55 ポンド砲の案が検討されていたが、新たな17ポンド砲の砲弾が開発されたことで55ポンド砲の有利性は無くなり、弾薬の取り扱いと保管が困難であるとして55ポンド砲の開発は却下された。 検討された他の案には、既存の17ポンド砲から1,080 m/sの初速で4 ポンド(1.8 kg)の高速徹甲弾(APCR) を発射するというもの、 88 mm口径の砲に76mmから57mmへと口径が縮小する減口径砲身を追加・延長して口径漸減砲(ゲルリッヒ砲を参照)とし、3.5 ポンド(1.6 kg)の徹甲複合材非剛体(APCNR)弾を1,400 m/s の初速で発射するというもの等があったが、いずれも却下されている。 最終的には改良の余地も考慮して 3.7 インチ 30 ポンドを基準とすることが提案され、1943年9月に QF 3.7インチ高射砲が開発・改造のベースとして選定された。 開発中、37ポンド(17 kg) の弾を使用して性能の向上を狙うことが提案されQF 37ポンド砲 EX1 とされたが、1944年6月の射撃試験の結果に基づき37ポンドの弾は却下された。その後32 ポンドの弾(14.5 kg) を使用することが決定され正式にQF 32ポンド砲 として採用された。 戦車砲としてこのオードナンス QF 32ポンド砲はQF 3.7インチ高射砲を改造したものである。94×909mmもの長大な薬莢を使用し分離薬莢方式であった。本砲は32ポンド(14.5kg)の被帽徹甲弾を初速930m/sで、15.3ポンド(6.9kg)の装弾筒付徹甲弾(APDS)を初速1540m/sで発射する。 通常の徹甲弾を用いた射撃試験では約1,000ヤード(914m)の距離からドイツ陸軍のV号戦車パンターの正面装甲を撃ち抜いて撃破した他、1945年6月28日に行われた射撃試験で発射されたMk.3 APDS弾は、4,880フィート(約1487m)先の50°傾斜した200mm(垂直311mmに相当)の均質圧延装甲を貫徹した。 これは17ポンド砲及び、オードナンス QF 20ポンド砲で使用されるAPDSの貫徹力を上回り、初期の装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)に匹敵する。この貫徹力はドイツ陸軍のティーガーII重戦車やヤークトティーガー駆逐戦車の砲塔前面装甲を貫徹する程である。 使用弾薬本砲では上記の他にも複数種類の砲弾を使用可能であった。代表的なものが下記の通りに挙げられる。
※「T」は曳光弾であることを示す。 仕様
参考文献
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