エドナ・アダン・イスマイル (Edna Adan Ismail, ソマリ語: Edna Aadan Ismaaciil, Adna Aadan Ismaaciil) (1937年9月8日生まれ) はソマリランドの首都ハルゲイサに産科病院を設立した人物で、後にソマリランド初の女性外務長官(2003-2006年)[1]。女性器切除(FGM)の撲滅活動でも著名。
若いころ
エドナ・アダンは、1937年9月8日、イギリス領ソマリランドのハルゲイサで[2]、著名なソマリ人医師の娘として生まれた[3]。エドナの母親には子供が5人いたが、出産時に2人が死去している[4]。
エドナは8歳の時に、母親と祖母の手配で 女性器切除(FGM)の手術を受けた。この手術は父親の出張中に父親に無断で行われたもので、帰ってきた父は激怒して夫婦喧嘩となり、それがエドナを女性器切除反対に向かわせた理由の一つになった[4]。
当時、ソマリランドでは女子は教育を受けられなかったが、父親は地元の少年たちのために塾教師を雇っており、彼女は彼らと一緒に読み書きを学んだ。後に彼女は叔母が教師をしていた隣国ジブチの学校に通う[5]。エドナはイギリスのバラポリテクニック(後のロンドン・サウス・バンク大学(英語版))に留学し、看護師と助産師の教育を受けた。この道を選んだのは、子供の頃の体験が元であった[4]。このためエドナは「イギリスで学んだ初めての女性ソマリ人[6]」「ソマリア初の看護助産師[6][7]」と呼ばれ、車を運転した初のソマリ人女性にもなった[6]。
エガルとの結婚
その後エドナは、ソマリアの首相であるイブラヒム・エガルと結婚した。アメリカにも訪問し、当時の大統領リンドン・ジョンソンとも面談している。しかしその後離婚した[6]。
WHO職員
エドナは離婚後、世界保健機関の職員となった。1980年代の初め、父の夢であった故郷に病院を作るプロジェクトを立ち上げた。しかしちょうどその頃からソマリア北西部(現在のソマリランド)では反乱やその鎮圧などの戦闘行為が増えていき、エドナはソマリア(ソマリランド)を離れることとなった[8]。その後エドナは世界保健機関のジブチでのトップになったが1997年に退職した[6]。
病院建設
エドナはソマリランドに戻り、ゼロから産科病院の建設を計画した。建設地は、当時ソマリランドの大統領になっていた元夫のイブラヒム・エガルに交渉し、前独裁政権を象徴する場所だとして利用が難しくゴミ捨て場になっていた場所を政府から提供させた。建設資金は、自己資金の80万ドルでも不足していたため、ニューヨーク・タイムズの記者が募金を募り、アメリカ人女性なども寄付している。
当時この地域では、内戦の影響で病院のスタッフとなる訓練を受けた看護師が不足していた[9]。そこでエドナは2000年から候補者の中から30人を選んで看護師の訓練をはじめた。
病院は2002年3月9日にエドナ・アダン産科病院(英語版)として正式にオープンした。2018年時点で、病院には200人のスタッフと1500人の学生を擁しており、2つの手術室、実験室、図書館、コンピューターセンター、看護師と助産師を養成するための棟が設けられている[5]。
政治活動
エドナは2002年に社会問題・家族福祉長官となった。2003年から2006年にはソマリランドの外務長官を務めた[8]。2022年からは代表なき国家民族機構の代表を務めている。
チャリティ活動
エドナ・アダンの活動は、イギリスとアメリカの慈善団体の支援を受けており、助産師の増員やソマリランドでのFGM撲滅のための支援や意識向上に役立っている[10][11]。
受賞歴
エドナは2012年にフィスチュラ財団のCEOであるケイト・グラント(英語版)から「イスラムのマザー・テレサ」と呼ばれている[15]。
放送番組
2012年10月1日と2日、エドナはアメリカのテレビ局、公共放送サービスによるドキュメンタリー番組、ハーフ・ザ・スカイ - 世界中の女性のために抑圧をチャンスに変える(英語版)で取り上げられた。
2017年10月22日、エドナはBBCラジオ4(英語版)の番組「無人島ディスク(英語版)」にゲストとして登場した[16]。
参考文献
- ^ Gettleman, Jeffrey (2 June 2009). “No Winner Seen in Somalia's Battle With Chaos”. The New York Times. https://www.nytimes.com/2009/06/02/world/africa/02somalia.html 20 May 2019閲覧。
- ^ Skaine, Rosemary (2008). Women Political Leaders in Africa. McFarlane. pp. 54. ISBN 9780786432998
- ^ “125th Anniversary - Get Involved - My Cardiff”. Cf.ac.uk. 13 May 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。10 December 2014閲覧。
- ^ a b c “Why giving birth in the U.S. is surprisingly deadly”. National Geographic. (2018年12月13日). https://www.nationalgeographic.com/magazine/2019/01/giving-birth-in-united-states-suprisingly-deadly/ 2018年12月22日閲覧。
- ^ a b c University, London South Bank. “Edna Adan Ismail, Honorary Doctor” (英語). www.lsbu.ac.uk. 2018年11月7日閲覧。
- ^ a b c d e Kristof, Nicholas D.; Sheryl WuDunn (2010). Half the Sky: Turning Oppression into Opportunity for Women Worldwide. Vintage Books. pp. 124–. ISBN 978-0-307-38709-7. https://archive.org/details/halfsky00nich
- ^ Somali Maternity Care Archived 14 November 2012 at the Wayback Machine.
- ^ a b “Who is Edna Adan” (英語). 2020年1月30日閲覧。
- ^ “Partner Spotlight: Edna Adan University Hospital, Somaliland”. Direct Relief. 2021年6月27日閲覧。
- ^ “Archived copy”. 22 August 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。13 March 2018閲覧。
- ^ Carson, Mary (2016年12月12日). “Edna Adan: 'With my army of midwives, fewer girls will go through FGM'” (英語). The Guardian. 2018年5月23日閲覧。
- ^ Sheldon, Kathleen E., 1952- (2005). Historical dictionary of women in Sub-Saharan Africa. Lanham, Md.: Scarecrow Press. ISBN 0-8108-5331-0. OCLC 56967121. https://www.worldcat.org/oclc/56967121
- ^ “Annual Review 2008”. Cardiff University. p. 15 of 18. 7 September 2020閲覧。
- ^ “Fellows honoris causa of the RCOG”. Royal College of Obstetricians and Gynaecologists(英語版). 6 September 2020閲覧。
- ^ Kate Grant (1 October 2012). “The Muslim Mother Theresa”. The Huffington Post. https://www.huffingtonpost.com/kate-grant/edna-adan_b_1925711.html 1 October 2012閲覧。
- ^ Edna Adan Ismail’s ‘Desert Island Discs’ appearance
外部リンク