さよならフットボール
『さよならフットボール』は、新川直司によるサッカー漫画。『マガジンイーノ』(講談社)で2009年から2010年にかけて連載された。 概要女子サッカークラブや女子サッカー部が存在しない地域の中学校に通い男子サッカー部に所属する女子中学生が、性別と身体能力の壁に阻まれながらも、自らの理想とするプレースタイルで活路を見出そうとサッカーに打ち込む姿や[1][2]、勝ち負けに囚われないサッカーの楽しさなどが描かれている[3]。 作者の新川によると、自身はサッカー部に所属した経験はないものの、サッカー好きで試合観戦に頻繁に訪れていた[4]。漫画家となり、作品の構想を考える段階で日本女子代表の澤穂希のドキュメンタリー番組を観賞し女子サッカーの世界に興味を持ったことと[4]、当時はサッカー漫画が少なかったことなどから、本作品の原型となるネームを描き貯めていた[4]。2007年に辻村深月の小説『冷たい校舎の時は止まる』のコミカライズ作品の作画を担当することになったため構想は一時中断したが[4]、同作品の連載終了後に『マガジンイーノ』での連載が決まった際には自然な流れでサッカー漫画を描くことになったという[4]。 作中では中学生の主人公が「女子サッカー選手である」という理由から男子サッカー部の公式戦出場に難色を示される場面が描かれているが、2006年3月に行われた日本サッカー協会 (JFA) の理事会で、第3種年代(中学生年代)の女子サッカー選手の出場機会を増やす目的から従来の出場規程が見直され[5]、全国中学校サッカー大会とJFAプレミアカップと高円宮杯全日本ユースサッカー選手権 (U-15)大会の予選から本大会に至るまで女子サッカー選手が参加できるように改正されている[5]。 2016年に連載開始された『さよなら私のクラマー』では、本作品の後日談として、高校女子サッカー部が描かれており、恩田希や越前佐和などが引き続き登場している。2021年には本作品を原作とする劇場アニメが『映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ』のタイトルで『さよなら私のクラマー』のテレビアニメと同時展開される[6]。 ストーリー藤第一中学校2年生の恩田希は優れたボールテクニックの持ち主で、学校の男子サッカー部に所属しているが、部の方針により公式戦に出場することができずにいる。 そんなある日、希は街中で幼馴染の谷安昭(ナメック)と再会を果たすが、江上西中学校のキャプテンを務める彼から「サッカーはフィジカルだ。女のお前に何が出来る」と挑発される。このことをきっかけに希はナメックに一泡吹かせるため、サッカー部の公式戦に出場することを決意するが、監督の鮫島幸造からは成長に伴う体力などの問題から難色を示される。 希は子供の頃からのチームメイトの山田鉄二(テツ)や竹井薫(タケ)には身長や体格で追い越されており、「時間が経てば経つほど同じピッチでプレーすることは難しくなる」と感じている。そのため「ナメックに対抗できるのは今しかない」と意気込み黙々と練習をこなしつつ、鮫島に試合出場を認めさせようとあの手この手を使って奮闘する。そんな姿を見てテツやタケは、彼女の代わりに江上西戦に勝利しようと誓い、マネージャーの越前佐和も彼女を後押しする。 江上西との新人戦当日、希は弟の純平と無理やり入れ替わる形で試合に出場し、ナメックにドリブルで勝負を挑むが、相手の圧倒的な身体能力の前にことごとく跳ね返される。葛藤する希だが「フィジカルに囚われていたのはナメックではなく、何より自分自身だった」ということに気づく。 その後は、ナメックの成長を認め、テクニックを生かしつつシンプルにパスを回し、周囲の動きを引き出すプレーに転換する。試合は希の動きに呼応するように藤一中が攻勢に転じ、江上西守備陣を徐々に追い詰めるが決定的なチャンスを決めきれず、0-1のスコアで敗れる。 試合に敗れたものの希や、両チームのプレーには観客から拍手が送られる。そしてナメックに握手を求め「またどこかでサッカーをやろう」と約束する希の姿を見て、テツやタケはこの試合ですべてが終わるのではなく、希や仲間との新たなサッカーが始まるのだと予感するところで物語を終える。 登場人物藤第一中学校
江上西中学校
用語
書誌情報
脚注
関連項目
外部リンク |