アズダルコ (Azhdarcho ) は後期白亜紀のBissekty 累層 (中部チューロニアン [ 1] :9200万年前、ウズベキスタン )と、Zhirkindek 累層 (カザフスタン )から発見されているアズダルコ科 の翼竜の属。非常に伸張した頸椎を含む部分的な骨格から知られるが、この伸張した頸椎によってケツァルコアトルス など多くの巨大翼竜を含むアズダルコ科の一員であることが特徴づけられている。Azhdarcho という属名はイラン神話 に登場する竜型の怪物アジ・ダハーカ を表すペルシア語 "azhdar" (اژدر ) から取られている[ 2] 。模式種 はAzhdarcho lancicollis 。種小名lancicollis はラテン語の "lancea"「槍」、"collum"「首」に由来する。
歴史
アズダルコの化石は1974年から1981年にかけての中央アジア遠征調査の際に、Lev Nesovによってキジルクム砂漠 (Bissekty 累層のTaykarshinskaya 部層)から発見された。標本番号ЦНИГРмузей 1/11915 が与えられた模式標本 は一本の前部頸椎からなっている。12のパラタイプ標本が参照されており、それには数本の他の頸椎・翼と脚の構成骨・顎の欠片、等が含まれている。これらの標本は(遠征の間に集められた他の脊椎化石と共に)サンクトペテルブルク にあるF.N. Chernyshev Central Geologic Exploration Museum に保管されている[ 3] 。
Azhdarcho lancicollis の模式標本の記載において、Nesovはその特徴的な頸椎(非常に伸長しており、長径中央での断面は丸形をしている)に言及している。彼は他のいくつかの翼竜の同様な特徴について指摘し、この特徴によりプテラノドン科 内に含まれる新しい亜科 Azhdarchinae(アズダルコ亜科)を設立した。Nesovはケツァルコアトルスやアランボウルギアニア (当時はティタノプテリクスという名で知られていた)もこの亜科に含め、その後 Azhdarchidae(アズダルコ科 )として再分類された。彼はまた、ワイオミング州 ・ランス累層 産の同じように骨壁の薄い翼竜化石もアズダルコ属の1種ではないかと考え、これを後期白亜紀の中央アジアと北アメリカ西部の動物相の間にある共通性の証拠であるとした。しかし、その後の研究ではこの推測は支持されず、今のところA. lancicollis がアズダルコに属する唯一の種であるとされている[ 4] 。
分類
下図のクラドグラム は Neoazhdarchia 内での(より詳しくはアズダルコが模式属 となっているアズダルコ科内での)アズダルコの系統発生的位置を示している。このクラドグラムは2013年のBrian Andres と Timothy Myers のものを再編している[ 5] 。
古生態学
早朝のおだやかな湖面上を飛ぶ2羽のアズダルコの復元図
アズダルコの原記載においてNesovは、椎骨どうしの関節方式のためにこの翼竜は頸部の柔軟性が非常に制限されていたであろうと記述している。アズダルコはその首を垂直方向にはある程度の角度まで曲げることが出来たが、横に曲げることはほとんど出来なかった。Nesovはアズダルコのような翼竜は現在のハサミアジサシ と同じような方法(その長い首で獲物を水面や浅層から潜水せずすくい上げるスキミングという方法)で採餌していた可能性を示唆した。しかし近年の研究では、スキミングには以前考えられていたよりもより多くのエネルギーと解剖学的特殊化が必要であり、アズダルコのような大型翼竜ではスキミングは無理であるということが明らかになった[ 6] 。この長い首はアズダルコ科翼竜が遊泳中に水中や水底から餌を採るのにも使われただろうし、あまり飛行が得意では無い脊椎動物を空中で狩るのにも使えただろうが、Nesovはこの動物は上手く飛ぶためには安定した気象条件が必須であったと推測しており、アズダルコ科翼竜の生息地には穏やかな恒常風が吹いていることが必要だったとしている[ 3] 。しかしながらMark Witton の研究では、アズダルコ科翼竜は一般的に地上を歩き回って生活していた、という別の観点が指し示されている[ 7] 。
出典
^ Averianov, A.O. (2010). “The osteology of Azhdarcho lancicollis Nessov, 1984 (Pterosauria, Azhdarchidae) from the Late Cretaceous of Uzbekistan” . Proceedings of the Zoological Institute of the Russian Academy of Sciences 314 (3): 246–317. http://www.zin.ru/journals/trudyzin/doc/vol_314_3/TZ_314_3_Averyanov.pdf .
^ Khan, Amina (August 19, 2014). “Toothless 'dragon' pterosaurs once ruled skies worldwide, study says” . Los Angeles Times . http://www.latimes.com/science/sciencenow/la-sci-sn-pterosaur-toothless-flying-reptile-dragon-20140819-story.html August 26, 2014 閲覧。
^ a b Nesov, L. A. (1984). “Upper Cretaceous pterosaurs and birds from Central Asia” . Paleontologicheskii Zhurnal (1): 47–57. オリジナル のMarch 17, 2012時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120317044258/http://www.henteeth.com/nh/azhdarch3.htm .
^ Unwin, David M. (2006). The Pterosaurs: From Deep Time . New York: Pi Press. p. 273. ISBN 0-13-146308-X
^ Andres, B.; Myers, T. S. (2013). “Lone Star Pterosaurs”. Earth and Environmental Science Transactions of the Royal Society of Edinburgh 103 (3–4): 1. doi :10.1017/S1755691013000303 .
^ Humphries, Stuart; Bonser, Richard H. C.; Witton, Mark P. & Martill, David M. (2007). “Did pterosaurs feed by skimming? Physical modelling and anatomical evaluation of an unusual feeding method” . PLOS Biology 5 (8): e204. doi :10.1371/journal.pbio.0050204 . PMC 1925135 . PMID 17676976 . http://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.0050204 .
^ Naish, Darren (December 15, 2013). “Were azhdarchid pterosaurs really terrestrial stalkers? The evidence says yes, yes they (probably) were” . Scientific American . https://blogs.scientificamerican.com/tetrapod-zoology/were-azhdarchid-pterosaurs-really-terrestrial-stalkers-the-evidence-says-yes-yes-they-probably-were/ January 30, 2021 閲覧。 .