『これはただの夏』(これはただのなつ)は、燃え殻による日本の小説[1]。『Yom yom』(新潮社)57号(2019年8月号)から66号(2021年2月号)に連載されたのち、2021年7月29日に同社から単行本が刊行された[1]。2024年8月28日に文庫化された[2]。
とある女性と小学生と「ボク」の、ある夏の数日間が描かれる。
燃え殻は2019年にバンド・けものの青羊による楽曲『ただの夏』に触発され本作を執筆している[3]。
単行本の発売記念として、『ただの夏』をBGMに俳優・仲野太賀が出演、声優・江口拓也が朗読する映像作家・望月一扶によるPVが公開されている[4]。
漫画家・大橋裕之が描く本作のアナザーストーリー的なマンガが文芸雑誌「波」(新潮社)2021年8月号で特別公開された[5]。
登場人物
主要人物
- ボク / 秋吉(あきよし)
- テレビ美術制作会社の社員。周囲に合わせるのが苦手でなんとなく独身のまま、仕事に忙殺され生きる。
- 優香(ゆうか) / ユカ
- ボクが出席した披露宴で出会った女性。五反田の風俗店「マーメイド」の売れっ子風俗嬢。
- 明菜(あきな)
- ボクが住む目黒のマンションのエントランスで出会った小学生5年生。10歳。母親とふたり暮らし。
- 大関(おおぜき)
- ボクが唯一、まともにつきあえるテレビ局のディレクター。体重百キロを超える巨漢。 ステージ4の末期癌が見つかる。
周辺人物
- 母
- ボクの母親。「普通がいちばん」「普通の大人になりなさい」という口癖を言い聞かせ、ボクを育ててきた。
- 大森(おおもり)
- 明菜の母。香水とアルコールの臭いのする女性。「別冊マーガレット」の愛読者。
- 3日間家を空けるから何かあったらボクを頼るようにと明菜に言い残し、客の待つ長野へゴルフに向かう。
その他
- 洋平(ようへい)
- ボクと大関が出席した披露宴の新郎。ボクの取引先である大手広告代理店の社員。大月家具の御曹司。
- 圭子(けいこ)
- 結披露宴の新婦。赤坂の老舗料亭のひとり娘。優香の友人。
- マネタイズ
- お笑い界で一番人気の若手漫才師。大島、斉藤の2人組。大関が新郎への営業目的で制作したお祝い動画が披露宴で流される。
- 宮下 ホクト(みやした ホクト)
- ボクが中学生の時の友人。母子家庭の子供。
- 宮下 恵子(みやした けいこ)
- ホクトの母。スナック「グランシャリオ」のママ。
- ボーイ
- 「五反田マーメイド」のボーイ。白竜似。
- 林(はやし)
- 大関の入院する病院のふくよかな看護師。
- ママ
- 大関が「日陰島」と呼ぶ鹿児島の離島にあるスナック「ときわ」のママ。金髪ショートの着物姿。
- ケイ
- 「ときわ」の店員。黄色いボディコン女。大関を接客する。
- ミキ
- 「ときわ」の店員。「埼玉県産」。少々太め。ボクを接客する。
評価
単行本の刊行を前に、文芸雑誌「波」(新潮社)2021年8月号にバンド・マカロニえんぴつのはっとりによる書評が掲載されている[6][7]。
また、はっとりと映画監督の岨手由貴子が単行本に推薦コメントを寄せている[3]。
書誌情報
オーディオブック化されていて、橋本淳、 齋藤里菜の朗読により、2022年にAudibleからデータ配信されている[8]。
脚注
外部リンク