この項目では、かわいさについて説明しています。日本特有の美的感覚については「可愛い 」をご覧ください。
かわいさ (Cuteness )とは、ある事物に対して「かわいい 」と感じる鍵刺激 ・因子 ・性質 ・概念 ・美学 。類語として「かわいげ」「かわいらしさ」「いとおしさ」「愛くるしさ」などがある。
子供の形態的特徴と生物学的機能
ローレンツが示した「かわしらしい」形態的特徴[ 1]
年齢別のヒト の頭部。
動物行動学 者のコンラート・ローレンツ は、1943年 に『可能な経験の生得的形態(経験できることには生まれつき決まった形がある)』という論文を発表した[ 2] 。この論文では、赤ちゃん固有の形態的特徴が、大人にとって「かわいい 」という感情を刺激し、子育て行動へと駆り立てるとされた[ 1] 。赤ちゃん固有の形態的特徴とは「体に比して頭が大きい」「顔面より脳頭蓋が大きい」「目が大きくて丸い」「頭全体に対して目鼻口が低い所に位置している」「短い四肢」 などが挙げられる[ 1] 。これら幼い動物の身体的特徴は「ベビースキーマ (ドイツ語版 ) 」(幼児図式[ 1] [ 3] 、Kindchenschema)と呼ばれている。またこれは科学的方法 に基づく「かわいい」研究の出発点となった[ 4] 。
アタッチメントと母子相互作用
ベビースキーマ自体はコミュケーションのために進化したものではない。たしかにベビースキーマは、赤ちゃんを養育させる感情を保護者 に喚起させるが、あくまで一次的な身体機能発達の産物に過ぎず、それを受け取る大人側に「かわいらしい」と感じられる感受性が、進化の過程で備わってきた と解説される[ 1] 。
比較行動学 者の正高信男 は、ベビースキーマの理論を拡張するだけでは、赤ちゃんの発声や動きに対する大人の養育的反応を説明できないとしている。たとえば「指さし 」など、赤ちゃんが大人と類似した行動をとった時であっても、それを愛でようとする傾向がヒト の心理 にはあるという[ 1] 。小児科医のT・ベリー・ブラゼルトン によれば、親が話しかけるほど赤ちゃんもよく発声し、笑顔で見つめると笑顔で微笑み返す。このような相互作用は本能的に備わっており、生まれて数時間しか経っていない赤ちゃんであっても、親の表情や発声を忠実に模倣する習性があるという[ 5] 。このような反射 的習性は「原初模倣 」と呼ばれている[ 6] 。この際、保護者は泣き叫ぶ赤ちゃんをあやすなど「快感情」を与え、赤ちゃんもまた保護者に様々な養育信号を発信する[ 5] 。
母性の発達を研究している石野陽子は、母子間で愛情を高めあう乳幼児の行動に「人見知り 」を挙げている。たとえば、赤ちゃんは生後半年ほどで人見知りをするようになり、普段あまり接しない人が接近するだけで泣き叫ぶなど不快感を示す。しかし、保護者が視界に入ると赤ちゃんはピタリと泣き止み、抱きつくなど甘える仕草を見せる。保護者もまた「私がこの子を育てなければ」というポジティブな養育行動を促進させ、赤ちゃんを甘やかすようになる。こうした母子間の親密かつ情緒的なかかわりは「アタッチメント(愛着) 」と呼ばれ、母子間で信頼関係が育まれるプロセスを発達心理学 では「母子相互作用 」と呼んでいる[ 5] 。
「甘え」の視点
大阪大学 大学院 人間科学研究科 教授の入戸野宏 は、土居健郎 著『「甘え」の構造 』(弘文堂 , 1971年)を引き合いに「甘え 」と「かわいい 」という日本人 に顕著な2つの感情の類似性を指摘している。たとえばベビースキーマが仮定する考え方では、あくまで被保護側の発信する「かわいさ」は、保護者が受容する「鍵刺激 =単なる手がかり」に過ぎないという一方向的な関係 に終始しているが、ここに他者の愛情を得ようとする「甘え」の視点を被保護者側に取り入れることで「かわいさ」の発信側と受容側の関係性は、双方向的なもの として解釈できるとしている[ 7] 。
子供のネオテニー
ロンドン大学のデズモンド・コリンズ[ 8] は「人間の青年期が長くなるのはネオテニー の一部」と述べた[ 9] 。身体人類学者のバリー・ボーギン も「子どもの成長パターンが、かわいさの持続期間を意図的に長くしている」という可能性を述べている。ボーギンによると人間の脳は、次のタイミングで大人の大きさになるという[ 10] 。
体が40%しか完成していないとき
歯の成熟が58%しか完成していないとき
生殖の成熟が10%しか完成していないとき
このようなアロメトリー (相対成長、身体の全体に対する各部位の相対的な成長度のこと)によって、子どもは他の哺乳類 よりも長く「大きな頭蓋骨」「小さな顔」「小さな体」「性的未発達」といった、表面的には「幼児的な外見」を保つことができるという。またボーギンは、このかわいらしい外見が「年長の個体」に対して「養育」「世話焼き」という反応を引き起こすと述べている[ 10] 。
