アダムとイヴ (クラナッハ)
『アダムとイヴ』(伊: Adamo e Eva、英: Adam and Eve)は、ドイツ・ルネサンス期の画家ルーカス・クラナッハ (父) が1528年に板上に油彩で制作した1対の絵画で[1][2][3]、画家50代半ばの円熟期の作品である[4]。フィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されており[2][3][4]、1998年に修復を受けた[2][3]。 この1対の絵画は、早くも1688年からトスカーナ大公国のコレクションにあり、18世紀初頭以来、ウフィツィ美術館に所蔵されている。フィリッポ・バルディヌッチは作品をアルブレヒト・デューラーに帰属したが、1784年の目録でクラナッハに帰属された[2][3]。 作品アダムとイヴの主題はデューラーの解剖学研究を促進し、それは現在、プラド美術館にある彼の大きな『アダムとイヴ』に結実した。これら2枚のパネル画は、ドイツの画家による最初の等身大の裸体画であった。ウィーン滞在中に、クラナッハはデューラーと親しかった人文主義者たちのいくつかのグループと親交を深め、その影響により1510年に自身初の、デューラーの作品より小さい『アダムとイヴ』 (ワルシャワ国立美術館) を手掛けた。 『旧約聖書』の「創世記」 (3章) によると、人類の祖先アダムとイヴはエデンの園で平和に暮らしていた。しかし、ある時、ヘビがイヴをそそのかし、神に食べてはいけないと禁じられていた「知恵の樹」の実を食べ、アダムにも与えてしまう。これが「堕罪」である。2人の行いを知った神は怒って、エデンの園から追放した[5]。 ウフィツィ美術館所蔵の『アダムとイヴ』は、2枚の別々のパネルにアダムとイヴが描かれている。彼らは暗い背景の中、かろうじて見える地面に立ち、2人とも生殖器を覆う小枝を持っている。イヴは伝統的なリンゴを持ち、ヘビが頭上の知恵の樹から彼女のところにやってきている。アダムは自身の右の頭頂部を手で掻いている。 クラナッハは理想の人体像に固執し、プロポーションに細心の注意を払って描いている。しかし、デューラーに学びつつも、自身の理想とする女性のイメージを自由に追求している。本作には独自の蠱惑的な造形が見られ、イヴの姿は官能性の漂う優美な表現となっている[4]。 大衆文化との関連美術史美術館所蔵の『アダムとイヴ』は、ドイツの連続テレビドラマ『ダーク』に取り上げられ、エリット・ルックス (Erit Lux) カルト教団の本部に展示されていた。 同主題作クラナッハによる同主題の絵画はほかにもあり、1枚の中にアダムとイヴを描いているものもあれば、別々の2枚に描いているものもある。それらの作品は、ウィーンの美術史美術館、ロンドンのコートールド美術館、ライプツィヒ造形美術館、シカゴ美術館などに所蔵されている。
脚注参考文献
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