アカラシア
アカラシア(英: achalasia)もしくは食道アカラシア(しょくどうアカラシア、英: esophageal achalasia)は、食道の機能障害の一種である。食道噴門部の開閉障害もしくは食道蠕動運動の障害(あるいはその両方)により、飲食物の食道通過が困難となる疾患である。 少なくとも、1970年代初頭までには医学的に認知され、日本国内において名称の統一が行われているが、原因等について解明されていない点が多く、現在に至っても、根本的な治療方法はない。動物実験等により、迷走神経に障害を生じると発症することが分かっている(日本消化器外科学会雑誌 1978;11(8):589-94、他)が、人間において原因と迷走神経の損傷の程度、アカラシアの症状との因果関係までは明らかになっていない。 原因食道平滑筋部にある壁内のアウエルバッハ神経叢内の節細胞の変性により、食道胃接合部が弛緩不全を起こし、収縮したままの状態となって食道が拡張すると考えられている。神経細胞が変性する原因は明らかでなく、神経の変性疾患であるとの報告や、ウイルスが関与しているなどの報告がある。 症状アカラシアに特徴的な症状は以下のようなものが挙げられる。
診断方法アカラシアが疑われる場合、「症状」にある内容の問診の他、一般的に以下のような診断方法がとられる。
治療法薬物療法初期で発見されることが少ないため、初期の症状に有効な治療法は確立されていない。敢えて考えられる治療法としては、
等の内科的治療がある。症状が完全回復したという報告はなく、悪化の程度を抑制するために投与を続ける必要性があると言われている。 内視鏡下バルーン拡張術中程度の症状には、バルーンを用いて、食道を拡張することによって通過障害を取り除く。効果は一時的であり、根本的な治療とは言えない。 腹腔鏡下手術重度の症状の場合は、腹腔鏡を用いた外科手術による方法が一般的である。「Heller筋層切開術」と呼ばれる方法で食道の筋肉を開いて通過障害を取り除き、「Dor噴門形成術」と呼ばれる方法で、噴門部からの胃液の逆流を抑制する(食道は胃液を保護する粘膜がないため、噴門部が開いたままだと食道炎、食道癌を併発する)。多い病院では年間20例ほどの手術が行われており、外科的治療法としては確立していると考えられる。 内視鏡的筋層切開術新しい根治的治療として経口内視鏡的筋層切開術(POEM:per‐oral endoscopic myotomy)が発案され、低侵襲治療として注目を浴びている。POEMでは腹腔鏡手術と異なり、体表に傷がつかないことが外科手術治療との大きな違いである[1][2]。 補足日本における発症率は10万人に1人程度とされているが、潜在的な発症率はもう少し高いと考えられる。実際、アカラシアの分野は消化器内科よりも消化器外科で発達しており、症状から消化器内科で診察される場合がほとんどであるが、症状が特定されない、もしくは誤診されたまま症状が悪化し、食道癌等になってしまうことによって、アカラシアという初期の原因が見過ごされているケースが少なくないと言われる。 日本人と比べて欧米人の方が発症率が高く、一般的に、食生活の違いが原因ではないかと推察されている。日本においてアカラシアの発症件数が増えているとの報告もあるらしいが、これも日本人の食生活が欧米化していることが原因ではないかという推察の根拠の一つとなっている。 脚注
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