性差
乳児のかわいさの感じ方は、乳児の性別や行動に影響される。小山ら(2006)の研究によると、女性乳児は男性乳児よりも身体的魅力があるとされている。(Karraker(1990) )の研究でも、男性乳児の保護をかき立てるのは、子どもの幸せや身体的な魅力に対する認識のみとする可能性が実証された[ 12] 。
また、かわいらしさへの認識を大きく左右するものに「観察者の性別」がある。(Sprengelmeyerら(2009) )が行った研究では、同じ年齢の男性よりも女性は「かわいらしさのわずかな違い」に敏感であるとしており、これは女性ホルモン の働きが「かわいらしさ」を決定するために重要であることを示唆した[ 13] 。
文化的意義
ベビースキーマは生身の幼児だけでなく、サンリオ のハローキティ をはじめ、胴体に比べて頭部が異常に大きいちびキャラ やぬいぐるみ など天然 には存在しない人工物にも感じ取れる[ 14] 。
ベビースキーマは本来の生物学 的な領域以外にデザインや産業の分野でも絶大な効果があり、特に有名な例が日本の漫画 やアニメ などのポップカルチャー (おたく文化 )である。たとえばキャラクター の「無垢さ」「従順さ」「幼さ」を演出・強調するために、しばしば
身体に比して大きな頭と小さな鼻
顔の中央よりやや下に位置する大きな眼
突き出た額
短くてふとい四肢
やわらかい体表面
丸みをもつ豊頬
全体に丸みのある体型
ぎこちない動き
などベビースキーマの特徴[ 15] [ 16] が多用される(こうした天然 に存在しないが見る者に大きな反応を引き起こすものを「超正常刺激 」と呼ぶ)。このような超正常刺激 を呼び起こすキャラクターデザイン はサブカルチャー に留まらず、ゆるキャラ や萌えキャラ [ 17] など日本社会のあらゆる分野に広がっている美的感覚であり、総じて「かわいい 」「萌え 」「尊い 」などの日本語 で形容・表現されている。
おたく文化やロリコン漫画への影響
男性文化において「かわいさ」を主軸とする萌え の元祖的作品は、1980年代 前半のロリコンブーム 期にあらわれた。それまで一般的な男性向けエロ漫画 は、リアルタッチの三流劇画 がほとんどであったが、この流れを決定的に変えたのが、1979年のコミックマーケット 11で頒布された日本初のロリコン漫画同人誌『シベール 』(無気力プロ)である。この同人誌は「手塚治虫 や石ノ森章太郎 のような丸っこい記号的な絵柄でもセックスが描ける」という「かわいい エロ 」の発見と革命をもたらしたことで伝説化している[ 18] 。
その後、ベビースキーマの特徴を兼ね備えたロリコン漫画 は青少年に広く受けいれられた。さらには「おたく 」の登場とも相まって、二次元コンプレックス なる文化現象を生み出すとともに、今で言うところの「萌えキャラ 」で性的欲求を開放する美少女コミック が氾濫する。とくに初期のロリコン漫画は、手塚漫画やアニメ絵の「幼児形態」を保ちながら、性的刺激(=超正常刺激 [ 19] )をもたらした点が画期的であり、エロ漫画評論家の永山薫 は「エロ漫画におけるネオテニー (幼形成熟)」とも形容している[ 20] 。そして、現在にも連綿と受け継がれている「萌えエロ」「かわいいエロ」こそ、マッチョ的なものに対するフラジャリティ の復権として起こった、一種の表現運動/カウンターカルチャー (80年安保 [ 21] )であったといえる。
「かわいさ」を喚起させる対象と構造
かわいさを構成する要素。図からも分かるように、かわいさを醸し出す要素には相矛盾する要素が含まれており、かわいいものは我々との共感やコミュニケーションに失敗していることが多い[ 22] 。
「かわいさ」を感じさせ、大人の庇護を喚起するものは、男らしさ(マチズモ )とは対極的な存在であるといえる。美術評論家 の松井みどり は「かわいい」という感情の発露について「無作法で非生産的な行動、すなわち合理性と能率を旨とする『大人社会』の規範から逸脱した行動に対して、相手が『弱く』『未熟な』ために許し、保護してあげるという慈しみの視点から発せられる」と推察している。
かわいさの類型と構造
研究者のの宮﨑拓弥らは、かわいさを喚起する因子を次の4つに分類している。
宮崎によると、かわいさを喚起する因子は男女ともに同じ傾向があり、同分類は男女を区別せずに統一して適用できるものと考えられている。
「かわいい」と「かわいそう」
かわいさを喚起させる特徴としては、親しみやすく身近なもの[ 26] 以外に、ネガティブ なものも含まれる。たとえば、下記に示すものは「かわいそう/フラジャイル ≓かわいい 」を構成する主要素である[ 27] 。
壊れやすい
頼りない
