さすらい人幻想曲
幻想曲 ハ長調 作品15, D 760 は、フランツ・シューベルトが1822年に作曲したピアノ独奏曲。第2楽章の旋律が自作の歌曲『さすらい人』(D 489)から引用されていることから、一般的に『さすらい人』または『さすらい人幻想曲』(さすらいびとげんそうきょく、ドイツ語: Fantaisie 'Wandererfantasie')の名で親しまれている。 概要シューベルトがこの幻想曲を作曲したのは、『未完成交響曲』の第3楽章のスケッチを中断した直後の1822年後半と考えられており、上記のように第2楽章の変奏曲主題が自作の歌曲『さすらい人』から引用されている(また、4楽章とも『さすらい人』に基づく主題を用いている)ことが愛称の由来である。 シューベルトのピアノ作品としては高度の演奏技術を要する作品で、シューベルト自身がうまく弾けず、苛立ちのあまり「こんな曲は悪魔にでも弾かせてしまえ」と言ったという逸話もある。最も多用されている技法はアルペッジョ(分散和音)で、シューベルトの他のピアノ作品でこれほど多様なアルペッジョを駆使した作品はほとんどない(シューベルトがこの作品の出版に当たって援助を受け、曲を献呈したエマヌエル・カール・エードラー・フォン・リーベンベルク(Emanuel Karl, Edler von Liebenberg)はヨハン・ネポムク・フンメルの弟子だった)。 のちにフランツ・リストが編曲したピアノ協奏曲(管弦楽伴奏、S. 366)版もよく知られ、またリストは2台ピアノ版(S. 653)や弾きやすくした校訂版(S. 656a)も発表している。 曲の構成全4楽章からなるが、切れ目なく演奏される。演奏時間は約20分。「幻想曲」という名がついているが、本作は実質的に全4楽章からなる自由な形式のソナタ風作品で、後にリストが単一楽章の幻想曲風ソナタである『ピアノソナタ ロ短調』(S. 178)を作曲する上でも大きな影響を与えたとされている。
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