ISEE-3/ICEの軌道変更
ISEE-3/ICE (International Sun-Earth/Cometary Explorer 3)(アイシースリー/アイス)は、アメリカ航空宇宙局 (NASA)・欧州宇宙機関 (ESA) の太陽風 ・磁気圏 ・彗星 探査機。NASAのエクスプローラー計画 59番目の衛星。
当初、太陽風探査機ISEE-3 (International Sun-Earth Explorer-3) またはISEE-C として打ち上げ・運用され、その後、彗星探査機ICE (International Cometary Explorer) として運用された。
1997年5月5日に一旦運用を終了したが、2014年に地球に再接近する機会を利用しクラウドファンディング で資金を調達した民間団体が短期間再運用を行った。
太陽風・磁気圏観測ミッション
ISEE (International Sun-Earth Explorer)(国際太陽-地球探査機)プログラムは、ISEE-1/2/3の3機の探査機からなり、3機が共同して
をする計画だった。ISEE-1とISEE-2は1977年 10月22日 に打ち上げられた。
ISEE-3は1978年 8月12日 、NASAとESAが共同で打ち上げ(打ち上げはNASAのデルタロケット )、NASAが運用した。1978年11月20日 、太陽-地球のラグランジュ点 (L1 ) を回る秤動軌道(ハロー軌道 )にのり、太陽風と地球磁気圏の相互作用などを調査した。1982年 、当初のミッションを終了した。なお、ISEE-3は、ハロー軌道に乗った最初の人工物体である。
彗星探査ミッション
ジャコビニ・ツィナー彗星に向かうICE(想像図)
1982年 6月10日 、ISEE-3は新しいミッションのための軌道変更を始めた。4回の月スイングバイ と15回のエンジン噴射からなる軌道変更をし、L2 点で地球の磁気圏尾部 (magnetotail) などを観測した。1983年 12月22日 の5回目の月スイングバイで地球重力圏脱出軌道に乗り、ICEと改名された。
ICEは1985年 9月11日 にジャコビニ・ツィナー彗星 から7862 kmの距離でプラズマテイル を通過し、水 と一酸化炭素 イオンを検出した。その後、1986年 3月28日 に、ハレー彗星 に約2800万kmまで接近した。ICEはカメラは搭載していないため画像撮影はできないが、周辺環境や粒子を観測する19個の観測装置を搭載している。
1991年 にはさらにミッションが延長され、ユリシーズ と共同で宇宙線などを調査した。
運用終了とその後
ICEは1997年5月5日に運用を終了した。最終的な軌道は、近日点距離0.93 AU、遠日点距離1.03 AU、軌道傾斜角0.1°、公転周期355日の太陽中心軌道だった(軌道要素は1990年)。2014年8月に地球に再接近する。
NASAが2008年 9月18日 にディープスペースネットワーク を使用してICEの状態を確認したところ、13個のうち12個の観測機器が機能する状態(1999年の衛星データから判明)であり、推進剤も150m/secの速度増分を与えられる量が残っていることが分かった[ 1] 。その後の確認により、1999年にディープスペースネットワークから旧式化した送信機器が撤去されたため、ICEへのコマンドはもはや送信できなくなっていることが確認された。新たな対応機器を作るにはNASAには予算がないとのことであった[ 2] 。
2014年の運用再開を目指した活動
NASAが2008年に動作確認を行ったところ、13のシステムのうち12個は正常に動作し、推進剤 も残っていることが確認された[ 1] 。2014年3月1日と2日に、ドイツのアマチュア無線局 の20m電波望遠鏡 がICEからのビーコン波を受信することに成功した。2014年8月に地球周辺に戻ってくるため、6月までに衛星を制御できるようにできれば、小さな軌道制御を行うことにより、L1点に再び戻すことが出来る[ 3] ことから、民間の団体がクラウドファンディング を使って資金集めを行い、ICEの運用を再開することになった。軌道制御を行う場合は月から高度50km以内の所をフライバイ することになる[ 4] [ 5] 。
管制に必要な無線機の機材は1999年に撤去済みだったので改めて元の仕様書を基にソフトウェア無線 で構築する事になった[ 6] [ 7] [ 8] 。2014年5月に、探査機を再起動させるために目標としていた資金12万5000ドル(約1,270万円)をクラウドファンディングで集めるのに成功。その直後、NASAもこの団体に対して、探査機との通信を確立させるために必要な技術データを提供することを公式に発表した[ 9] 。
2014年5月29日に、プエルトリコのアレシボ天文台 を使って、ソフトウェア無線でテレメトリ受信とコマンド送信の双方向通信に成功した[ 10] 。
2014年7月2日、民間の団体は1987年以来初めてとなるスラスター の着火を試みた[ 11] [ 12] が、スラスターに推進剤を供給するために加圧する窒素 ガスの不足により、このスラスターの着火は失敗に終わった。そのためプロジェクトチームは科学的データを集めて地球に送信するという代替案を考え出した[ 13] が、同年9月16日に通信は途絶えた[ 14] 。
脚注
外部リンク