小さい・幼い・か弱い
軽い・未成熟・不完全
遅い
緩んだ
繊細・臆病
歪んだ・病んだ
儚い
これらに加えて、世の中から逸脱 (超俗 )して、社会との調和を喪失した対象 (例:電波系 ・不思議ちゃん ・天然 ・中二病 ・メンヘラ ・陰キャ ・コミュ障 ・猫耳 ・人外 ・巫女 )も「かわいい」とされることがある[ 28] 。
宮元健次 は「かわいい」という不完全で未熟なものに惹かれる日本特有の美意識が、世界中で注目されるようになった理由を「ひと言でいえば、それは20世紀 社会の経済的発展に対するアンチテーゼ といえるだろう。『かわいい』は、成長や成熟を否定する美意識である 」と、モラトリアム の文脈でまとめている[ 29] [ 30] 。
ちなみに「かわいい 」という日本語 は、目上の者[ 31] が目下の者へ「不憫だ」「あわれだ」「気の毒だ」など憐憫・慈悲・慰撫の感情を抱くさまに由来している[ 32] 。この意味を受け継いだ派生語に「かわいそう 」がある。
大塚英志 は「かわいい 」と「かわいそう 」が表裏一体であるとして次のように論じている。
それにしてもなぜ〈
かわいい 〉と〈
かわいそう 〉が同義なのだろう。本書の中でぼくは〈かわいい〉ものに囲まれた勉強部屋や少女雑貨の店が、
外界から遮断された自閉的空間 であることをくり返し指摘してきた。つまり、〈かわいい〉というのは、
少女たちを現実あるいは外の世界から保護するバリヤーの役目 なのである。〈かわいい〉私は〈かわいい〉空間でしか生きることができない。つまり〈私〉とは、「痛々しくて見るに耐えない」存在である。〈かわいい〉が少女の自己像を表現するキーワードである以上、そこに〈かわいそう〉が一体化することはむしろ当然のことだったのである。〈かわいい〉小宇宙の住人である〈私〉はとても〈かわいそう〉である。それが「
ぼのぼの 」世界であり、メディアが切りとって見せた
昭和天皇 のほんとうの意味だったのだといえる。
— 大塚英志 『少女民族学―世紀末の神話をつむぐ「巫女の末裔」』光文社 pp.246-247より抜粋 1989年
ここで大塚は、昭和天皇 が病に臥した時、お見舞いの記帳 に「制服姿の少女たちが列を作った」という一見して非常に奇異な現象を例に取り上げた。いわく「少女たちが老人(=かわいいおじいちゃん)の中に〈無垢にしてか弱い 〉という“自分たちと重なり合う同質のイメージ”(少女の自己像 )を見いだしていたのではないか」という推測である。また大塚は「昭和天皇」に近い類例として「かわいそうなシマリスくん」(いがらしみきお の漫画 『ぼのぼの 』に登場する「いぢめる?」が口癖のいじめられっ子キャラ)の人気を同列に挙げている>。
支配―被支配の関係
相手を未熟なものとして愛玩物的に可愛がり、保護する行動についてイーフー・トゥアン は著書『愛と支配の博物誌―ペットの王宮・奇型の庭園』(工作舎 , 1988年)で、相手の自分への依存を強調することによって、他者を意のままにしたいという「支配の欲望」に直結するものであると指摘している>。
これに関して明星大学 教育学部 教授の西村美香 は「支配欲(もしくは庇護欲)」「ご都合主義的政治的用語」「商業的うまみ」 の3つが要素が現在的な「かわいい 」という言葉に含まれていると指摘し、「かわいい」という言葉が持つ「支配―被支配の関係」 に関して次のように述べている。
例えば、不憫なゆえにかわいいとか、気持ち悪くてみなに相手にされなくてかわいいとか、いわば
上から目線の支配的な心情 がそこに見え隠れする。(中略)
それは対象物をまるで所有物のように自分の配下に置き、上から見下すかのような感情ですらある 。そして「かわいい」はそれを言われたものは、そこに上から目線や、見下した(ときには馬鹿にしているような)感情を読み取りながらも、
「かわいい」が本質的には褒め言葉 であるため、言われて居心地の悪さを感じることはあっても侮辱していると怒るほどのものではないと言われるままにひきさがる。苦々しく思いながらもひきさがらずをえないのである。この状況は、白黒をはっきりつけたがらない、ときには奥ゆかしくそしてまわりくどい、人間関係を円滑に進めようとする日本人の心情にぴったりなまさに日本的思考である。「かわいい」と言っていればとりあえずその場は何とかなる。「かわいい」をもちだすことでその場をなごませ、
「かわいい」と言われることで小さき弱者に自分を位置づけ危機を回避することができるのである 。
— 西村美香「かわいい論試論」明星大学 人文学部 『明星大学研究紀要人文学部』51号, pp.134-135, 2015年
