「ブルー・イン・グリーン 」(英語 : Blue in Green )[ 2] は、トランペッターのマイルス・デイヴィス とピアニストのビル・エヴァンス によって作曲された楽曲(両者による作曲か一方による作曲かには諸説あり)。デイヴィスの1959年 のアルバム『カインド・オブ・ブルー 』が初出である。ビル・エヴァンスが同年に発表した『ポートレイト・イン・ジャズ 』にも収録されている他、特に80年代以降多くの奏者により取り上げられており、ジャズ・スタンダード として定着している[ 3] 。
マイルス・デイヴィスによる録音
『カインド・オブ・ブルー』に収録された2つのバラード の1つである[ 註 1] 。アルバムに含まれる2回のセッションの1日目である1959年3月2日(2回目は4月22日) に、ビル・エヴァンスを含む2管のクインテットで演奏された[ 1] 。
2008年に発売された『カインド・オブ・ブルー(レガシー・エディション[ 註 2] )』には、会話や別テイクの序奏部を含むスタジオ・シークエンスが収録されており、会話からは、当初ジョン・コルトレーン を抜いた1管のカルテットで演奏される予定だった可能性が窺える[ 1] [ 4] [ 5] [ 6] 。
パーソネルや録音の詳細については、カインド・オブ・ブルー も参照。
楽曲解説
メロディはモーダル であり、そこにはドリア 、ミクソリディアン 、リディアン ・モードの存在が組み込まれる。最初の節はナチュラル13が加えられたGマイナー ・コード(Gm13)、そこにはFナチュラルが含まれるが、そのメロディのオープニング・ノートがFメジャー ・スケールの導音 のEナチュラルであるため、その部分の様式はすでに明瞭である。そのコードのナチュラル13はEナチュラルである。
デイヴィス、エヴァンスいずれの作曲であるかについて
『カインド・オブ・ブルー』[ 7] [ 8] やほとんどのジャズ・フェイク・ブック [要出典 ] はマイルス・デイヴィス のみをクレジットしているが、実際はビル・エヴァンス 作であるとの推察もなされている。同じく1959年に録音されたビル・エヴァンス・トリオのアルバム『ポートレイト・イン・ジャズ 』などにおいては、「デイヴィス=エヴァンス」とクレジットされている[ 9] 。
デイヴィスは『マイルス・デイヴィス自叙伝(英語: Miles: The Autobiography of Miles Davis with Quincy Troupe ) 』(1989年)において、ビルが『カインド・オブ・ブルー』の曲の共作者だと言って回っている奴らがいるが、それはほんとじゃない……全部おれのだ と述べている。しかしデイヴィスは自叙伝の著者であるクインシー・トループ (英語版 ) にたいしておれたち[ビルとマイルス] は、そいつを一緒に書いたんだ と1986年に語っている[ 10] 。
他方のエヴァンスは、1978年にこの曲の作曲者をめぐる論争について問われ、真実は、ぼくが[作曲を] やったんだ。連邦訴訟はやりたくないし、音楽は存在しているし……マイルスは印税を得ている。[……] ぼくは、値段じゃ測れない繋がりを得た、それでいいんだ と答えている[ 11] 。
ドラマーのジミー・コブ は、この曲のアイデアのほとんどはエヴァンスによるものだと述べているという[ 10] 。作曲家のアール・ジンダース (英語版 ) は1993年に刊行されたインタビューにおいて、この曲が100%ビルのものか との問いにたいし確かにそうだ と答え、エヴァンスがジンダースのメモ帳に書いたと証言している[ 12] 。またチェット・ベイカー の『チェット (英語版 ) 』においてビル・エヴァンスが弾いた「アローン・トゥゲザー 」の序奏は、「ブルー・イン・グリーン」を彷彿とさせる言われているが、これは『カインド・オブ・ブルー』に先立って録音されたものである[ 3] [ 13] 。
その他の主な録音
脚注
^ 他方は「フラメンコ・スケッチ 」
^ 50th Anniversary Collector’s Edition としても知られる
出典
^ a b c “Between Takes: The ‘Kind of Blue’ Sessions ” (英語).
NPR (January 29, 2009). 2020年12月26日 閲覧。
^ 「Blue ’n Green」「Blue and Green」などの表記もある。
^ a b c d e f g h i j Gioia, Ted (2012-07-06). “Blue in Green” (英語). The Jazz Standards: A Guide to the Repertoire . New York City: Oxford University Press . pp. 37–38. ISBN 978-0-19-993739-4 . https://books.google.co.jp/books?id=dVwGAQAAQBAJ&lpg=PA38&dq=blue%20in%20green%20jazz%20standard&hl=ja&pg=PA38#v=onepage&q=blue%20in%20green%20jazz%20standard&f=false
^ “Miles Davis, Blue in Green (Studio Sequence), Kind of Blue 50th Anniversary (Legacy Edition, Remastered, Doxy Collection) ”. YouTube Music . 2020年12月26日 閲覧。
^ “Kind of Blue [50th Anniversary Collector’s Edition - Miles Davis | Release Info]” (英語). AllMusic . 2020年12月26日 閲覧。
^ “カインド・オブ・ブルー(レガシー・エディション) | マイルス・デイビス ”. ソニーミュージック オフィシャルサイト . 2020年12月26日 閲覧。
^ Kind of Blue (LP). Miles Davis. Columbia Records . 1959. A面ラベル. CS 8163。
^ Kind of Blue Legacy Edition (2×CD, ブックレット). Miles Davis. Columbia Records. 2009. p. 19. 88697 43895 2。
^ Portrait in Jazz (LP, バック・カバー). Bill Evans Trio. Riverside Records . 1959. RLP 1162。
^ a b Kahn, Ashley (2018-10-04). “First Session” (英語). Kind of Blue: Miles Davis and the Making of a Masterpiece . Granta Books . ISBN 9781783784745 . https://books.google.co.jp/books?id=HjRyDwAAQBAJ&lpg=PT83&dq=%22Miles%20Davis%22%20Autobiography%20%22blue%20in%20green%22%20cocomposer&hl=ja&pg=PT83#v=onepage&q=%22Miles%20Davis%22%20Autobiography%20%22blue%20in%20green%22%20cocomposer&f=false 2020年12月26日 閲覧。
^ “Bill Evans on Piano Jazz ”. NPR (2013年1月25日). 2020年12月26日 閲覧。 - 音声(1978年11月6日録音、1979年5月27日ラジオ放送)の35分30秒-36分3秒を参照。
^ Hinkle, Win. “Interview with Earl Zindars” (英語). Letter from Evans (Winter Park, Florida) 5 (1): 20. ISSN 1056-4179 .
^ Broomer, Stuart . “Editorial Review | Baker, Chet - Chet (20 Bit Mastering) ”. Amazon.com . 2020年12月26日 閲覧。 - Editorial Reviewを参照。
外部リンク