『ベッキーさん』シリーズは、北村薫による日本の推理小説のシリーズ。
3部作となっており、第2作『玻璃の天』は第137回直木賞候補にノミネートされ、シリーズ最終作である第3作『鷺と雪』は第141回直木賞を受賞した。通算6回目のノミネートで初受賞となった。
概要
推理小説のシリーズとしては、『円紫さん』シリーズ、『覆面作家』シリーズに続き、3つ目のシリーズである。
昭和初期を舞台に、上流家庭のお嬢様・英子(えいこ)とその運転手・ベッキーさんを主人公に、殺人から素人が考えた暗号の解読など、様々な事件を扱う。
ベッキーさんは博学で様々なことに通じており、ベッキーさんが発した言葉から英子が事件の糸口を見つけることもあるが、ベッキーさんが自ら進んで事件に首を突っ込んで解決することはなく、英子の助手を務めるワトソン役でもない。
シリーズ
登場人物
- 別宮 みつ子(べっく みつこ)
- 花村家のお抱え運転手。正運転手が帰郷することになり、新たに運転手として雇われることになった。主に、英子の学校の送迎などを担当する。英子からは、彼女がその時たまたま読んでいたサッカレーの『虚栄の市』の主人公に因んで、2人きりの時だけベッキーさんと呼ばれるようになる。
- 目鼻立ちがはっきりした顔立ち。銃を携帯しており、その腕前は陸軍将校も認めるほど。
- 貧民街を見て、到底暮らせそうにないと漏らした英子に対して、恐縮しながらも傲慢だと諭す厳しさを持つ。
- 花村 英子(はなむら えいこ)
- 花村家の長女。女子学習院の生徒、『街の灯』の時点で14,5歳。英語が堪能。花村家は相模の士族の出の上流家庭で、何不自由ない生活を送っている。
- ベッキーさんとの出会ってから、日常生活のふとしたことに疑問を持つようになる。
- 花村 雅吉(はなむら まさきち)
- 英子の兄。大学生。国文科専攻。『玻璃の天』からは大学院生。マレーネ・ディートリヒが好き。
- 英子・雅吉の父親
- 日本でも五本の指に入る財閥系の商事会社の社長。イギリスで暮らしていたこともあり、イギリス贔屓である。英子と雅吉には自身と妻をパパ・ママと呼ばせている。
- 弓原 太郎(ゆみはら たろう)
- 子爵。英子の叔母の夫。東京地裁の検事。〈名士の書く探偵小説〉という企画を受けて以来、数は少ないながらもいくつか作品を発表している。経歴からするとモデルは濱尾四郎と思われる。
- 園田(そのだ)
- 花村家の運転手。英子の学校の送迎などをしていたが、正運転手の帰郷に伴い、自身が正運転手に昇格、社長付きの運転手となる。新しい運転手が女性であることに抵抗を覚える。
- 有川 八重子(ありかわ やえこ)
- 伯爵令嬢。英子の級友。有川家は御一新前は大名家だった。英子とは、花さん、有さんと呼び合っている。
- 桐原 道子(きりはら みちこ)
- 侯爵令嬢。英子の級友。瓜実顔で日本人形のような顔立ち。桐原家は御一新前は大大名で、現在も100人以上の使用人を抱える名家として知られる。父・桐原侯爵は陸軍少将。
- 桐原 勝久(きりはら かつひさ)
- 侯爵令息。道子の兄。陸軍参謀本部の大尉。陸軍大学校を出て、1年間中隊長を務めただけで参謀本部配属となった。ベッキーとの初対面時に、彼女が銃を携帯していることを見抜き、後日その腕前を目の当たりにし、彼女のことを大変気に入る。
- 桐原 麗子(きりはら れいこ)
- 侯爵令嬢。道子の姉。女子学習院後期2年。いずれ宮家に嫁ぐと言われている。
- 由里岡(ゆりおか)
- 子爵令息。学習院の男子部を退学になり、雅吉と同じ大学に移った。サキソホーンの演奏が得意。
- 若月 英明(わかつき ひであき)
- 陸軍少尉。いわゆる叩き上げ。
漫画
本シリーズのコミカライズが『ベッキーさんと私』のタイトルで『ビッグコミック』(小学館)にて、2024年16号より同年21号まで第1章「虚栄の市」として連載[1][2]。漫画は三浦靖冬が担当[1]。2025年秋に第2章「銀座八丁」が連載されることが発表されている[3]。
関連項目
出典
- ^ a b “北村薫の小説「ベッキーさん」シリーズを三浦靖冬がマンガ化、ビッグコミックで始動”. コミックナタリー. ナターシャ (2024年8月9日). 2024年8月10日閲覧。
- ^ 北村薫、三浦靖冬「ベッキーさんと私 第6話 虚栄の市⑥」『ビッグコミック』2024年21号、小学館、2024年10月25日、199頁。
- ^ 「ベッキーさんと私① 2025年初春発売決定!」『ビッグコミック』2024年21号、小学館、2024年10月25日、229頁。
外部リンク