また西村は「かわいい 」を濫用し、自己にも「かわいい」を適合させる「すでに幼くも小さくもない大人の女性」について「誰かの庇護の元に入り、その誰かに依存して、したたかに生きてゆく戦略 」と指摘しており、逆に「成熟しきって老いて醜くなった女性」が周囲から邪険にされず、老後の面倒を見てもらうには「かわいいおばあちゃん 」[ 35] となって少しでも好かれるぐらいしか生存戦略はないのかもしれないと推察している[ 36] 。
かわいさがモチーフのフィクション作品
参考文献
国内外で流通している「かわいい 学」は、日本独自の「かわいい」という包括的概念や文化的諸相を、人文 ・社会科学 的アプローチで考察した定性的研究 が中心となっている。そのため実験心理学 、神経科学 、神経美学 、感性工学 的なアプローチから純粋に「かわいさ」に関連する論文や文献資料を渉猟される際は「日本の特殊性を強調したポップカルチャー 論」と混合されないよう注意されたい。コンラート・ローレンツ のベビースキーマ (ドイツ語版 ) に着目した日本の研究者としては前田實子 、入戸野宏 、大倉典子 らがいる(我が国における「かわいい文化」の概念形成史などは大塚英志 、増淵宗一 、四方田犬彦 、古賀令子 らの書籍を参照のこと)。
著作・雑誌
土居健郎 『「甘え」の構造 』弘文堂 , 1971年 / 増補普及版, 2007年
山根一眞 『変体少女文字の研究―文字の向うに少女が見える』講談社 , 1986年
イーフー・トゥアン 著/片岡しのぶ +金利光 訳『愛と支配の博物誌―ペットの王宮・奇型の庭園』工作舎 , 1988年
大塚英志『少女民俗学 : 世紀末の神話をつむぐ「巫女 (みこ) の末裔 (まつえい) 」』光文社〈カッパ・サイエンス〉、1989年。ISBN 4334060420 。 NCID BN03587058 。全国書誌番号 :89042754 。
コンラート・ローレンツ 著/日高敏隆 訳『動物行動学Ⅱ』思索社, 1989年
島村麻里 『ファンシーの研究―「かわいい」がヒト、モノ、カネを支配する』ネスコ , 1991年
増淵宗一『かわいい症候群』日本放送出版協会 , 1994年
美術出版社 『美術手帖 』1996年2月号, 48巻2号, No.720「特集:かわいい」
レズリー・A. ゼブロウィッツ著/羽田節子 訳『顔を読む―顔学への招待』大修館書店 , 1999年
山田徹 『キャラクタービジネス―「かわいい」が生み出す巨大市場』PHP研究所 , 2000年
インゴ・レンチュラー他編『美を脳から考える―芸術への生物学的探検』新曜社 , 2000年
正高信男 『子どもはことばをからだで覚える メロディから意味の世界へ』中公新書 2001
森川嘉一郎 『趣都の誕生―萌える都市アキハバラ』幻冬舎 , 2003年 / 文庫版 2008年
大塚英志『「おたく」の精神史 一九八〇年代論』講談社現代新書 2004年 / 朝日新聞社 2007年 / 星海社文庫 2016年
ササキバラ・ゴウ 『〈美少女〉の現代史―「萌え」とキャラクター』講談社現代新書 2004年
ケン・ベルソン+ブライアン・ブレムナー著/酒井泰介訳『巨額を稼ぎ出すハローキティの生態』東洋経済新報社 , 2004年
四方田犬彦 『「かわいい」論』筑摩書房 〈ちくま新書 〉2006年
宮台真司 ,石原英樹 ,大塚明子 『増補 サブカルチャー神話解体―少女・音楽・マンガ・性の30年とコミュニケーションの現在』筑摩書房 , 2007年
宮元健次 『日本の美意識』光文社 〈光文社新書 〉2008年
古賀令子『「かわいい」の帝国―モードとメディアと女の子たち』青土社 , 2009年
高月靖『ロリコン―日本の少女嗜好者たちとその世界』バジリコ , 2009年
櫻井孝昌『世界カワイイ革命』PHP研究所 , 2009年
山本博通『なぜギャルはすぐに「かわいい」というのか』幻冬舎ルネッサンス新社 〈幻冬舎ルネッサンス新書 〉2010年
KAWADE夢ムック 『文藝 別冊[総特集]吾妻ひでお 美少女・SF・不条理ギャグ、そして失踪』河出書房新社 2011年4月
吾妻ひでお 「吾妻ひでお 2万5千字 ロングインタビュー 現代日本的美意識「かわいいエロ」の創造者」。
森川嘉一郎「吾妻ひでおはいかにして「おたく文化の祖」になったか」。
新潮社 『芸術新潮 』2011年9月号, 62巻9号「特集:ニッポンの『かわいい』」
オギ・オーガス+サイ・ガダム『性欲の科学―なぜ男は「素人」に興奮し、女は「男同士」に萌えるのか』(原題:A Billion Wicked Thoughts: What the Internet Tells Us About Sexual Relationships )CCCメディアハウス , 2012年
中村圭子編『日本の「かわいい」図鑑―ファンシー・グッズの100年』河出書房新社 , 2012年
永山薫 『増補 エロマンガ・スタディーズ「快楽装置」としての漫画入門 』筑摩書房 〈ちくま文庫 〉2014年
