オキナワハイネズ (沖縄這杜松、学名 : Juniperus taxifolia var. lutchuensis )は、裸子植物 マツ綱 のヒノキ科 ビャクシン属 (ネズミサシ属)に分類されるほふく性低木 となる常緑 針葉樹 の1変種である(図1)。房総半島 から東海地方 、伊豆七島 、南西諸島 の海岸に分布する。自生地の開発や園芸用の採集によって、絶滅が危惧されている。基準変種は、小笠原諸島 に分布するシマムロ (Juniperus taxifolia var. taxifolia )である。
特徴
幹が地を這うほふく性の常緑 低木 であり、多数分枝し、直径2–4メートル (m) の範囲に広がる[ 17] [ 14] [ 18] (図2a)。樹皮 は灰褐色[ 18] 。
葉は針葉で3輪生し、長さ8–14ミリメートル (mm)、先端はやや尖るが軟質、緑色で光沢がある[ 17] [ 14] [ 19] [ 18] [ 20] (図2b)。表面に白い気孔帯が2条ある[ 19] 。
雌雄異株 、"花期"は2–5月[ 18] [ 16] [ 15] 。球果 は裂開せず、鱗片が合着して肉質(漿質球果)になり、球形、直径 10–12 mm、紫褐色[ 17] [ 14] [ 19] 。種子は三角状卵形、長さ4.5–5.5 mm[ 17] 。染色体 数は 2n = 22[ 17] 。
分布・生態
日本 固有変種 であり、房総半島 から東海地方 、伊豆諸島 、種子島 からトカラ列島 、奄美群島 、沖縄諸島 、与那国島 に分布する[ 6] [ 17] [ 14] [ 12] 。海岸 や海岸近くの日当たりの良い砂浜 や岩場、原野に生育し、群落を形成する[ 17] [ 14] 。
保全状況評価
海岸線の開発や護岸工事により、多くの自生地が失われた[ 14] 。また園芸用に盗掘され、アクセスが良い場所では消失してしまった[ 14] 。 日本全体としては絶滅危惧等の指定はないが、各都道府県 では、以下のレッドリスト の指定(統一カテゴリ名)を受けている(2023年現在)[ 21] 。またオオシマハイネズ(Juniperus conferta var. maritima )の名で登録されているものもある[ 22] (*で示している)。
人間との関わり
観賞用や砂防用などに植栽され、盆栽にもされる[ 16] [ 13] 。潮風や乾燥に強い[ 13] 。日当たりがよく、排水が良い場所を好む[ 13] 。
沖縄県の渡嘉敷村 では幸福の木とされ、幹が岩の間から這い出て再び戻るように湾曲することから、船が島から出て無事に帰ってくることに模して船のへさきに枝をさして航海の安全を祈念した[ 15] 。また、中国貿易に出る船が傾いて転覆しかけた際にオキナワハイネズによって支えられたとする伝承もある[ 15] 。渡嘉敷小中学校では、文集名を「這根樹(はいねず)」としている[ 15] 。
分類
オキナワハイネズのうち、東海地方 など南西諸島 以外に分布するものは、オオシマハイネズやハマハイネズ(Juniperus lutchuensis ; Juniperus conferta var. maritima )の名で別に扱われることもあるが[ 17] 、一般的にはオキナワハイネズと同じものとされる[ 8] [ 10] [ 11] 。
シマムロ
オキナワハイネズの同種で基準変種となるものは、シマムロ (Juniperus taxifolia var. taxifolia )である[ 6] [ 17] 。種としての Juniperus taxifolia にシマムロの名を充てていることもある[ 23] 。
シマムロは常緑 の低木 から高木 になり、環境によっては直立して高さ 13 m に達することもある[ 17] [ 24] 。葉 は3輪生し、8–15 × 1.2–1.5 mm、先端は鈍形、表面に白い気孔帯が2条ある[ 17] [ 24] 。葉の横断面は扁平、裏側に1個の樹脂道がある[ 17] [ 24] 。"花期"は4–5月ごろ[ 24] 。球果 は褐色、やや小さく直径 7–8 mm[ 17] [ 24] 。
小笠原諸島 特産であり、父島列島 と母島列島 の乾燥した岩石地などに生育する[ 17] 。材 に樹脂 が多く、焚きつけ木として優れているため、ヒデノキ(火出の木)やヒデともよばれる[ 17] 。乱伐されて激減し、環境省 および東京都 のレッドリスト では絶滅危惧II類に指定されている[ 25] 。
脚注
注釈
出典
^ a b Katsuki, T., Farjon, A. & Luscombe, D. (2013年). “Juniperus taxifolia ”. The IUCN Red List of Threatened Species 2013 . IUCN. 2024年1月7日 閲覧。
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^ 米倉浩司・邑田仁 (2013). 維管束植物分類表 . 北隆館. p. 44. ISBN 978-4832609754
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^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Juniperus taxifolia Hook. et Arn. ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList) . 2024年1月7日 閲覧。
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関連項目
外部リンク