『おかあさんの木[注 1]』(おかあさんのき)は、児童文学作家の大川悦生が1969年に発表した戦争を題材にした文学作品。小学校の国語の教科書にも1977年から2000年にかけて収録され[1]、映画にもなっている。2015年には終戦70年目の節目として実写映画化された。
本記事はアニメ及び実写映画版についても記述する。
あらすじ
今から数十年前、ある家に「おかあさん」と七人の息子が暮らしていた。やがて日中戦争を皮切りに日本が戦争に入ると、七人の息子たちは次々に召集され、戦地へ赴いていった。おかあさんは息子が出征する度に裏の空き地に桐を植え、息子が不在の間、代わりとなる桐に語りかけて息子たちを励まし続けた。初めは出征をするからには手柄を立てるようにと願っていたおかあさんも、一郎が中国大陸で戦死し、遺骨となって戻って来たことをきっかけに、次第に手柄を立てるより無事に戻ってくることを願うようになっていった。
召集をかけられた全ての息子たちは、戦争が終わっても誰一人戻らず、戦死または行方不明になっていた。おかあさんは次第に体が衰えていったが、それでも息子たちの帰って来るのを心待ちにして、自分が植えた七本の桐の木に絶えず語りかけた。
しばらく経って軍人たちが次々に帰還する中、ビルマで行方不明になっていた五郎が片足を引きずった状態で家に戻ってきた時には、おかあさんは「五郎」と名づけた桐の木にもたれかかったまま息絶えていた。
書籍情報
表題の『おかあさんの木』の他、戦争に関する作品等を収録した短編集になっている。
アニメ映画
1986年製作。平和教育のため、幾つかの自治体にてビデオテープの貸出を行っている[2]。DVDの販売も一部で行われている[3]。
実写映画
2015年6月6日上映の日本映画。映画化に合わせ、大人向けに編集された文庫版が2015年5月に発売されている。特典として映画版の紹介と特別割引券が付いている。同12月9日にDVD版がリリースされた[4]。
キャスト
- 田村ミツ(おかあさん) - 鈴木京香
- 田村謙次郎(ミツの夫) - 平岳大
- 田村一郎(長男) - 細山田隆人(少年時代[5]:永峯海大、幼少期:松田優佑)
- 田村二郎(次男) - 三浦貴大(少年時代:溝口太陽)
- 田村三郎(三男) - 大鶴佐助(少年時代:工藤大空飛)
- 田村四郎(四男) - 大橋昌広(少年時代:阿部大輝)
- 田村五郎(五男) - 石井貴就(少年時代:高木煌大)
- 田村誠(六男・ミツの姉夫婦の養子) - 安藤瑠一(少年時代:戸塚世那)
- 田村六郎(七男) - 西山潤(少年時代:加藤瑛斗)
- 田村徳兵衛(謙次郎の父) - 木場勝己
- 坂井昌平(謙次郎の郵便局の同僚) - 田辺誠一
- 坂井サユリ(坂井の娘) - 志田未来(現代:奈良岡朋子)
- 村山ヨネ(産婆) - 松金よね子
- 鈴木実(兵事係) - 有薗芳記
- 小林哲也(反戦家) - 波岡一喜
- 校長 - 大杉漣
- 河辺(農水省職員 - 現代) - 市川知宏
- 大野(県職員 - 現代) - 菅原大吉
スタッフ
雑記
- 実写版は原作者の大川悦生の疎開先の長野県上田地域を舞台にしている。
- 原作では一郎が中国大陸で戦死した際におかあさんの元に遺骨が戻ってきたが、実写版では土しか持って帰ることができなかった。
- 原作では二郎は南方の島、五郎はビルマの部隊に配属されたが、実写版では南方の島で二人が再会を果たした。
- 原作では末っ子の七郎(実写版では六郎)は特別攻撃隊の飛行機で敵の軍艦に突撃したが、実写版ではサイパン島のバンザイクリフで身投げするシーンに置き換えられた。
- 原作では最後、桐の木は古くなって伐採され、五郎によってクルミの木が植えられたが、実写版では7本の桐が現在も残されて、役人が老人となったサユリを訪ねた際に、サユリに桐の伐採を咎められた。
脚注
注釈
- ^ 教科書掲載時のタイトルは『お母さんの木』だった。
出典
関連項目
外部リンク