「美少女の美術史」展実行委員会編『美少女の美術史―浮世絵からポップカルチャー・現代美術にみる"少女"のかたち』青幻舎, 2014年
青柳絵梨子 『〈ルポ〉かわいい! 竹久夢二からキティちゃんまで』寿郎社 , 2014年
阿部公彦 『幼さという戦略―「かわいい」と成熟の物語作法』朝日新聞出版 〈朝日選書 〉2015年
エムディエヌコーポレーション 『月刊MdN 』2015年6月号「特集:少女の表現史 」
工藤保則『カワイイ社会・学 成熟の先をデザインする』関西学院大学出版会 , 2015年
長谷川晶一『ギャルと「僕ら」の20年史 女子高生雑誌Cawaii!の誕生と終焉』亜紀書房 ,2015年
横幹〈知の統合〉シリーズ編集委員会編『カワイイ文化とテクノロジーの隠れた関係 (PDF ) 』東京電機大学出版局 , 2016年
大倉典子編著『「かわいい」工学』朝倉書店 , 2017年
石川桂子編『竹久夢二 かわいい手帖―大正ロマンの乙女ワールド―』河出書房新社, 2017年
クリスティン・ヤノ著/久美薫訳『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか? “カワイイ"を世界共通語にしたキャラクター』作品社 , 2017年
吉光正絵+池田太臣+西原麻里編著『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学―女子たちの「新たな楽しみ」を探る―』ミネルヴァ書房 , 2017年
佐々木隆『「カワイイ」とは何か(前後編)』多生堂, 2018年(※国内外で発表されたほぼ全ての「かわいい論」の書誌情報と抄録を掲載)
日本建築学会 編『「かわいい」と建築』海文堂出版 , 2018年
入戸野宏 『「かわいい」のちから 実験で探るその心理 』化学同人 , 2019年
サイモン・メイ『「かわいい」の世界―ザ・パワー・オブ・キュート』青土社, 2019年, 吉嶺英美訳
渡辺茂 +石津智大 『神経美学―美と芸術の脳科学』共立出版 , 2019年
久保友香 『「盛り」の誕生 女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』太田出版 , 2019年
論文
コンラート・ローレンツ (Konrad Lorenz)「可能な経験の生得的形態(経験できることには生まれつき決まった形がある) 」(原題:Die angeborenen Formen möglicher Erfahrung )『Z. Tierpsychol.』Vol.5, pp.235-409, 1943年, 未翻訳文献
コンラート・ローレンツ「動物および人間の社会における全体と部分―方法論的考察―」『Studium Generale』1950/3/9(原題:Ganzheit und Teil in der tierischen und menschlichen Gemeinschaft / 日高敏隆 訳『動物行動学Ⅱ』所載)
前田實子「Baby-schemaに関する実験的考察―母性心性の触発刺激を中心に―」『武庫川女子大学.幼児教育研究所紀要』第2号, pp.4-42, 1983年
前田實子「Baby-schemaに実験的考察II―『可愛らしさ』の諸要因ついて―」『武庫川女子大学.幼児教育研究所紀要』第3号, pp.4-50, 1984年
前田實子「Baby-schemaに関する実験的考察III―『丸さ』を中心に―」『武庫川女子大学.幼児教育研究所紀要』第4号, pp.4-42, 1985年
松井みどり「偏愛のマイクロポリティクス―逸脱の記号としての『かわいらしさ』」『美術手帖 』48巻2号第720号、美術出版社 、1996年2月、25-41頁、ISSN 02872218 、NAID 40003243425 。
小山礼子; 高橋ユウエン; 守一雄 (2006). “子どものかわいらしさを決める要因と男女差 ”. 社会行動性格研究誌 (Scientific Journal Publishers) 34 (9): 1087-1099. doi :10.2224/sbp.2006.34.9.1087 . ISSN 0301-2212 . ( 要購読契約)
ヤマダトモコ 「個人的萌えと商業的萌え、萌えとかわいいとエロの関係」『國文學―解釈と教材の研究 』第53巻第16号、学燈社 、2008年11月、102-111頁、ISSN 04523016 、NAID 40016253450 。
入戸野宏「"かわいい"に対する行動科学的アプローチ 」『人間科学研究』第4巻、広島大学大学院総合科学研究科、2009年、19-35頁、doi :10.15027/29016 、ISSN 18817688 、NAID 120001954440 。
