エーテル型脂質エーテル型脂質(エーテルがたししつ)とは、グリセロール骨格に炭化水素鎖を有するアルコールがエーテル結合した極性脂質である。 エーテル型脂質を極性脂質として有する生物はアーキアと一部の好熱性細菌のみである。他の生物の有する極性脂質は2分子の脂肪酸がグリセロールにエステル結合した構造をとる。ただし、血小板活性化因子やプラズマローゲンのように1分子のアルコールがエーテル結合である構造をとる極性脂質は存在する。 アーキア(古細菌)のエーテル型脂質アーキアを他生物(真核生物、バクテリア)と区別する点で、エーテル型脂質の構造がその決め手となる。以下に、アーキアに特有なエーテル型脂質の特徴を列挙する。
以上は、アーキアのエーテル型脂質の一般的な特徴であるが 1, 2, 4 については例外も存在する。 1 の例外については、真正細菌のAquifex pyrophilusとThermodesulfobacterium communeもエーテル結合を有する脂質を持つ。2 の例外は極性脂質としてはイソプレノイドは存在しないが、真核生物の場合はステロイド、真正細菌はユビキノンやムレインの中間体として存在する。4 の例外はThermotoga属やButyrvibrio属(ともに真正細菌)でジアボリン酸という脂質が見つかっている。 いずれも極性脂質としては例外的なものではあるが、いまだアーキア以外の生物で sn-グリセロール1-リン酸型脂質を持つ生物はみつかっていない。 呼称このアーキアに特有なエーテル型脂質は命名法が1987年の論文で Nishihara らによって提案された。
エーテル型脂質の意義エーテル結合はエステル結合よりも耐熱性が高いといわれており、事実エーテル型脂質を持つ真正細菌はすべて好熱菌である。古くからマグマの中においても生息を続けてくることができたのはエーテル結合の熱安定性に依存すると考えられている。また、好熱菌はアーキオールよりもカルドアーキオールの占める割合が大きくなり、膜の高い耐熱性の要因となっていると思われる。 ただ、好熱菌以外のメタン菌や高度好塩菌についてはアーキオールの占める割合こそ多いものの、アーキアのみが sn-グリセロール1-リン酸型のエーテル型脂質を持つ理由は見出せていない。すなわち、好熱性細菌以外のアーキアがエーテル型脂質を所持している生理学的意味合いはいまだ見出せていない。 また、アーキアのエーテル型極性脂質が高等生物の用いるエーテル脂質の起源となっている、という説があるが、この脂質も対掌体の関係にあり説得力ある説とはいえない。 出典
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