ブルー・イン・グリーン

ブルー・イン・グリーン
マイルス・デイヴィスの楽曲
収録アルバムカインド・オブ・ブルー
リリース1959年8月17日
録音1959年3月2日[1]
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ジャンルジャズ
時間5分37秒
レーベルコロムビア
作曲者ビル・エヴァンスマイルス・デイヴィス
プロデューステオ・マセロ
  1. ソー・ホワット英語版
  2. フレディ・フリーローダー
  3. 「ブルー・イン・グリーン」
  4. オール・ブルース
  5. フラメンコ・スケッチ

ブルー・イン・グリーン」(英語: Blue in Green[2]は、トランペッターのマイルス・デイヴィスとピアニストのビル・エヴァンスによって作曲された楽曲(両者による作曲か一方による作曲かには諸説あり)。デイヴィスの1959年のアルバム『カインド・オブ・ブルー』が初出である。ビル・エヴァンスが同年に発表した『ポートレイト・イン・ジャズ』にも収録されている他、特に80年代以降多くの奏者により取り上げられており、ジャズ・スタンダードとして定着している[3]

マイルス・デイヴィスによる録音

『カインド・オブ・ブルー』に収録された2つのバラードの1つである[註 1]。アルバムに含まれる2回のセッションの1日目である1959年3月2日(2回目は4月22日)に、ビル・エヴァンスを含む2管のクインテットで演奏された[1]

2008年に発売された『カインド・オブ・ブルー(レガシー・エディション[註 2])』には、会話や別テイクの序奏部を含むスタジオ・シークエンスが収録されており、会話からは、当初ジョン・コルトレーンを抜いた1管のカルテットで演奏される予定だった可能性が窺える[1][4][5][6]

パーソネルや録音の詳細については、カインド・オブ・ブルーも参照。

楽曲解説

メロディはモーダルであり、そこにはドリアミクソリディアンリディアン・モードの存在が組み込まれる。最初の節はナチュラル13が加えられたGマイナー・コード(Gm13)、そこにはFナチュラルが含まれるが、そのメロディのオープニング・ノートがFメジャー・スケールの導音のEナチュラルであるため、その部分の様式はすでに明瞭である。そのコードのナチュラル13はEナチュラルである。

デイヴィス、エヴァンスいずれの作曲であるかについて

『カインド・オブ・ブルー』[7][8]ほとんどのジャズ・フェイク・ブック[要出典]マイルス・デイヴィスのみをクレジットしているが、実際はビル・エヴァンス作であるとの推察もなされている。同じく1959年に録音されたビル・エヴァンス・トリオのアルバム『ポートレイト・イン・ジャズ』などにおいては、「デイヴィス=エヴァンス」とクレジットされている[9]

デイヴィスは『マイルス・デイヴィス自叙伝(英語: Miles: The Autobiography of Miles Davis with Quincy Troupe)』(1989年)において、ビルが『カインド・オブ・ブルー』の曲の共作者だと言って回っている奴らがいるが、それはほんとじゃない……全部おれのだと述べている。しかしデイヴィスは自叙伝の著者であるクインシー・トループ英語版にたいしておれたち[ビルとマイルス]は、そいつを一緒に書いたんだと1986年に語っている[10]

他方のエヴァンスは、1978年にこの曲の作曲者をめぐる論争について問われ、真実は、ぼくが[作曲を]やったんだ。連邦訴訟はやりたくないし、音楽は存在しているし……マイルスは印税を得ている。[……]ぼくは、値段じゃ測れない繋がりを得た、それでいいんだと答えている[11]

ドラマーのジミー・コブは、この曲のアイデアのほとんどはエヴァンスによるものだと述べているという[10]。作曲家のアール・ジンダース英語版は1993年に刊行されたインタビューにおいて、この曲が100%ビルのものかとの問いにたいし確かにそうだと答え、エヴァンスがジンダースのメモ帳に書いたと証言している[12]。またチェット・ベイカーの『チェット英語版』においてビル・エヴァンスが弾いた「アローン・トゥゲザー」の序奏は、「ブルー・イン・グリーン」を彷彿とさせる言われているが、これは『カインド・オブ・ブルー』に先立って録音されたものである[3][13]