椎塚久雄, 橋爪 絢子「かわいさとインタラクティビティ 」『横幹連合コンファレンス予稿集』、横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)、2011年11月、doi :10.11487/oukan.2011.0.8.0 、ISSN 1881-7688 、NAID 130005034073 。
井原なみは, 入戸野宏「幼さの程度による"かわいい"のカテゴリ分類<論文> 」『広島大学大学院総合科学研究科紀要. I人間科学研究』第6号、広島大学大学院総合科学研究科、2011年12月、13-17頁、doi :10.15027/33096 、ISSN 1881-7688 、NAID 120004288081 。
椎塚久雄「かわいい感情の構造―製品の中におけるかわいさとインタラクション」『感性工学』第11巻第2号、日本感性工学会、2012年9月、99-108頁、ISSN 1882-8930 、NAID 40019472496 。
井原なみは, 入戸野宏「対象の異なる"かわいい"感情に共通する心理的要因 」『人間科学研究』第7巻、広島大学大学院総合科学研究科、2012年、37-42頁、doi :10.15027/34619 、ISSN 1881-7688 、NAID 120005245671 。
入戸野宏「かわいさと幼さの関係についての実験心理学的考察 (PDF ) 」日本感性工学会・かわいい人工物研究部会・2周年記念シンポジウム(2012年6月2日・芝浦工業大学 豊洲キャンパス)資料集, pp.7-10
石田かおり 「日本のカワイイ文化の特質・来歴とその国際的発信について 」『駒沢女子大学研究紀要』第19号、駒沢女子大学、2012年12月、57-68頁、doi :10.18998/00001135 、ISSN 1340-8631 、NAID 110009579442 。
入戸野宏「かわいさと幼さ:ベビースキーマをめぐる批判的考察 」『VISION』第25巻第2号、日本視覚学会、2013年、100-104頁、doi :10.24636/vision.25.2_100 、ISSN 0917-1142 、NAID 130007537260 。
畠山真一「カワイイ概念と『不気味の谷』現象について 」『尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編』第46巻、学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会、2014年、29-42頁、doi :10.24577/seia.46.0_29 、ISSN 2187-5235 、NAID 110009767987 。
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堀江亮太, 柳美由貴, 高階知巳, 大倉典子「かわいい:7. かわいい画像を見たときの生体反応 」『情報処理』第57巻第2号、情報処理学会 ; 1960-、2016年1月、141-144頁、ISSN 0447-8053 、NAID 40020711380 。
宇治川正人「『かわいい』の原因系と結果系の分類―『かわいい』を類型化する― 」『日本感性工学会論文誌』第15巻第1号、日本感性工学会、2016年2月、39-46頁、doi :10.5057/jjske.TJSKE-D-15-00057 、ISSN 1884-0833 、NAID 130005128767 。
石川なつ美「『かわいい』の意味について 」『東京女子大学言語文化研究』第24号、東京女子大学言語文化研究会、2016年3月、21-35頁、ISSN 0918-7766 、NAID 40021302085 。
佐々木隆「『カワイイ』研究の発展 」『日欧比較文化研究』第20号、日欧比較文化研究会、2016年10月、15-26頁、ISSN 1349-0052 、NAID 40020984632 。
Tom Hoi Kit, 宮﨑拓弥「『かわいい』対象と感情の分類 」『北海道教育大学紀要. 教育科学編』第70巻第1号、北海道教育大学、2019年8月、63-75頁、ISSN 1344-2554 、NAID 120006730733 。
入戸野宏『「かわいい」のちから : 実験で探るその心理 』化学同人〈DOJIN選書〉、2019年。ISBN 9784759816815 。全国書誌番号 :23241594 。https://www.kagakudojin.co.jp/book/b453015.html 。
脚注
^ a b c d e f 正高信男 『子どもはことばをからだで覚える メロディから意味の世界へ』中公新書 2001,p.108-112.