その他の主な録音

アーティスト 録音年 収録アルバム等 備考 YouTube

Music

Spotify
ビル・エヴァンス(Pf.)・トリオ 1959 ポートレイト・イン・ジャズ[3] CD再発盤には複数のテイクが収録されている。 💽 💽
ゲイリー・バートン(Vib.)&ステファン・グラッペリ(Vn.) 1969 パリのめぐり逢い英語版[3] 💽 💽
ジョン・マクラフリン(Gt.) 1970 マイ・ゴールズ・ビヨンド英語版[3] 💽 💽
1989[3] ジョン・マクラフリン・トリオ・ライヴ!
リッチー・バイラーク(Pf.) 1981 エレジー~ビル・エヴァンスに捧ぐ(英語: Elegy for Bill Evans)[3] 💽
フレッド・ハーシュ英語版(Pf.) w/ チャーリー・ヘイデン(Ba.) 1989 Sarabande[3] 💽 💽
ワールド・サキソフォン・カルテット

ft. ジャック・ディジョネット

1998 Selim Sivad: A Tribute to Miles Davis[3] 💽 💽
カサンドラ・ウィルソン(Vo.) 1998 トラヴェリング・マイルス[3] ウィルソンによる歌詞がつけられ「スカイ・アンド・シー(英語: Sky & Sea)」のタイトルで収録。 💽 💽
リー・リトナー(Gt.) 2005 Overtime 💽 💽

脚注

  1. ^ 他方は「フラメンコ・スケッチ
  2. ^ 50th Anniversary Collector’s Editionとしても知られる

出典

  1. ^ a b c Between Takes: The ‘Kind of Blue’ Sessions” (英語). NPR (January 29, 2009). 2020年12月26日閲覧。
  2. ^ 「Blue ’n Green」「Blue and Green」などの表記もある。
  3. ^ a b c d e f g h i j Gioia, Ted (2012-07-06). “Blue in Green” (英語). The Jazz Standards: A Guide to the Repertoire. New York City: Oxford University Press. pp. 37–38. ISBN 978-0-19-993739-4. https://books.google.co.jp/books?id=dVwGAQAAQBAJ&lpg=PA38&dq=blue%20in%20green%20jazz%20standard&hl=ja&pg=PA38#v=onepage&q=blue%20in%20green%20jazz%20standard&f=false 
  4. ^ Miles Davis, Blue in Green (Studio Sequence), Kind of Blue 50th Anniversary (Legacy Edition, Remastered, Doxy Collection)”. YouTube Music. 2020年12月26日閲覧。
  5. ^ Kind of Blue [50th Anniversary Collector’s Edition - Miles Davis | Release Info]” (英語). AllMusic. 2020年12月26日閲覧。
  6. ^ カインド・オブ・ブルー(レガシー・エディション) | マイルス・デイビス”. ソニーミュージックオフィシャルサイト. 2020年12月26日閲覧。
  7. ^ Kind of Blue (LP). Miles Davis. Columbia Records. 1959. A面ラベル. CS 8163。
  8. ^ Kind of Blue Legacy Edition (2×CD, ブックレット). Miles Davis. Columbia Records. 2009. p. 19. 88697 43895 2。
  9. ^ Portrait in Jazz (LP, バック・カバー). Bill Evans Trio. Riverside Records. 1959. RLP 1162。
  10. ^ a b Kahn, Ashley (2018-10-04). “First Session” (英語). Kind of Blue: Miles Davis and the Making of a Masterpiece. Granta Books. ISBN 9781783784745. https://books.google.co.jp/books?id=HjRyDwAAQBAJ&lpg=PT83&dq=%22Miles%20Davis%22%20Autobiography%20%22blue%20in%20green%22%20cocomposer&hl=ja&pg=PT83#v=onepage&q=%22Miles%20Davis%22%20Autobiography%20%22blue%20in%20green%22%20cocomposer&f=false 2020年12月26日閲覧。 
  11. ^ Bill Evans on Piano Jazz”. NPR (2013年1月25日). 2020年12月26日閲覧。- 音声(1978年11月6日録音、1979年5月27日ラジオ放送)の35分30秒-36分3秒を参照。
  12. ^ Hinkle, Win. “Interview with Earl Zindars” (英語). Letter from Evans (Winter Park, Florida) 5 (1): 20. ISSN 1056-4179. 
  13. ^ Broomer, Stuart. “Editorial Review | Baker, Chet - Chet (20 Bit Mastering)”. Amazon.com. 2020年12月26日閲覧。- Editorial Reviewを参照。

外部リンク