^ Lorenz, K. (1943). Die angeborenen Formen möglicher Erfahrung [The innate forms of potential experience / 可能な経験の生得的形態(経験できることには生まれつき決まった形がある)].
^ 扇原貴志「乳幼児との接触経験と接触時感情が子どもへの関心に及ぼす影響 」『学校教育学研究論集』第36巻、東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科、2017年10月、1頁、hdl :2309/148368 、ISSN 1344-7068 、CRID 1050569943996897408 。
^ 入戸野(2019), p.55
^ a b c 植木理恵 『フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる心理学』日本実業出版社 , 2010年, 132-135頁「親と子はどうやって『親子』になるのか」から。
^ 大藪泰「赤ちゃんの模倣行動の発達-形態から意図の模倣へ- 」『バイオメカニズム学会誌』第29巻第1号、バイオメカニズム学会、2005年1月、3-8頁、ISSN 02850885 、NAID 40020710920 。
^ 「東京大学 の精神科医 であった土居健郎 氏は一九五五年頃から、『甘え』という概念を提唱しました。(中略)その後、欧米でも、養育者との親密な関係に着目した愛着 (アタッチメント)理論が発展し、このような心理傾向は日本人にかぎらないことが確認されました。人間が潜在的に持っている心理傾向のうち、どれが社会のなかで注目され受容されるようになるかは、文化によって変わるのでしょう。(中略)『甘え』の発想は、ベビースキーマ (ドイツ語版 ) の発想とは異なっています。(…)ベビースキーマ説では、かわいい対象は周囲の注意を引きつけ行動を引き起こすきっかけや手がかりとしてしか考えられていません。一方、『甘え』の発想では、かわいいと思う相手の立場からも状況を見ることができます。つまり、甘えてくる子猫を見たとすれば、自分も誰かに甘えていたことや甘えたい気持ちを思い出すかもしれません。このように、『甘え』の視点を取り入れると、『かわいい』は一方向的なものではなく双方向的として捉えられます」(『「かわいい」のちから』 , p. 203-204)
^ “Contributors” . World Archaeology (Routledge) 2 (1): 112. (1970). doi :10.1080/00438243.1970.9979467 . https://doi.org/10.1080/00438243.1970.9979467 .
^ Collins, D. et al. (1973). Background to archaeology: Britain in its European setting. Cambridge: Cambridge University Press. ISBN 0-521-20155-1 hard cover
^ a b Bogin, Barry (1997). “Evolutionary hypotheses for human childhood” . American Journal of Physical Anthropology: The Official Publication of the American Association of Physical Anthropologists (Wiley Online Library) 104 (S25): 63-89. doi :10.1002/(SICI)1096-8644(1997)25+%3C63::AID-AJPA3%3E3.0.CO;2-8 . https://doi.org/10.1002/(SICI)1096-8644(1997)25+%3C63::AID-AJPA3%3E3.0.CO;2-8 .
^ Karraker, Katherine; Stern, Marilyn (1990). “Infant physical attractiveness and facial expression: Effects on adult perceptions”. Basic and Applied Social Psychology 11 (4): 371–385. doi :10.1207/s15324834basp1104_2 .
^ Sprengelmeyer, R; Perrett, D.; Fagan, E.; Cornwell, R.; Lobmaier, J.; Sprengelmeyer, A.; Aasheim, H.; Black, I. et al. (2009). “The Cutest Little Baby Face: A Hormonal Link to Sensitivity to Cuteness in Infant Faces”. Psychological Science 20 (9): 149-154. doi :10.1111/j.1467-9280.2009.02272.x . PMID 19175530 .
^ 入戸野(2019), p.56
^ インゴ・レンチュラー『美を脳から考える ―芸術への生物学的探検―』新曜社 , p.13, 2000年
^ 入戸野宏, 「かわいさと幼さの関係についての実験心理学的考察 404 NOT FOUND (PDF ) 」日本感性工学会・かわいい人工物研究部会・2周年記念シンポジウム(2012年6月2日・芝浦工業大学 豊洲キャンパス)資料集, p.7 [リンク切れ ]
^ 「超正常刺激 の他の例として、アニメで女性を描くときに、胸を大きく、ウエストをくびれさせ、ヒップを大きくすることがあります。女性の性的魅力 を誇張して描いていますが、そんな女性はほぼ実在しません。好みは分かれますが、根強い人気があります。特定の特徴の組み合わせが、私たちの感情や行動を引き起こすという典型例です。キャラクターの中には、地方団体や民間団体が作るものもあります。『ゆるキャラ 』という言葉は、イラストレーター のみうらじゅん 氏の造語 であり、登録商標 です。もともとは、人が入る着ぐるみを指していました。完璧に作りこまれたものではなく、予算の関係で洗練されない手作り感が残るものが多く、微笑(苦笑)を誘います。こういったキャラクターにもベビースキーマは含まれています。中にはそうでないものもありますが、かわいいと感じさせようと作ったものには、必ずベビースキーマが超正常刺激として誇張された形で含まれています」(『「かわいい」のちから』 , p. 57)
^ KAWADE夢ムック『文藝別冊[総特集]吾妻ひでお 美少女・SF・不条理ギャグ、そして失踪』河出書房新社 2011年4月、31頁。
^ 人が二次元エロに興奮するのは進化の証だったことが判明! ヲタたちに発動する「超正常刺激」の謎とは!? TOCANA 2019年2月19日
^ 永山薫 『増補 エロマンガ・スタディーズ「快楽装置」としての漫画入門』筑摩書房 〈ちくま文庫 〉2014年4月 p.136
^ 中森明夫 「新人類&おたく誕生前夜──急カーブを曲がろうとしていた──“80年安保”が存在したのではないか? 政治闘争ではない。それは、文化、いやカルチャーにおける叛乱=氾濫だった」新潮社 『新潮45 』2012年5月号「特集/30年前と30年後」
^ 椎塚久雄「かわいい感情の構造ー製品の中におけるかわいさとインタラクション」日本感性工学会『感性工学』11巻2号, pp.98-108, 2012年9月
^ 「気味が悪い、醜いということと、『かわいい』こととは、けっして対立するイメージではなく、むしろ重なりあい、互いに牽引し依存しあって成立しているものなのである。これは逆にいえば、あるものが『かわいい』と呼ばれるときには、そのどこかにグロテスクが隠し味としてこっそりと用いられていることを意味している」四方田犬彦 『「かわいい」論』筑摩書房〈ちくま新書 〉p.80, 2006年
^ 入戸野(2009), p.24
^ 永山薫 『増補 エロマンガ・スタディーズ「快楽装置」としての漫画入門 』筑摩書房 〈ちくま文庫 〉2014年, pp.81-83
^ 「若い処女 の娘を神に仕える巫女 にする習俗 は、本土の古代にもあった。若い処女の娘には、『俗世間から逸脱している(=超俗)』気配がある。現在のオタク文化 でも、若い娘の巫女姿は、もっとも『かわいい』を表現しているイメージのひとつになっている。社会との調和を喪失して社会から逸脱してゆくことは、『超俗』のかたちでもある。『無用者』は、超俗の『聖者』でもある。『かわいい』とは、ひとつの『超俗』『逸脱』のイメージなのだ。『かなし』や『かはゆし』の『か』という音韻 には、人間であることの『喪失感』が込められている」山本博通『なぜギャルはすぐに「かわいい」というのか』幻冬舎ルネッサンス新社 〈幻冬舎ルネッサンス新書 〉2010年8月 pp.39-40
^ 宮元健次 『日本の美意識』光文社新書 2008年3月 p.215
^ 石川(2016), p.23
^ 「かわいい 」は原則的に目上の者が目下の者に抱く情愛を示す表現である。一方で目下の者から目上の者への情愛を示す際には「いとしい」が用いられた。(入戸野宏「"かわいい"に対する行動科学的アプローチ 」『人間科学研究』第4巻、広島大学大学院総合科学研究科、2009年、19-35頁、doi :10.15027/29016 、ISSN 18817688 、NAID 120001954440 。 )
^ 入戸野宏「小講演 “かわいい”の心理生理学 」『生理心理学と精神生理学』第32巻第2号、日本生理心理学会、2014年、53-54頁、doi :10.5674/jjppp.1410ci 、ISSN 0289-2405 、NAID 130005072710 。
^ 小原一馬「『かわいいおばあちゃん』」稲垣恭子 編『子ども・学校・社会―教育と文化の社会学』2006年12月, 世界思想社 , pp.156-157
^ 西村(2015), p.135
関連項目
外部リンク